第七話 過去を背負い、歩き出した英雄
「殺戮者?どういう意味だ……ヒメノーー。」
「ヒメノくん!」
バンッ!
ハンクが机を叩き、大声を出す。
「君は考えすぎだ、ヒメノくん。」
「ですが、私たちはーー。」
「いいんだ、今は。」
パタッ。
ハンクはヒメノの肩を掴む。
「みんな、よく聞いてくれ。君たちはまだ16,17の子供だ。君たちが考えるべきは過去ではない、未来だ。」
ハンクはスノウ達に笑いかける。
「過去を背負うのは我々大人の役目だ。君らが過ごした過去は、少しづつ思い出せばいい。過去の話を憶測でするべきではないよ。」
「村長……。」
ヒメノは涙を浮かべる。
「まずは前を向くんだ。君たちには生きるべき未来がある。」
部屋の空気は重いが、それをミリアが切り裂く。
パンッ!パンッ!
「さあて、もうお昼の時間だよ!ギルドに行って、お昼ご飯食べてきな!」
「あ!そうします!あたしお腹すいた!」
リサは元気に振る舞う。
「行きましょう、ヒメノちゃん!」
「う、うん。」
ヒメノ、リサ、ユキナは部屋を出る。
スタッ、スタッ。
スノウはドアの前で立ち止まる。
「どうしたんだい?スノウくん?」
「ハンク、ありがとう。あんたの言葉で、俺たちは救われたのかもしれない。」
スノウは微笑み部屋を出る。
ガチャンッ。
ドアがゆっくり閉められる。
「君たちは何も悪くない。悪いのは、君らに全ての責任を押し付けた僕たちだよ。」
「あたしらの1/3も生きてない子達がする顔じゃないよ。まったく、あたしらはダメな大人だね。」
ガチャンッ。
四人はギルドに入る。
「お帰りなさい!戦士の皆さん!あら、今日は一人追加ですね!」
「ただいまです。お昼ご飯頂いてもいいですか?」
「どうぞどうぞ!こちらへ!」
ズサッ。
リサを先頭に、四人はテーブルにつく。
「今日はこちらです!」
机の上には、受付嬢が持ってきたビーフシチューとパンが並ぶ。
「美味しそう!いただきます!」
リサは無我夢中に食べ始める。
「いただきます。」
三人もご飯を食べ始める。
(リサ、柄にもないことを。)
スノウは心で思う。
「ごちそうさまでした。」
四人は食べ終わり、席を立つ。
スタッ、スタッ、スタッ。
「皆さん今日はどうされますか?」
看板受付嬢、ミナが聞いてくる。
彼女はミナ・ミスト。スノウとリサと同じく17歳。
真っ赤な髪とツインテールが特徴だ。
ここでは、世界から来る冒険者に依頼の案内、ギルドの管理をしている。
冒険者とは、このギムレーに存在するモンスターの討伐や素材採取、護衛などを請け負う人達のこと。
「今日も掲示板の依頼をやらせてもらおうかな。」
「ありがとうございます!皆さんみたいな現役の冒険者はあまりいないので、とても助かります!ところで……。」
ミナはスノウを見る。
「ああ、悪い。スノウ・アクセプトだ。こいつらと同じ冒険者なんだが、俺も同行して平気か?」
「はい!ぜひお願いします!」
四人は掲示板を見る。
「これはどうですか?」
サラッ。
ヒメノが一枚の紙を手に取る。
『ウォーウルフの討伐』
街の近くに出没するウォーウルフの討伐依頼。
近頃は獰猛になりつつあり、要注意。
「モンスター退治ですね、私たちにはちょうどいいかも。先輩も動けそうですか?」
「ああ、やれる限りやってみるよ。」
スノウは体を軽く動かす。
「それじゃ、私この依頼受けてきますね!」
「あ、ヒメノちゃん、私も行きます!」
二人は受付に行く。
「なあ、リサ。」
「ん?どうしたの?」
「ありがとな、ヒメノのこと。」
スノウはリサを見つめる。
「何が?……って言っても、こういう時のスノウは敏感だからね。ヒメチンは、真面目すぎる。だから心配になっちゃうんだよね。」
「あいつは、俺には無理するなとかよく言うが、それ以上にあいつは周りに自分を出さない。兄として、礼を言うよ。」
ジロッ。
リサが少し屈み、スノウに上目遣いをする。
「じゃあ、後で美味しいもの奢って!依頼の報酬もらえれば手持ちもできるし!」
「太らないくらいにしとけよーー。ごふっ。」
リサの拳がスノウのお腹に入る。
「何?依頼行く前にまたベッド行きになりたいの?この女心知らず!」
「復帰したばかりの人間に、拳入れるなよ。」
二人がふざけ合っていると、ヒメノ達は戻る。
「兄さん!リサさん!行きましょう!四人で初めての依頼です!」
スタッ、スタッ、スタッ。
ヒメノは地図を持ち、四人は依頼の場所に向かう。
「この服いいな!すごい動きやすいし、軍服?とは全く違う。」
スノウは、黒いジーンズに、白いパーカー。両腰に刀を差す。
ヒメノは、濃紺のジーンズに、白いノースリーブ。腰にリボンのベルトをつける。鉄のブーツは常に履いている。
リサは、ピンクのショートパンツに、黒いTシャツ。
両手にグローブを付け、背中に長剣を指す。
ユキナは、水色と白のミニスカートに、白のブラウス。槍は腰に横向きに指す。
「四人ってだけでなんか、楽しくなるね!」
リサはテンション高め。
「そうだ兄さん、一点調べたことで共有なんですが、私達は攻撃方法を十式といって、十種類の技を学んだみたいです。まだ一式しか思い出せてませんが。」
「十式か、先が長そうだぜ。」
ズサッ。
四人は目的地に着く。
「早速きたよ!みんな準備を!」
リサの声とともに戦闘態勢に入る。
カタッ、カタッ。
「グルルッ!」
八体のウォーウルフが現れる。
「兄さん!号令を!私たちのリーダーは兄さんです!」
「そうなのか?それじゃあ、まずは腕慣らしだ!やってやるぜ!」
四人が戦闘に入る。
「
ジャキーンッ!
ザスッ!
四人は苦戦する様子もなく依頼をこなす。
彼らはやはり戦士だ。
辛い過去を背負う彼らがその過去を振り返るのは、まだ先の話。
場所は変わり、ホープがいるところから少し離れたところ。
「ここで間違いないか?」
布のローブを全身に纏う三人が山の上から、フォールクヴァングの村を見下ろす。
「ええ、ここに彼らはいるかと。」
「そうか、なら早く会いに行かんとな。本当に生きてるのだろうな、ホープよ。」
三人組は馬を走らせ村に向かう。
また一つ、スノウ達の世界が動かされる。
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