第五話 30秒の復讐、旅は始まる
ヒヤーッ。
空間の温度が少し下がったであろうか。
「久しぶりだな、オーディン。」
「その髪、その目、貴様フェンリルか!?」
オーディンは呆気に取られる。
「そうだ、待ってたんだよ。お前が裏でコソコソしてる時からな。」
「貴様裏切るのか!」
シュンッ!シュンッ!
オーディンは無数の武器を投射する。
「ふんっ!」
パリンッ!
フェンリルの体を覆う青い覇気で弾く。
「なんだと!貴様その力。」
「切り札ってやつだ。」
フェンリルは二つの刀を逆手に持ち、まるで狼がする四足歩行のように腰を落とす。
「時間が惜しい、30秒で終わらせる!」
シュン!
フェンリルがオーディンの目から消える。
「ど、どこにーー。」
グギャ!
オーディンの周りの魔法壁ごと刀で吹き飛ばす。
「ぐほっ!」
オーディンは飛ばされた衝撃を耐え前を見る。
「なに?いないだとーー。」
「後ろだよ!」
バキーンッ!
フェンリルの一振りで魔法の壁が壊れる。
「貴様ーー。」
ガゴッ!
フェンリルの蹴りがオーディンの顔を捉える。
「ごほっ、ごほっ、貴様そんな力を持って、なぜだ。」
「なんの話だ。」
「なぜ世界を自分の手に収めようとしないのだ!」
オーディンは杖を構える。
「
七本の光を纏った槍がスノウに突っ込む。
「そんなの簡単だよ。」
スササッ!
(次の槍は、右そして上の順番。)
第六感を使い、華麗に全てを避ける。
「国を統べる王なんて、興味ないね!」
ザスッ!
フェンリルの刀がオーディンの右肩に傷をつける。
「ひいっ!」
オーディンは素早く逃げるが、
シュンッ!
「速さで俺に勝てると思うなよ!」
瞬時に追いつき刀を振り下ろす。
「くっ!
シュインッ!
オーディンの周りをまた魔法壁が守る。
バキーンッ!
壁の一部が欠ける。
「くそっ、貴様がいるから私に平穏はーー。」
「他人のせいにしてんじゃねえよ、てめぇが強くなろうとしねえから自分の世界を作れないんだろ!」
ヒュンッ!
光速と言っても過言ではない速さで刀を振る。
「くそっ、くそ、くそ!お前一人に!!」
オーディンは懐から指輪を出す。
「そんなものも持ってんのか。」
「そうよ、これで私は最強となる!メギンギョルズ!」
オーディンは指輪を人差し指に嵌める。
バンッ!
バギッ!
バギッ!
オーディンの足元がひび割れ、血走った目、筋肉も二倍ほどになっている。
「落ちたな、オーディン。」
「死ね!フェンリル!」
ブンッ!ブンッ!ブンッ!
オーディンは両手に槍を持ち、振り回す。
(右から横薙ぎ、左は下から振り上げ。)
フェンリルは第六感でかすりもしない。
「ちょこまかと!王の前に、跪け!」
「てめぇが王だ!?一瞬たりとも認めてねえよ!」
スチャッ。
フェンリルは距離をおき、
「
チャキンッ!チャキンッ!
氷を纏った刀が、オーディンの槍を切り刻む。
「スノウ、お前の力借りるぞ。」
フェンリルは刀を腰にしまう。
スゥー。
一層空間が寒さを増す。
「
ジャギンッ!
二本の刀の居合斬りがオーディンの足を狩る。
「痛い、何故だ、何故我が最強になれんのだ!」
オーディンは無数の槍、斧、剣を召喚する。
「吹き飛べ!
ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!
無数の武器がスノウに向かう。
「失せろ!
ドゴォ!!
カチッ、カチッ、カチッ!
フェンリルの周りに青い光がたちのぼり、刀で弾く武器達が氷のように固まる。
まるで、氷の花畑ができるかのよう。
「努力もしねえ怠け者が!死ぬ気で10年間生きてきたこいつらを、妬んでんじゃねえよ!」
フェンリルは刀を前に構える。
「終わらせる!俺達の最終奥義!
一つの流派、十式を会得したものがたどり着く頂点。それが終式。
ズシャッン!
パキンッ!
フェンリルがオーディンを斬り上げると、その先には小さい氷の壁が生み出され、氷を蹴り返しまたオーディンを斬る。
地面から氷の壁へ、氷の壁から地面へ、氷の壁から壁へ、法則性のない彼の動きにオーディンは追いつけない。
「ぐは、げほ、や、やめてくれ、死にたく、ない。」
「舐めてんのか!てめえはその言葉を、いくつ踏みにじった!」
シュンッ!シュンッ!シュンッ!
さらにフェンリルのスピードが上がる。
「ウガ、ゲゴ、ウハ。」
「こいつで、眠りな!」
ザシュッ!
フェンリルの一撃がオーディンを真っ二つに斬る。
血が流れ、白目を剥いて倒れる。
「地獄で待ってろ。クソ野郎。」
カラン、カラン。
フェンリルの手から刀が落ちる。
「時間切れか、すまねえな、スノウ。」
シューンッ。
フェンリルとして動いてたスノウが、元のスノウに戻る。
「
「っ!がはっ!」
ポトッ、ポトッ。
スノウは口から血を吐き倒れる。
「えほっ、えほっ。なんだ、何が起きて。」
「兄さん!」
ヒメノがスノウに声をかける。
「ヒメノ……良かった、守れたの、か。」
安心したのも束の間、
ズンッ!
急に空気が重くなる。
ドスッ、ドスッ。
金色の椅子の奥から、もう一人歩いてくる音がする。
「やはりその程度か、オーディン。」
「誰だ、てめえ。」
スノウは這いつくばりながら顔を上げる。
「ふんっ!」
その男が右足をあげ、床に強く振り下ろす。
バンッ!
「ぐはっ。」
ミョルニルに似た重力魔法、いや、それを超えた力で四人を押さえ付ける。
「我が名は、オーディン・シン。始まりを作る存在。」
ゴゴゴゴゴッ。
ホープの四人は地面にめり込むが如く、圧力をかけられる。
「くそっ、息が……。」
「なんて、力。」
スノウもヒメノも指一つ動かせない。
「こんな力、尋常じゃない。」
リサは意識が飛びかける。
「みなさん、しっかり……。」
ユキナももがく。
「くそっ、俺は守れねえのかーー。」
ピカーンッ!
部屋の入り口から一つの声が響く。
「
重力魔法からドーム状の魔法が四人を守る。
「ん、何をしている、クレイトス。」
オーディン・シンの向いた先には、黒服の男が立っている。
「私たちの希望を、奪わないでほしいな。」
黒服の男はフードをとり、傷だらけの顔を晒す。
「邪魔をするか、クレイトス!」
「未来のためよ!」
クレイトスはドームの近くに移動する。
「ホープよ、我々の希望よ。この世界を、取り戻してくれ。」
クレイトスはスノウ達に話しかける。
「なに、を?」
「託すぞ、我が弟子達。」
スノウ達はドームの中で消えかかる。
「最強の戦士よ、もう一度世界を、救ってくれ。」
「せん…せい…。」
スノウがつぶやくと、
シュンッ!
四人はどこかに飛ばされる。
ここから四人はどんな生き方を示すのか。
一つの復讐を終えた彼らは、成り上がりの道を進み始める。
第一章 完
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第一章まで読んで頂きありがとうございました。
彼らはこれから記憶のカケラを見つけにいきます。
スノウ達の成り上がりを気になってくれる方!
中二病いいぞ! もっとやれ!
ホープの四人組 応援してるぞ!
と思ってくださいましたら、
ぜひ、レビューの記載
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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!
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