第九十一話 恐れの覚醒
女性の力によって、トロルがバラバラに砕け散った。
そして、トロルの中からモクモクした雲のようなものが生まれ、それを女性が取り込む。
「うーん、美味しい。」
「な、何を、してるんですか。」
ヒメノは声を震わせ、戦闘態勢を取る。
「うーん?ああ、この子の感情を食べたのよ。私の血肉の一部となれたことは、とても光栄でしょう。」
「君は、五神の!?」
「あー、セドリックさん。お久しぶりです。
その女性は、五神の一人、フレイであった。
黄色の長髪が美しく、緑を基調としたドレスを身に纏い、花の冠と腕輪をつける。
耳が尖っており、エルフのようだ。
「なぜ君がここに!」
「そんな当たり前なこと聞かないでくださいよ。ホープのみなさんを、消去するのが私たちの役目。」
「あなた、今までいくつの命を手にかけたの。」
ヒメノの声に怒りが乗る。
「まーた、おかしなことを聞きますわね。あなたは、今まで食べたご飯がいくつあったか、覚えてるというの?」
「くっ!」
ズザッ!
ヒメノが今までにないスピードで飛びかかる。
「
「ふっ。
バギーンッ!
ヒメノのサマーソルトと、フレイの花の腕輪からツタが出てぶつかり合う。
「あなた、恐れているのね。」
「ええ、そうよ。あなたが、この世界のすべてのモンスターや人間を同じようにするんじゃないか、怖くてしょうがないのよ!」
ヒメノとフレイがぶつかり合う。
「ヒメノくん!」
「邪魔をしないでくださる!」
バゴンッ!
地面から荊がたくさん生え、セドリックとユキナを襲う。
「なにこれ!?
「彼女の固有魔法、植物魔法だ!
ジャキンッ!ジャキンッ!ジャキンッ!
荊を斬り落としていく。
「ユキナちゃん!セドリックさん!」
「こっちは大丈夫!ヒメノちゃんはフレイを!」
「はい!
ガゴーンッ!
フレイは少し吹き飛ぶ。
「もう、私は戦いは好きでないのだけど。」
「ならどうして、周りのモンスターに戦いを強いるのですか!」
「そんなの簡単よ。私がやりたくないことは、誰かにやらせればいい。」
「あなたって人は!!」
バギーンッ!バギーンッ!バギーンッ!
ヒメノとフレイが激しい戦いを繰り広げる。
「ヒメノ!」
スノウ、リサ、セラも助けに走る。
「あなた達は、この子達と遊んでて!」
ブンッ!
黒いクリスタルが投げられ、オークエンペラーが二体でてくる。
「グォォ!!」
「邪魔だよ!くそ!」
スノウ達三人は二体のオークエンペラーと戦う。
「さあて、二人で続きを楽しみましょうかーー。」
「
ザッザッザッザッ!
空からの攻撃がフレイを襲う。
「くっ、あなた、こんなに戦えたのね。情報違いだわ。」
「どこの情報か知りませんが、私もホープの一人なんですよ!
ブンッ!ブンッ!
二本の火の斬撃がフレイに飛び込む。
「あなた、火も使えるの!?
フレイの周りを花が覆い、火を打ち消す。
「はぁ、はぁ。五神ってのは、厄介な人たちですね。」
「私に戦わせるなんて、あなたは許せないわ!」
ガギーンッ!ガギーンッ!
ヒメノの足蹴りと、荊がぶつかり合う。
「くそっ!
「どいて!
ザシュンッ!
ドガンッ!
「ウゴァ!」
スノウの重い縦斬りと、セラの衝撃波がオークエンペラーを怯ませる。
「もらった! 敵を貫け!
ボオッ!ジャギンッ!
リサの長剣に火が纏わり、龍の爪の如く斬り裂く。
「ウギャァ。」
二体のオークエンペラーは膝をつく。
「もう、使えない子だね。なら!」
「まさか、やめて!」
キュイーンッ!
オークエンペラーに向け、フレイは緑の光を放つ。
「ウギャァ!」
バゴンッ!
オークエンペラーはクリスタルとなり、そのクリスタルは砕け散る。
「な、なんだ!?」
「あなた達には、私の回復となってもらったわ。」
フレイの体にあった傷が癒えていく。
「うそだろ、こいつ、仲間を自分で殺したのか!?」
「仲間?違うわね、私の手足となる道具よ!」
「クソやろうが!」
バゴンッ!
地面から荊が生え、スノウ達の行手を遮る。
「邪魔だよ!」
「お兄!どうにかヒメちゃんのところまでーー。」
「ヒメ、ノ?」
スゥー。
ヒメノの周りに紫色のオーラが纏われる。
「な、なに?」
「許さない、あなたは、あなただけは。」
徐々にヒメノの周りが台風の如く風が巻き起こる。
「共に戦う者を仲間とすら思えないあなたに、慈悲はない。あなたは、ここで倒す。」
(グリンカンビ、私に力を貸してくれる?)
(当たり前よ!私も、フレイにイライラしてたの!)
(ありがとう。よろしくお願いしますね!)
バゴーンッ!
「
ヒュィーンッ!
ヒメノの右目が赤に、左目が紫色になり、肩から翼が生える。
「ヒメノ、お前もできたのか。」
「スノウ!早くヒメチンの手助けに行くよ!」
スノウ達も荊を斬り落とす。
「ははっ、あなたが出てきますか、グリンカンビ。」
「フレイって言いましたよね、あなたは、たくさんの命を奪った。それを自覚するまで、あなたは私から逃げられない。」
シュンッ!
瞬間移動したかと錯覚する速さで、フレイの目の前に現れる。
「なにっ!?」
「
バゴンッ!
瞬きする瞬間に、フレイの顎を捉え吹き飛ばす。
ヒメノの力が覚醒した瞬間だ。
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