第百三十一話 狙われたわけ
ガギーンッ!
セラは黒い者の手に持つダガーを刀で受け止める。
ギリリリリッ!
鍔迫り合いの火花が飛び散る。
「セラを狙ってくるなんて、いつの間に人気者になっちゃったのかな?」
「あなたは私にとって、最大の脅威。何が何でも消すほかないのです!」
「あなたには会ったことないと思うけどな!
ガギーンッ!ガギーンッ!ガギーンッ!
連続斬りで応戦する。
「ちっ!」
「あなたもかなりの手慣れみたいね、エーリュズニルでお兄が戦ってた人と似た感覚がするよ。」
「ふっ、あいつと同じにしないでもらいたい。私は、あんな奴より更に期待された存在でね、必ず任務を成功させる!」
カチャッ。
右手に持ったダガーを逆手に構える。
(何、この嫌な感じ。何かがくる!!)
「いきます。
「っ!?蛇の流派!?」
ブンッ!
体を捻りながら、ドリルのように回転して突っ込んでくる。
「そんな、まさか。
バリーンッ!
雷のバラで攻撃を防ぐ。
「ふふっ、やはりトップは強いようですね。ですが!」
「うっ!」
ガゴーンッ!
ズザーッ!
ダガーで弾き、セラを数メートル後ずさらせる。
「蛇流派、そんな、もしかしてあなたは。」
「そんな油断してる暇があるのですか!!」
ザッ!
ガギーンッ!ガギーンッ!
黒い者がセラを圧倒していく。
いや、セラが本気で戦えていないようだ。
「はぁぁ!!」
「くっ!」
ズザーッ!
セラは両足に少し傷を負う。
「はぁ、はぁ、はぁ。この感覚、あなたの戦い方、もしかして本当に……。」
「あら、何か気付いたのかしら?まあ、気付いたところで何も変わらないでしょうけど。ねえ、セラリウム。」
「あなたは、ミユウなの?」
スサーッ。
冷たい風が二人の髪を揺らす。
「ふふ、ふふふ、本当に、狼の人たちは鋭いんですね。」
バサッ!
黒い者がフードを脱ぐ。
その中から顔を出したのは、紫色のショートヘアーの女の子。セラ達と同じくらいの歳だろうか。
「うそ、でしょ。そんな……。」
「残念、真実よ。セラリウム、あなたの言う通り私の名前は、ミユウよ。」
「嫌だ、嘘だと言ってよ。なんで、蛇流派のミユウがここにいるの。セラが蛇流派としてトップになった時に、セクターから抜けたはずのあなたが!」
ニヤリッ。
ミユウは薄らと笑みを浮かべる。
「あなたがトップになるために、私は蛇流派から抜けて一般人になった。でも、完全に王国の手から逃れることはできなかった。」
「どういうこと?確かにあの時、クレイトス先生の力も借りてあなたを王国から外に出したはず!なのに、なんでーー。」
「それだけじゃ王国からは逃れられない。これまで、私を追放したあなた達を恨んで生きてきた。だから、私は自由になるために、この手であなたを排除する!」
ブンッ!
ガギーンッ!
セラとミユウはぶつかり合う。
「だったら、セラ達がオーディンを倒す!だから、セラ達に手を貸して!」
「そんなこと信じられると思う?一度、私は安全って言われてセクターから抜けて王国から出されたのに、気付いたら王国へ連れ戻されて、今強制的に戦わされてる。人間って、嘘つかれたらすぐには信頼を取り戻せないんだよ。」
グンッ!
ガリリリッ!
セラを押し込んでいく。
「あなたのせいで、私の人生は狂わされた!だから、これから先自分の自由を得るために、あなたは倒さなくちゃいけない!」
「セラの間違った選択のせいで、ミユウの人生を……。謝って許されることではないね。」
「そうよ!あなたのせいで、あなたのせいで!あなたの命で、罪を償いなさい!!」
ガギーンッ!
セラの構えを崩す。
「くっ!」
「もらった!死ね!!」
ズンッ!
ダガーがセラの心臓に迫る。
(ここで死にたくない、けど、それはセラのわがままかな。)
スッ。
セラは目を静かに閉じる。
「私の目的は、達成される!」
「ごめん、みんな。」
残り数センチ、彼女のダガーは命を捕えたと確信した。
が、
ブンッ!
何かが音を超えるほどのスピードで迫る。
そして、
ガギーンッ!
二本の刀がダガーを上から弾く。
「な、なに!?」
「よお、なに俺の妹に傷つけてくれてんだ。黒野郎!
バギーンッ!
ズザーッ!
ミユウは重い一撃に吹き飛ばされる。
「えほっ、えほっ。さすが、ホープのリーダー、強さは本物ね。」
「お、お兄、その人はセラのせいで人生をーー。」
「そんなこと知るか、黒服がどういうやつかなんて俺にはわからねえ。一つはっきりしてるのは、黒服はそっち側にいて、俺たちはこっち側にいる。そして、お前は俺の大切なものを傷つけた。だったら、俺のやることは決まってる。覚悟はできてんだろうな。」
ギリッ。
スノウの鋭い睨みが、ミユウを固まらせる。
「くっ、白狼!お前も排除しなくてはいけないのに違いない、ここでやってやる!」
「来るならこいよ、今の俺は機嫌が悪い。お前の身の安全は保証できねえぜ!」
ガチャッ。
スノウはミユウとぶつかり合った。
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