第百八十話 戦い、恨み
「いいぞ、その恨みに染まった顔こそオレが望んだものだ!」
「そうかよ、俺には関係ないけどな!
ガギーンッ!ガギーンッ!ガギーンッ!ガギーンッ!
素早い四連突きがバルドルを襲う。
「おおっ、怖い怖い。こりゃすぐに俺もやられちまうかもな、クレイトスのように!」
「クソ野郎が!」
「お兄!挑発に乗っちゃダメ!
ガゴーンッ!
セラの重い一撃がバルドルを後ずらせる。
「悪いセラ、助かった。」
「ううん、あいつはセラ達を自分の土俵の上に引き摺り込もうとしてる、気をつけて。」
「うぉぉ!!」
シュンッ!
セラの背後から棍を持った黒い戦士が迫る。
「セラ!伏せろ!
バギンッ!バギンッ!
氷の斬撃が黒い戦士を止める。
「こいつらも厄介だな、全員!単独での戦闘は控えろ、ツーマンセルで対応だ!」
「分かりました!
バギーンッ!
横蹴りが鎌を持つ戦士に直撃。
ブンッ!
ヒメノの背後を両手斧持ちの戦士が狙う。
「やらせないよ!
グルンッ!ガギーンッ!
リサの回転斬りが対処。
「ユキナくん!」
「はい!」
セドリックとユキナは背中合わせになる。
ズザッ!
剣を持った戦士と、ハンマーを持った戦士が突撃する。
「
グルンッ!
槍がブーメランのように二人に攻撃しながら戻ってくる。
「いける!
シュンッ!
ガゴーンッ!
セドリックのスピードに乗った一撃が、ハンマー持ちの戦士を吹き飛ばす。
「さすがです、セドリックさん!」
「ありがとう、けど何かおかしい。なんだ、この違和感。」
セドリックは攻撃した相手の手応えのなさに疑問を覚えた。
「来ますよ!」
シュンッ!
体勢を立て直した戦士が迫る。
「考えてる暇はないか、くっ!」
ガギーンッ!ガギーンッ!
至る所で激しい戦いが繰り広げられる。
「はははっ!やはり戦いは楽しい、これがあなたのやり取りか!最高だな、そうは思わないか?スノウ!」
ガギーンッ!
二つの斧の攻撃をなんとか受け止める。
「はっ、全く思わねえな!命のやり取りなんて、真っ平ごめんだ!」
「クレイトスの命を奪ったやつがよく言う!その手で殺した師匠の姿を、感覚を忘れることはできないやつが!」
「ああそうさ、忘れることはできねえよ、この先一生な。……けど、俺は向き合う。俺が、先生の分まで生き抜いてこの世界をてめえらから取り戻す!」
「そんなことが人間にできるとでも!弱者しか存在しないお前達が、やれる事などたかが知れている!」
シュンッ!
ガゴーンッ!
バルドルを雷の斬撃が襲う。
「邪魔をするか、セラリウム!」
「あなたは人間のことを何も分かってない!このギムレーは、人間の手になって数千年かけて作られた世界。その中で培った成功と失敗があるから、この世界は出来上がった!」
「その世界が、いつ滅んでもおかしくないところまで来ているのだ!ならば、この手で変えてやらないとな!」
「あなた達が手を出さなくても、人間は乗り越えられる!そのために、これまでの歴史があるんだから!」
ガギーンッ!
ガギーンッ!
スノウとセラの攻撃を同時に受け止める。
「そうか、師匠殺しと親友殺しがよく言う!守りたいものすら守れない弱者が!」
「だからもう無くさない!セラ達は誓ったんだ。」
「ああ、俺たちは大切なものがこぼれ落ちないように、全員で助け合ってこの世界を生きていく!それが、俺たちの責任ってやつだ!」
ガゴーンッ!
バルドルは勢い負けする。
「うぐっ、なるほどな、上部だけじゃないということか。」
ズザッ!
「はぁぁ!
ガゴーンッ!
風を纏った蹴りが、一人の戦士を苦しめる。
そして、リサ、ユキナ、セドリックも同じく黒い戦士に対して優勢。
「くそっ、本物のトップにはまだ及ばねえか、うおっ!」
ガゴーンッ!
スノウの重い一撃が地面にヒビを入れる。
「ちっ、逃したか。」
「おうおう、血の気は多いな。だが、これで俺の準備は整ったぜ。」
「準備だと?」
「そうさ、お前達は俺の力を知らない、さあ、これはなんだと思う?」
シュイーンッ。
バルドルの手に何か黒いものが集まる。
「なんだ、何をしてやがるーー。」
「兄さん!黒い戦士達から何かが抜かれてます!」
「こいつ、力を奪ってるのか!」
「いいや、正確にはこいつらに溜まった恨みだよ。」
シュイーンッ!シュイーンッ!
五人の黒い戦士から黒いものが抜かれていく。
バタンッ。
戦士達はその場に倒れ込む。
「くそっ、バルドル!」
「さあ、これで俺は完全な姿になれる!俺の力は、負の感情の増幅によって上がる。そして、お前達は俺への恨みが高いだろうからな、こんなにも溜まってくれたぜ!」
「全員!バルドルに攻撃をーー。」
「遅い!」
ドクンッ!
黒い力を自分の中に入れ込む。
バリ、バリ、バリ!
バルドルはみるみる大きくなる。
「何、この嫌な感じ。」
「すごいプレッシャーだ、これがバルドルの本当の姿。」
戦いはさらに熾烈を極めるものになった。
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