第百八十一話 奪う力

バギバギッ!

ガゴーンッ!

バルドルの地面にはヒビが入り、体長は4mはあるだろう。


巨人となり、全身は濃い紫色の化け物となった。


「ふはははっ!最高だ、これが俺の力、本当の姿!取り戻せたことに感謝しなくてはな!」

「冗談きついぜ、なんだこのプレッシャー。」


カタカタカタッ。

セラの刀が震える。


「心では倒せると思い込んでるけど、体が気づいちゃってる。。」

「武者震いじゃねえな、こりゃ。命の危険を感じてる。」

スノウとセラは平静を崩さない。


「兄さん!」

「ヒメノ、お前ら、気をつけろ。こいつは、今までのどんな奴よりも強い。」

「確かに間違いないね。あたし達の個人個人よりも強さだけじゃ上。でも、逃げるつもりはない!」

「威勢がいいな、虎よ。まあ、まずはこの場の掃除からだな。」


ブワーンッ。

シュンッ!

バルドルは片手に黒い球を作り出し、倒れた黒い戦士達に放つ。


「っ!!なにを!!」


ジュワッ!

倒れた戦士達は一瞬にして消し去られる。


そう、バルドルの魔法によって塵となったのだ。



「っ!?バルドル、君は正気か!彼らも、君が作り出した仲間なんだろ!そんな彼らを手にかけるなんてーー。」

「仲間なんて俺には存在しねえよ。あいつらは俺の力を使えるようにするための道具だ、だから使い終わったら片付けないとな!」

「あなた、やっていいことと悪いことがありますよ!」


ギリッ。

ユキナの槍が怒りで震える。


「はっ!俺がこの中で最強なのさ、力があるものは何やってもいい!それがこの世界の理だ!」

「ふざけんのも大概にしろよ、たとえお前が作り出したものだとしても、宿命の重さを、その身に教え込んでやるよ。」

「あんたみたいな危険なやつは、ここでセラ達が止める!」


シュンッ!

シュンッ!

スノウとセラが同時に走り出す。



「ふんっ、お前達では勝てないさ。深淵の悲劇アークサッド。」


ブワーンッ。

バルドルの周りの地面が闇に染まり、何も見えない底なし空間となる。


「地面がなくても!」


バサッ!

二人は刀を構えて宙を舞う。


狼派五式ロウハゴシキ! 円陣狼牙エンジンロウガ!」

希狼派四式キロウハヨンシキ! 廻閃牙カイセンガ!」


グルンッ!

ガギーンッ!

二人の回転斬りが直撃。


そして、

アギト!」


重なり合った攻撃は、バルドルに傷をつける。




しかし、



シュインッ。

傷は一瞬にしてふさがる。


「んなっ!?」

「再生した!?」

「その程度なのか、人間の力は。なら、ここで死ね。」


シュイーンッ!

バルドルの右手に闇の魔法がチャージされる。


「くそっーー。」

「させるか! 来たれ!ヒカリよ! 戦騎術センキジュツ! ロク! 反射光リフレクター!」

闇喰獣カーズイーター!」


バゴーンッ!

闇の砲撃をセドリックの光の盾で弾き返す。



ズザーッ!

三人は地面に降り立つ。


「大丈夫かい!」

「ああ、なんとかな。」

「ありがとう、セドくん。」

「これくらい、お安いご用ーー。」


ガクンッ。

セドリックは右手に持つ剣を地面に落とす。



「どうした!セドリック!」

「な、なんだ。右手に、力が入らない。」

「そんな、もしかして怪我をーー。」

「その手は、


ニヤリッ。

バルドルは不適な笑みを浮かべる。


「どういうことだ、セドリックに何をした!」

「簡単だ、言っただろ!俺の力は、負の感情で増幅する。そして、恨みの感情をこの姿となった。」

「奪って……まさか、セドくんの右手の自由を!」

「大正解!!リーンベルの右手は、お前の意思では動かせない!手が使えなきゃ戦えないよな、人間はよ!」



危険すぎる力。




そう、バルドルの力は



セドリックは右手の感覚を奪われ、自由に動かせなくなったのだ。



「さあ、どうする!俺に触れられたら一発アウト、楽しいよな、こういう駆け引きはよ!」

「ふざけやがって!」

「お兄!まずはセドくんを連れて下がるよ!」


バサッ!

スノウとセラはセドリックを抱えバルドルから距離を取る。


「セドリックさん!」

「大丈夫だ、僕は。確かに感覚はないが、他の部位は使える。」


ピキーンッ!

セドリックの危険感知アラートに反応が。


(まさか、あの体にこんなスピードが!)


「みんな気をつけーー。」

「遅い!」


気がつけば、ホープの背後にバルドルが。




「やらせない! 敵を貫け! 火龍レッドドラゴン! 虎派七式コハナナシキ! 激龍爪ゲキリュウソウ!」


ボォォ!

ガギーンッ!

バルドルの一撃を、リサは火を纏った龍で受け止める。


「ふんっ!無駄なことを!」

「無駄なもんか、力比べならあたしの方が上だよ!」


ガゴーンッ!

バルドルは数m吹き飛ばされる。


「さすが力自慢な虎だ、けど、その程度か。」

「うぐっ。」


バタッ。

リサは膝をつく。


「リサ!」

「だ、大丈夫。手は動かせるし、セドチンみたいに感覚を奪われたわけじゃないみたい。けど、なんか力を上手く入れられない。」

「だろうな、俺に奪われたのだから!」


ドゴーンッ!

バルドルの周りに闇の渦が生まれる。


「あいつの攻撃に触れたら力を奪われて、最悪感覚まで持ってかれるのか。ふざけた力だぜ。」

「さあさあ、もっと楽しもうぜ!ホープ!」


バルドルの攻撃はさらに激しくなっていった。



はたして、ホープ勝機はあるのか。

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