第百八十二話 解決策

ドゴーンッ!ドゴーンッ!

バルドルの猛攻は止まらない。


「そんなものか!ホープ!早く俺を倒しにこいよ!」

「くそっ!氷付与アイスエンチャント! 狼派二式ロウハニシキ! 蒼波ソウハ!」

「開け! 水面ウォーターサーフェイス! 鮫派八式コウハハチシキ! 水刃牙スイジンガ!」


ジャギンッ!ジャギンッ!

ピシャッ!

氷の斬撃と水の斬撃がバルドルに射出される。


キーンッ。キーンッ。

硬い守りに、全く歯が立たない。


「遠距離攻撃じゃ無理か、けど、近づくには代償がーー。」

「考えてる暇ないぞ!スノウ!」

「俺に負けない速さかよ、くそが!」


バギーンッ!

バルドルのパンチを刀で弾く。


ガゴーンッ!

ゴロロンッ!

力の差は歴然で、スノウは地面を転がる。


「兄さん!」

「俺は平気だ、そっちにーー。」

「来てやったぞ!」


バルドルはヒメノの目の前。



「死ね!闇喰獣カーズイーター!」

「やらせません! 開け! 水面ウォーターサーフェイス! 鮫派終式コウハシュウシキ! 鮫狂詩曲シャークラプソディ!」


シュインッ!

ズシャン!

二本の水の槍が、闇魔法に突き刺さる。



「ふん、バカが!」

「うぐっ。」


カランッ、カランッ。

槍が地面に落ちる。


ユキナの両手も自由を奪われた。



「そのまま楽になれよ!」

「させない! 火槍ファイアランス! 風槍ウインドランス! 同時展開! 鷹派終式オウハシュウシキ! アカツキ!」


ドゴーンッ!ドゴーンッ!

風と火を両足に纏い、バルドルを襲う。


「ふぐっ、そうだそうでなくてはな!」

「私の力だけじゃ吹き飛ばせない!?」

「ならセラが! 雷充填ライトニングチャージ! 希狼派七式キロウハナナシキ! 紫電衝破シデンショウハ!」


ガゴーンッ!

雷の衝撃波も重なり、バルドルは後ずさる。


「ユキちゃん!」

「す、すみません。私の両手も使えなくなってしまいました。」

「私を庇って、ごめんなさい。」

「今はあいつを倒すことが優先だよ!ユキちゃん、逃げることはできる?」

「はい、足は問題なく動きます。」


ドスンッ!ドスンッ!

バルドルは怯むこともなく地面を揺らしながら向かってくる。


「こんなに強大な力、どうすれば。」


ピキーンッ!

ヒメノに感覚共有シンクロが発動される。


「分かりました! 風槍ウインドランス! 展開! 鷹派八式オウハハチシキ! 竜巻タツマキ!」


ブォォォォ!!

竜巻がバルドルを呑み込む。


「ふんっ、こんな目眩しで俺に勝とうなどとーー。」

白狼初式ハクロウショシキ! 雪月花セツゲツカ!」


バリリリリッ!

ガギーンッ!

氷の刀がバルドルに切り傷を与える。



ズザーッ!

シューンッ。

スノウは瞬時に共鳴突破クロスドライブを使い、最低限の力の消費で攻撃していた。



「うがっ、痛ぇ、痛ぇじゃねえか!」

「やっぱり、痛覚ってのは消せないみたいだな!てめえも一応生き物ってことか。」

「お兄、今のって。」

「可能な限り短い時間の共鳴突破クロスドライブを使った。けど、何回もできるほど余裕はねえな。」


カチャッ。

スノウ達はバルドルと再び正面から向き合う。


(セドリックとユキナは手を使えねえ、リサも力が弱まってる。時間をかけていられないな。)


ドスンッ!ドスンッ!

ゆっくりとバルドルは近づく。


「少しは俺に勝てる見込みでもできたか?まあ、そんなものはないけどな!」


(あいつにも痛覚はあった、それに、常にトップスピードを出してこないあたりスタミナの概念もある。なら、ここは体力勝負ってところか。)


「スノウ、どうする。あたし達が全員、共鳴突破クロスドライブでいく?」

「いや、それは危険だ。もし、力を発動した状態で操られでもしたら、それこそ勝機がなくなる。」

「たしかに、けど普通の私たちの攻撃ではバルドルに通用しませんよ。」

「そうだな、だからここは短期決戦だ。セドリック!ユキナのことは任せる!」


シュイーンッ!

スノウは感覚共有シンクロを発動する。



「うそでしょ、ぶっつけ本番でこんな要求するなんて、本当にスノウは無茶しか言わないんだから。」

「でもお兄らしい作戦だし、成功確率も高そう。」

「後は、私たち四人がどこまでやれるか、ですね。」


シュイーンッ!

バルドルの手に闇魔法が溜められる。


死の大砲デスキャノン!」


バゴーンッ!

大きな闇の魔法が複数投射される。


スタタタタッ!

スノウ、ヒメノ、リサ、セラはバラバラにバルドルに向かう。


「ユキナくん、失礼するよ!」


バサッ!

セドリックはユキナを片手で抱え、攻撃を避ける。


「ほらほらほら!逃げてばかりじゃ勝てねえぞ!そんなんでいいのかよ、人間の希望!」


バゴーンッ!バゴーンッ!

辺りが闇魔法で削り取られていく。


自然豊かであった広場は、見る姿もない。



「全く、もっと楽しめると思ってたが、期待外れだな。来ねえなら、こっちから終わらせるぞ!」


シュイーンッ!

闇の魔法をセドリックとユキナに集中させる。


「くそっ!」

「セドリックさん、私はいいからあなただけでもーー。」

「そんなこと、この身が滅んでもしてたまるか!約束したんだ、ホープのみんなに、自分に、それがどんなに難しいことでも、僕には信じ合える仲間がいる!」



シュンッ!

何かが空を切る。


「うごはっ。」

バルドルの背中から血が垂れる。


「さすが、スノウだね。」

「なんだ、何が起きた?」


カチャッ。

スノウは刀をバルドルに向ける。


「なんだ、見えなかったのか?悪いな、速すぎたみたいで。……まあ、俺の速さは俺じゃなきゃ見逃しちゃうからな、無理もねえか。」

「んだと!人間のくせに!」

「その人間の力を、その身で味わいなさい! 敵を焼き斬れ! 猛獣ビースト! 赤虎上式シャッコジョウシキ! 猛獣突撃ビーストキラー!」


ピューイッ!!

ガァァ!!

キシャャァ!!

炎でできた鷹、虎、蛇がバルドルを襲う。


「ぐぅぅ!こんなもので!」


ボフンッ!

バルドルはなんとか弾き返す。




気付けば、四方をホープに囲まれていた。


「悪あがきか、いいぜ!きやがれ!」

「さあ、反撃開始だ!」


ホープの力が発揮されつつあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る