第十八話 英雄の役割、新技会得

スタッ、スタッ、スタッ。

四人はノーアトューンを出て、一時間ほど歩く。


「エインズさん曰く、ビフレストは私たちの修行してた村って話でしたよね?」

「そうだったね、どんな場所かな?ヒメチンどんなの想像する?」

「うーん、なんか筋トレたくさんしてるマッチョの人がたくさんいそうな村とかかなとは思いますけど。」

ヒメノとリサが話し合う。


「いやいや、そんなリサみたいながたくさんいるとかーー。」

「あ??」

「ピューピューピュー。」

リサの虎のような威圧をスノウは口笛でごまかす。


「先輩のデリカシーのなさは、昔からなんですかね。」

「そうだろうね、スノウは女心を分からないから。」

「うるせえ。」

いつも通りな会話をしてると、少し先に村が見える。


「お、あれじゃねえか?ビフレスト。」

「それっぽいですね、リサさんここから状況は見えますか?」

「任せて!」


ジィーッ。

リサは千里眼でビフレストの村を見る。


「へ……。」

リサは表情を歪め、言葉を詰まらせる。


「あの村、襲われてる!」

「え!?モンスターですか!?」

「違う、ゴブリンの群れ!」


ザザッ!

「ちょっと!兄さん!」


スノウは先頭きって走り出す。


「早く向かうぞ!被害を最小限に抑える!」

「もちろん!」


ザザザザザッ!

四人はビフレストに向けて全速力で向かう。




村の中では、兵士たちが応戦していた。


「くそっ、戦える者は前へ!負傷者は医務室へ!」

「グレイ隊長!報告です!」

「どうした!」

グレイと呼ばれる男は軍人からの報告を受ける。


「西門は壊滅状態、東門も最終防衛ラインに突入してます。このままでは、すぐにここにも。」

「くそっ、村の民をこの拠点に集め終わり次第籠城する。急ぎ、皆を集めろ!」

「はっ!」


タッタッタッ!

軍人は走り出す。


「くそっ、なんでいきなりゴブリンの大群が。ヘルクリスマスの残党だとはいえ、多すぎだ。」


ズザザッ、ズザザッ。

グレイは右足を引きづり歩く。


「この足が動けば、骨折ごときで戦力になれないとは。」

「隊長!」

「どうした!」


ドガーン!!


軍人が走ってくる方面から爆発音がする。


「西門突破されました!このままでは!」

「ちっ、もはやこれまでか。」


ギリリッ。

グレイは歯を食いしばる。


「くっ……、今拠点にいる者で、籠城する。」

「な、まさか!まだ村の民も避難完了してません!」

「分かってる!だが、一人でも多くの命を助けなくてはーー。」

グレイの視線に子供とその母親が目に入る。


タッタッタッ。

「はやく!走るのよ!」

「待ってよ、ママ!」


ゴスッ!ゴスッ!

その後ろからは地響きを起こしながらゴブリンが迫る。


「こんなところまでゴブリンが!」

「隊長は先に!あの二人は自分が!」


ズザザッ!

軍人は剣を携えゴブリンに走り出す。


「待て!うぐっ。」

グレイに骨折してる右足の痛みが走る。


「死ね。」

ゴブリンが斧を持ち上げる。


「くそっ、間に合わなーー。」

ゴブリンが斧を親子に振りかざそうとする瞬間、



シュンッ! ズシャン!

狼派一式ロウハイッシキ! 迅狼ジンロウ!」

スノウの素早い一撃が、ゴブリンを真っ二つに斬る。



「な、なんだ。あいつは。」

「隊長!救援です!」

グレイはスノウを見つめる。


「おい!そこのあんた!この村の人達の避難を!」

「な、何を言ってる!君だけで全部倒すつもりか!」

「俺だけ?何言ってやがる。」


ドスッドスッドスッ!

二人が話してるところに、三体のゴブリンが迫る。


「あ、危なーー。」

グレイが呼びかけようとした途端、


鷹派二式オウハ二シキ! 鷹弾イーグルシュート!」

虎派一式コハイッシキ! 猛虎モウコ!」

鮫派三式コウハサンシキ! 破甲槍ハコウソウ!」


ドガッ! ザシュッ! バゴンッ!

三人の攻撃で、ゴブリンは白いクリスタルとなる。


「兄さん、飛ばしすぎです!」

「でもまあ、助けられたから結果オーライかな!」

「先輩について行くこっちの身にもなってほしいですけどね!」

ヒメノ、リサ、ユキナはスノウに追いつく。


「へへっ、まずはこの村を守るぞ!俺とリサはこのまま東門の方!ヒメノとユキナで西門を守れ!」

「了解です!」


ズザッ!

ヒメノとユキナは後方のゴブリンと対峙する。


「行くぞ、リサ!」

「もちろん!」


ダダダダダッ!

スノウとリサは東門の方へ走り抜ける。


「彼らは何者だ?」

「グレイさん!私たちも避難所に入れますか!?」

「ああ、ここから入ってくれ。」

先ほどの親子が避難所という名の拠点に入る。


「どこの誰かはわからんが、頼む。この村を助けてくれ。」

グレイは村人の避難を続ける。




まずはスノウとリサのいる東門。


「リサ!何体いる!」

「合計七体!全部ゴブリンだよ!」

「オッケー!」

スノウとリサは一体ずつ片付けていく。


狼派四式ロウハヨンシキ! 牙突四閃ガトツシセン!」


ズシャッン!ズシャッン!

スノウの刺突、リサの攻撃で残り二体になる。


スノウとリサで、二体のゴブリンを挟み込む形になる。


ピキーンッ!

(この感じ、リサとならいけるか?)

(なんだろう、スノウのイメージが頭に入って来るような。)


ズザッ!

二人は同時に走り出す。



そして、


狼派一式ロウハイッシキ! 迅狼ジンロウ!」

虎派一式コハイッシキ! 猛虎モウコ!」

二人の攻撃が完全に重なり合い、


アギト!」


ズシャン! ザクッ!

スノウの素早い一撃と、リサの重い一撃が完全に重なり二体のゴブリンを封殺する。


二人の間で、感覚共有シンクロが発生した。


東門のゴブリンは殲滅された。


「スノウ、今のって。」

「ああ、感覚共有シンクロだろうな。それより、村を見回るぞ!まだいるかもしれねえ!」

「了解!また後で!」


タッタッタッ!

二人は村を巡回する。



彼らは着実に力を取り戻している。

最強の戦士に戻る時は、そう遠くないのかもしれない。

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