第百四十二話 スノウの真実
スノウとミーミルはお互いの意見をぶつけ合う。
「アトリの息子だからとか、使命があるとかは全て抜きだ、ミーミルって一人の人間は本当に王になりたいのか?」
「そ、それは……。皆を導ける王になれるかは分からない。けど、このギムレーをオーディンの手から取り戻したいという気持ちは私の意志だ。」
「たとえ王になることが、どんな茨の道でもか?」
ジッ。
ミーミルの目を見つめる。
「ああ、私はここに来るまでに多くの者に助けられてきた。私のために散っていった者たちに、胸を張って向き合いたい。そのためなら、どんな苦労も乗り越えてみせる!」
「その気概があるなら、なってみればいいんじゃねえか?」
「あ、ああ……。」
やはりミーミルの顔には何か不安を感じさせるものがある。
「やっぱり、何か迷ってるんだな?」
「……、本当に私がなっていいのかが分からないんだ。周りの者達は、私のことを信頼してギムレーを託すと言ってくれている。だが、私に父上のような力があるとは思えないのだ。」
「そんなの、今のお前が持ち合わせてるわけないだろ。」
「ふふっ、やはり私はーー。」
グイッ!
ミーミルの顔を寄せる。
「あんたの父親だって、最初からまとめ上げる力を持ってたわけじゃねえだろ。そこに至るまでの、日々努力してきた姿を想像できない奴が、同じ存在になれるわけないだろ。」
「っ!?そ、それはそうだが、父上には
「本当にそれだけか?じゃあお前は、未来を見る力があるからって、仲間や国民を蔑ろにするやつを支えたいって思うのか?」
二人の口論は続く。
「そんなことはない!けど、力がない者が上に立ったとしても、誰もついてくるわけがない!」
「なんで決めつけるんだよ!この国を支えてきた奴らが、みんな力に頼りきってたわけじゃないだろ!そんな奴らしかいなかったら、この国はとっくに滅びてる!」
「だが、力がないと不安なんだ。私一人で、この国を導けるのかーー。」
「なんで一人でやろうとしてんだよ!」
ガゴーンッ!
スノウが頭突きをかます。
シュイーンッ!
スノウの頭の中に何かが流れ込んでくる。
(な、なんだ!?頭の中に何かが入り込んでくる。)
パチッ。
スノウは目を閉じる。
そうすると、古めかしい町が見えてくる。
(なんだ、ここは?俺はさっきまで、ミーミルと話してたはず。)
タッ、タッ、タッ。
一人の少年が走っている。
(なんだ、子供?さっきの町にあんな子はーー。)
ドガーンッ!!
爆発音が鳴り響く。
(ば、爆発!?敵か?)
タッ、タッ、タッ。
一人の大人が火を上げる家の前に立つ。
(何してんだあんた!早く逃げろ!)
スノウの叫び声は目の前の人には届いていないようだ。
「はっはっはっ!これであいつらにまた復讐ができる!」
男は高らかに笑い、その場を後にする。
(何言ってるんだあいつは?復讐?どういうことだ。)
シュイーンッ!
再度スノウの頭に何かが入り込む。
(またか!なんなんだこれは!)
次の映像は、賑やかな町の宿屋の前。
(この宿屋、知ってる気がする。)
「ありがとう!お姉さん!」
「はーい!気をつけて持って帰ってね!」
タッ、タッ、タッ。
先ほどと同じ少年がお菓子を手に走り去る。
(さっきと同じ子供だ。けど、どこかで見たことがある気がする。)
ドガガガガンッ!
先ほどの宿屋が崩れ去る。
(なっ!?なんで崩れた?さっきまで普通にーー。)
「うーん!最高だ!これで、また奴らに圧をかけることができる。俺をじゃけんにしたこと、後悔しろ!」
(あいつもさっきと同じ奴だ。あいつが仕組んでるのか?)
次の映像では、広場の噴水が爆発し周りにいた人たちが怪我を負う。
さらに次のものは、商店街で刃物を持った男が多くの人を傷つけその男は巡回兵に取り押されられていた。
(ま、まさか。この映像、俺のガキの頃の記憶か?)
すべての映像において、青い髪の子供が走り去っていく。
そして、逃げ去った後から一人の黒いコートを着た男が現れ、何かしらの事件が発生する。
そして、最後の映像。
賞金首として逃げる青髪の少年を、数人の大人が追いかける。
そして、転んだ少年を殺そうとした大人たちは何かを感じ取り、逃げ去る。
(あれは、間違いなく俺だ。
そして必ずセットで出てくる大人。
黒い大きなコートが特徴で、深めに黒いハットを被っている。
パサッ。
その男が、帽子を取り素顔を表す。
(んな!?あいつは、サイファー!?)
スノウの目には、アクセプト家の親戚であるサイファーの姿が映った。
銀色の長い髪に、右目の下に大きなバツ印の傷跡。
顔はとても強面で、いかにも悪人な顔をしている。
(なんでサイファーがいるんだ!?あいつは父さんが町から追放したはず……まさか!?)
「よーし!これであいつのガキは生きられない世界になってきたな!せいぜい後悔しろ!俺を追い出したこと、てめえの息子に全て償わせてやるからよ!」
シュイーンッ!
スノウは現実の世界に引き戻される。
「白狼!白狼!大丈夫か?」
「んなっ?ここは……。」
「私に頭突きをした途端に、急に止まったんだ。」
「そ、そうだったのか。なあ、お前の力って本当に
スノウはミーミルの目を見つめる。
「ど、どういことだい?」
「俺は、ガキの頃の欠けてた記憶と俺が見てないはずのその時の姿が見えてきたんだ。お前の力って、未来じゃなくて、過去を見る力なんじゃないのか?」
「っ!?」
ミーミルの力について、スノウは一つ踏み込むことができた。
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