第百四十三話 力とは、答え

「な、何を言っているんだ?私に触れたことで、過去が見えたというのか?」

「そうだ、俺は元々忌み嫌われ子カーズボーイって呼ばれてたんだ。けど、呼ばれ始めた理由を俺は知らなかった。」

「その理由を、解き明かすことができたというのかい?」

「ああそうだ。俺は、ある男にはめられたんだ。あんたのおかげで、俺は救われたよ。」


ニコッ。

スノウが優しく微笑む。


「そ、そうなのか。そういえば父上から聞いたことがある、未来予知フューチャーサイトとは逆の能力、記憶の探究リマインドというものがあると。」

「そうなのか、そしたらミーミルの力は記憶の探究リマインドってことで良さそうじゃねえか。」

「あ、ああ。私も白狼のおかげで少し救われた気がする。」

「なら良かったな。ふぅー、なんか疲れたから俺はもう寝るぜ。」


タッ、タッ、タッ。

スノウは部屋に戻ろうとする。


「は、白狼!」

「どうした?」

「あ、えーと、君は私についてきてくれるのか?」

「……、まだ分かんねえ。けど、敵になるつもりはねえよ。」


スタッ、スタッ、スタッ。

部屋に戻っていく。


「まだ私の中に迷いが残っている、これを消さない限りは本当の信頼は得られないってことだな。」


ミーミルは明るく照らす満月を見上げた。

彼の顔には、少しの希望が宿っていた。


チュンッ、チュンッ。

次の日の朝が来る。



「んっ、朝か。結局ゆっくりできたな。」


バサッ。

スノウは起き上がり窓から外を眺める。


太陽による光が町に差し込み、多くの人々が笑顔で従事してる姿が見える。



「この町は平和だな、他の町もこんな風にしていかねえとな。」


バサッ。

スノウは寝巻きのシャツを脱ぐ。


「スノウ!起きてこないから起こしにきたよ!」

「うん、ああリサか。悪いな。」

「起きてるんじゃん!早くご飯食べーー。」


キィーッ。

リサがドアを開けると、上半身裸のスノウの姿が。


「え、あ、ご、ごめん!」

「なんだよ、別に男が上着てないくらいなんてことないだろ。」

「それはそうだけど、いきなりは刺激が……。」


(危ない、危ない。なんで動揺してんの!あたしは!)


「じゃあ、先に食堂に行くから早く来てね。」

「なあ、リサ。一つ聞いてもいいか?」

「え?この状況で?」

「リサだから聞きたいんだ。」


カタッ。

リサはスノウの方を振り向く。


「リサはよ、俺と出会った時に多くの仲間を船で失ったよな。やっぱり、?」

「っ……、まあ、全く思わないって言ったら嘘になるかな。けど、あたしがもしあの時の犯人を今見つけたとして、その人を殺すことが正しいとは思えない。」

「それは、理由でもあるのか?」


スノウは真っ直ぐ目を見つめる。


「理由、か。深い理由はないよ。……けど、あたしが復讐を成し遂げたとして、喜んでくれる人はいるか分からない。だったら、今を一緒に生きてくれるスノウ達と苦しんでる人たちを助けたい気持ちのほうが大きいかな。」

「……ははっ、やっぱリサに聞いて正解だな。」

「なんでいきなりそんな事を?」

「いーや、なんとなくだよ。」


カタッ。

スノウはリサに背中を向ける。


「さあて、朝飯食べに行くか。」


リサはスノウの背中に何かを感じとる。

(違う、スノウはまた抱え込もうとしてる。)


パサッ。

リサが後ろからスノウに抱きつく。


「な、なんだいきなり!?」

「もしかして、昔のことで何か思い出したの?」

「……まあ、そんなところだ。」

「スノウの過去、忌み嫌われ子カーズボーイのことだよね。それは、話しにくいこと?」


ギュッ。

リサの抱きつく力が強くなる。


「いや、思い出したのもきっかけがあったんだよ、だからみんなの前で話すさ。」

「本当に?」


ジロッ。

スノウの顔を覗き込む。



「ああ、俺はみんなを頼るって決めたんだ。一人で抱え込んでも、いいことなんてないからな。」

「そう、なら良かった。もしかしたら、また抱え込んじゃうんじゃないかって不安だったんだ。」

「ははっ、心配性だなリサは。けど、ありがとな。」

「ううん、あたしは絶対スノウから目を逸らさない。あたしの大切なリーダーなんだから。」


ニコッ。

リサは微笑みを浮かべる。


「ああ、それと一ついいか?」

「なに?」

「服を着替えたいんだが、離れてくれないか?」

「え、あ!ごめん!」


ササッ。

リサは慌てて距離をとる。


(だ、大丈夫かな?このうるさい心臓の音聞こえてなかったかな?)


「先行っててくれ、俺もすぐ行くからさ。」

「わ、わかった!早くしてね!」


タッ、タッ、タッ。

リサは食堂へと向かう。


「ふう、そうだ。俺は、サイファーを恨んでいるのかもしれない。けど、あいつを殺すことで、今のホープとの関係が崩れるくらいなら、手を出す必要はねえな。」


ガタッ。

スタッ、スタッ、スタッ。

スノウは階段を降り、食堂へ向かった。


「あ、お兄!おはよう!」

「おはようございます!兄さん!」

「やっと起きたんだね、スノウ。」

「おはようございます、先輩。」


スノウの目には、眩しいくらいの仲間の笑顔が映る。


(ああ、そうだ。ここが俺の居場所だ、この場所を守るために、俺は力を振るう。)


「ああ、おはよう!」


六人は食事を摂り、ミーミルのいる城に向かうのであった。

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