第二十四話 力を持つ者、対話を試みる
「じゃあ、明日はビフレストの山に登ってみるか?」
「いいよ!スノウ寝坊しないでよね!」
「それはリサの方だろ。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
ガチャンッ。
四人は各部屋に入る。
「はぁ、行く場所行く場所で何かしらに巻き込まれるな。これも、トップの定めか。」
スノウは部屋の外を窓越しに見る。
「オーディン、お前は何がしたいんだ。」
ザザッ。
スノウはカーテンを閉め、眠りにつく。
チュンチュン、チュンチュン。
朝日と共にスズメが鳴いている。
「ん、朝か。起きるかーー。」
モゾモゾ。何かが動く。
「ん、なんだ?この温かさは……!!」
ベットにはリサも横たわっていた。
「ん、あ、スノウ。おはよう。」
「お、おはよう。……じゃなくて、何してんだお前は!」
「いやー、早起きしたからスノウが寝坊しないように起こしに来たらあまりにも熟睡してたから、そしたらつられてあたしも眠くなって、てへっ!」
リサは誤魔化して笑う。
「てへっ!じゃねえよ、ヒメノやユキナにバレたらどうするんだ!」
「へ?そしたら、あたしがスノウに襲われたってことにすれば解決ーー。」
「するわけねえだろ!俺の首が飛ぶっての!」
二人が騒いでいると、ドアから音がする。
コンッ、コンッ、コンッ!
「兄さん?起きてますか?」
「マジで来たよ……ああ!起きてるよ!すぐ準備するから待っててくれ!」
「え、あ、はい。あと、リサさんどこにいるか知りませんか?」
スノウの心臓が跳ね回る。
「い、いや。知らない。」
スノウが誤魔化すと、
「ふぅ。」
おもむろにリサがスノウの耳に息を吹きかける。
「ひぃっ!」
「え?兄さん?大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ!気にしないでくれ!」
(このバカ、何しやがる!)
スノウがリサを睨むと、イタズラ顔でこちらを見ている。
(ごめんね、ついつい!)
(このやろ、後で覚えとけ!)
「兄さん、一ついいですか?」
「な、なんだ?」
「申し訳ないとは思ったのですが、私の
「はっ!?」
ヒメノの声に怒りがすこし乗る。
「兄さん、開けても、いいですよね。」
「いや、ちょっと、待っーー。」
バサッ!何かがスノウに覆い被さった。
ガチャ。
ゆっくりとドアが開かれる。
「なっ!!」
ヒメノが目にした姿は、
仰向けのスノウの上に、リサがうつ伏せで覆い被さっていた。
「な、な、な、何してるんですか!!」
「あっ、えーとね、夜這い?」
「っーー!!兄さん、後で、お話ししましょうね?リサさんも、その後で。」
ガジャンッ!
ヒメノの顔は今までに見たことない怒りの顔。
ドアも激しい音を立てて閉まる。
「大変なことになったね、スノウ。」
「お前が原因だろうが!」
その後、スノウはヒメノに一時間説教を受け、リサも10分ほど説教を受けた。
賑やかな朝を迎え、四人は外に出て山へ向かう準備をする。
「全く兄さんは、朝からもう。」
「だから、あれは俺じゃなくてリサがーー。」
「でも、まんざらじゃない顔してましたよね!」
二人のケンカは止まらない。
「リサさん、ヒメノちゃんが大変だからこれからはああいうことは控えてくださいね。」
「うん、了解。あたしもヒメチンのあの怒り顔はもう見たくないかな。」
ズサッ、ズサッ、ズサッ。
四人はそのまま山を登り始める。
ビフレスト山……スノウ達、セクターのメンバーが、トップになるために修行した山。
いろんな訓練施設や、武器庫など多くの建物もある。
そして四人が向かった場所は、謁見の間。
トップの中に宿ると言われる、神と話せる場所。
「ここで、俺たちの中にいるやつと話せるのか。」
「そう見たいですね、兄さんからでいいですか?」
「ああ、やってみる。」
スノウは胸に手を当て力を呼び起こす。
「
ボワーッ!
スノウから青い光が発生し、その光は謁見の間にある石の上に集まる。
ボフンッ!
白い狼が現れる。
「お前が、俺の中に棲む力なのか。」
「そうだ、こうして会うのは久しぶりだな。スノウ。」
「久しぶり、なんだな、フェンリル。」
スノウとフェンリルは対面する。
「どうだ、他の奴らも呼び出したら?」
「そうだな、みんな。」
「分かりました。」
「
「
「
三人の呼びかけに応じて、紫色の鷹、真っ赤な虎、緑色の鮫が現れる。
「ヒメノ、久しぶりね!」
「はい、お会いできて嬉しいです。」
ヒメノはグリンカンビに近づく。
「リサよ!相変わらずたくましいな!」
「もちろん!あたしはあたしのままよ!」
リサはすぐに打ち解けている。
「ユキナ、緊張しないで。うちは、あなたと一心同体なんですから。」
「は、はい。頑張ります。」
ユキナは緊張の面持ち。
「我らが一度に集まるのは、正直もう叶わぬと思っていたが、スノウ達のおかげで再会できた。礼を言う。」
「いや、俺たちもあんた達の力が無かったら死んでたさ、お互い様だよ。」
四人と四体は向かい合う。
「フェンリル、聞きたいことがある。」
「なんとなくは分かるが、なんだ?」
「オーディンは、何が目的なんだ。」
その場の空気が重くなる。
「そうだな、簡単に言えば……この国の征服だ。あいつは、この世界を自分のものにしようとしてる。」
「……。」
薄々感じていたことではあったが、国王が自分たちの敵と確信に変わった瞬間。
これから彼らは多くの事実を受け止めなければいけない。
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