第百五十七話 サイファーの意思

「いいね!そのむき出しの感情が、俺をさらに昂らせる!!」

「てめえが奪ってきた命の重さを、思いしれ! 氷付与アイスエンチャント! 狼派九式ロウハキュウシキ! 狼燭ロウソク!」


バリバリバリッ!

氷の塊を作り、サイファーの視界を遮る。


「そうか!教えてくれるなら、嬉しいことだな!ぶっ飛べ!!」


バゴーンッ!

斧で氷を真っ二つ。


しかし、その先にスノウはいない。


「なに?」

「いくらでも教えてやるよ、罪の重さってやつを!!」


サイファーの上からスノウの攻撃が降り注ぐ。


ガギーンッ!

「はははっ、いいぜ、だんだん温まってきたぜ!!」

「ふざけんじゃねえぞ!」


ズザーッ!

スノウの攻撃でサイファーは後ずさる。


「ふぅ、今の俺ならこれくらいってところか。」

「どうした、もうやる気無くしたのか?」

「冗談言うなよ、これからもっと楽しくなるんだからよ!」


ピカーンッ!

サイファーは光り輝く指輪を右手中指に嵌める。


「な、それは!」

「メギンギョルズ!俺に力を見せてみろ!」


ドゴーンッ!

全体的にサイファーの体が大きくなり、筋肉量が確実に増えている。


細身だった彼の姿はどこかへ行き、ゴリゴリの人間に変わっていた。


「メギンギョルズ、さすがだな。俺に内側から力をくれる!楽しいな!」

「サイファー、それを使った人間がどんな結末を辿るのか知ってんのか!」

「今までの奴らは弱かったのさ、けどな、俺はこの力を制御できる!てめえを殺すための力として、使いこなせるのさ! 爆塵斧バクジンフ!」


ドガーン!!

大きく振り下ろした斧は地面を砕き、飛ばした破片でスノウを襲う。


「ちっ! 狼派五式ロウハゴシキ! 円陣狼牙エンジンロウガ!」


グルンッ!

ジャギンッ!ジャギンッ!

その場で回転し、破片を弾き飛ばす。


「隙だらけだぜ、大馬鹿野郎!」

「くっ!」


ガギーンッ!

ドゴンッ!


力強い拳の一撃が、スノウを壁に叩きつける。


「これがオーディンの力か、なんて最高なんだ!」

「えほっ、えほっ。オーディンの力のせいで、さらに脳筋になったか。」

「なんとでも言えよ、ここで死ぬ雑魚に何言われても関係ねえからよ!」

「死んでやるかよ! 狼派七式ロウハナナシキ! 餓狼撃ガロウゲキ!」


ガギーンッ!

斧と刀がぶつかり合う。


「はははっ!いいね、いいね!これが俺の求めてた殺し合いだ!」

「そうかよ、一人で楽しそうで良かったな!」

「お前も楽しめよ!この瞬間を!命のやり取りを!」

「戦闘狂じゃねえんでな、俺はお前を倒して早くあいつらと合流してえんだよ!」


ガギーンッ!

二人は一旦距離を取る。


「てめえには借りがあるんだよ!ちゃんと返さないと、失礼ってもんだろ?」


バサッ。

サイファーは右眼を覆っていた布を剥がす。


そこには、大きな火傷の跡が。



「なんだよそれ。」

「これか?これはな、お前が存在したせいでつけられた傷だよ。なあ、忌み嫌われ子カーズボーイ!」

「まさか、お前がこの前言ってた傷って。」

「そうさ、これだよ!てめえが俺の町にいたせいで、一生消えねえ怪我を負っちまったんだよ!」


ブンッ!

音速を超える早さでスノウに迫る。


「なあ、責任とれや!スノウ・アクセプト!」

「ちっ! 氷付与アイスエンチャント! 狼派八式ロウハハチシキ! 氷華ヒョウカ!」


カチカチカチッ!

斧を刀から発生する氷で固めていく。


「俺はただ復讐がしたかったのさ!てめえにつけられたこの傷のな!」

「それは、謝っても謝りきれねえ。」

「そうさ!俺にこんな事をした奴らはもう葬り去った!あとはお前だけだ、ここで死ねや!」

「けどな!俺もここで死ねねぇ!大切な仲間との約束があるからな!」


ガギーンッ!

氷で固まった斧を粉砕。


狼派一式ロウハイッシキ! 迅狼ジンロウ!」


シュンッ!

ズシャン!

高速の一撃が、サイファーの両足に傷を入れる。



「痛っ、さすがだな、この世界の希望!だからこそ、壊したくてしょうがねえ!」

「俺の命は、そう簡単にくれてやれねえんだよ!」


ガギーンッ!ガギーンッ!ガギーンッ!

激しいぶつかり合いが繰り広げられる。


「はぁぁ!! 粉砕フンサイ!」

「ちっ!」


ガギーンッ!

拳をなんとか刀で受け切るが、その風圧で吹き飛ばされる。


「さあ、そろそろ疲れてきたんじゃねえか?」

「それはどっちのことだ?俺は10年も修行させられてたんだ、こんなんでへばってられるかよ!」

「そうか、なら俺も本気で相手してやんねえとな!」


ピカーンッ!

サイファーはもう一つのメギンギョルズを取り出す。


「なっ!待て、サイファー!まさかお前!」

「そうよ、そのまさかよ!俺は選ばれし戦士、オーディンの力を、極限まで活かせる存在!」

「やめろ!そんなことしたら、もうお前に戻れなくなるぞ!」

「知ったことか!スノウ・アクセプト、お前を殺せるなら、なんでもやってやるさ!」


シュイーンッ!

サイファーの左手中指にメギンギョルズが嵌められる。


これで二つをはめてしまった。


「うぐ、ぐ、おぉぉ!!」


ドゴーンッ!

サイファーから闇の力が暴走し、辺り一面を削り取って行く。


「あのバカ!」

「ぐははっ、これが最強の力か、まだまだ楽しめそうだな、クソガキ!!」

「俺のせいで、お前という存在を作り出してしまった。……なら、終わらせるのも俺の役割だよな。」


カチャッ。

刀をサイファーに向ける。


「さあて、第二ラウンドの開幕だ!まだ死んでくれるなよ、最強の戦士!」

「てめえは俺が解放する。俺の力、しっかり味わえ!」


ガギーンッ!

まだ彼らの決着はつかない。

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