第二十六章 英雄は過去に決着をつける
第百五十六話 因縁の戦い
ホープとホワイト隊はヴィーンゴルヴという館に入った。
そこには、大きな広間が。
とても綺麗な場所で、貴族たちが集まりそうなゴージャスな空間。
「ここが王国側の重要拠点なのか?ただのパーティ会場にしか見えないけどな。」
「表向きは、貴族たちが通う場所として使われてたとかなんじゃない?あたし達が来るの予想してて、空っぽになってるだけとか。」
「リサさんの意見に賛成です。これは、トラップがある可能性が高いです。」
ピキーンッ!
話していたヒメノの耳に何かが聞こえる。
「誰!?」
スタッ、スタッ、スタッ。
誰かが正面のドアから歩いてくる。
「さすがトップの人間だ、もう少し気付くのが遅かったらみんな食い殺してたぜ。」
「てめえ、サイファー!!」
スノウの怒号の先には、ノーアトューンで出会ったサイファーの姿が。
「待っていたぞ、スノウ。ようやく、ようやくお前を殺せる時が来た!!これほど嬉しいことはない!!」
「何言ってるんですか、兄さんだけじゃありませんよ。」
スタッ。
ホープとホワイト隊全員が戦闘体制に入る。
「おお、いいのか?こんなところで油うってて。急がないと、クリスタルが全部解放されるぞ?」
「クリスタル……ゴブリンやオークを解放する気なのね。けど、セラ達にそんなこと教えるメリットが分からない、嘘なんでしょ?」
「はははっ!嘘かどうかはお前達に任せる、けどな、俺はスノウとやり合いたくてたまんねえんだ!」
サイファーのドス黒い笑い声が、ヴィーンゴルヴに響き渡る。
「行ってくれ、みんな。」
「せ、先輩?そんな危険です!」
「危険なのは承知だ、けど、いくつあるか知らねえがクリスタルを全部解放されたら俺たちでもきつい。それに、こいつの狙いは俺だけだ、多分あいつの言ってることは本当だ。」
「わたしも賛成しかねます。スノウさんだけでは、あまりにもリスクが。」
クイッ、クイッ。
スノウがアヤセに手招きをする。
「この館を抜ける先で、合流できるところはあるか?」
「えーと、東側の出口からグラズヘイムに向かうので、そこが分かりやすいかと。」
「なら、そこで必ず落ち合う。頼む、あいつらを導いてくれ。」
「……分かりました、あなたを信じますよ、スノウさん。」
チャキンッ!
サイファーが大きな斧を構える。
「そろそろ終わったか?早くやり合おうぜ!」
「少しは落ち着けよ、サイファー。俺がしっかりと相手してやるからよ。」
カチャンッ。
スノウは刀を構え前に出る。
「おい、スノウーー。」
「皆さん、わたし達と一緒にクリスタルを壊しに行きましょう。」
「けど、お兄が!」
「スノウさんの強さは、皆さんが一番分かってるはずです。スノウさんが皆さんを信じてるんです、こちらも信じましょう。」
コクッ。
アヤセは力強い眼差しで頷く。
「……分かった。」
全員は武器をしまう。
「兄さん、早く来てくださいね。」
「ああ、そっちは任せる。こいつは、俺に任せろ。」
「行きますよ、皆さん!」
ダダダダダッ!
スノウとサイファーを残し、この広間から全員はクリスタルのある部屋へ向かう。
「はははっ!まさか、本当にタイマン張れるなんてな!俺にもようやく運が回ってきたってことか!」
「冗談はよせよ、運がなくなったから俺の前に出てきちまったんだろうが。」
「本当にそうかな?なら、試してみろよ。ホープのリーダー、スノウ・アクセプト!」
ズザッ!
サイファーが高速で近づく。
「てめえは、俺がぶっ潰す!サイファー!!」
ガギーンッ!
斧と刀がぶつかり合う。
「はははっ!やっとだ!待ちかねたぜ!!」
「俺は、全然待ってなかったよ!
ガギーンッ!ガギーンッ!
高速の四連突きを斧で華麗に裁く。
「遅いな、白狼はそんなもんじゃねえだろ!」
「安心しろ、まだまだこれからだ!」
ガゴーンッ!ガゴーンッ!
斧の大きな一振りは、辺りの地面や壁を削って行く。
「さすが、避けるのは上手いな!けどよ、逃げてばかりじゃ終わらねえぞ!」
「そんな早く終わらせていいのか?てめえは、これが楽しみだったんだろ!
ジャギーンッ!
重い一撃は、サイファーを押し返す。
「そうだ、これだぜこれ!これがやりたかったんだよ、そこら辺の雑魚じゃ味わえねえ、スリリングをな!!」
「どういう意味だ?」
「そのまんまよ!雑魚じゃ俺は物足りなかったってことだ!」
「てめえ、まさか!」
ガギーンッ!
ギリギリギリッ!
刀と斧が鍔迫り合う。
「なんだ、いきなり感情剥き出してよ!」
「お前は、今まで何人殺した!!」
「はあ?知るかよ。俺が楽しむためだ、何人かなんて数えてねえよ!」
「ふざけやがって!!」
ガギーンッ!バゴーンッ!
斧を受け止めた刀で弾き返し、足蹴りを頭に入れる。
「はっ!そうだ、そうやって俺を殺しに来い!スノウ・アクセプト!」
「サイファー、てめえは、許せねえ!!」
ガギーンッ!
二人の戦闘は激しくなる一方である。
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