第七十一話 名前を知り、クリスタルを知る
エルムトに置かれていた石には、トップが授かった戦神の名前が彫られていた。
スノウ・アクセプト……軍神 フェンリル・テュール
ヒメノ・ミコト……慈愛の神 グリンカンビ・フリッグ
リサ・ブレイズハート……激情の神 グラニ・オーズ
ユキナ・リンクス……寛容の神 ヨルムンガンド・ロヴン
セラリウム・アクセプト……宣誓の神 フェンリル・ヴァール
彼らの戦神には全てに意味があったのだ。
戦いに特化した神、思いやりが深い神など様々。
そして、この
「やった!!これであたし達も戦神の
「はい!これでまた元の自分に近づけた気がします!」
リサとヒメノが喜び合う。
「うーん……あの、先輩。ここに名前を彫ったのって、記憶をなくす前の私達ってことですよね?」
「そうだろうな、本人しか名前は分からないはずだし、筆跡が全部違う。……でも、奇妙だな。」
「はい、私も引っかかります。」
スノウとユキナは眉間にシワを寄せ難しい顔をする。
ドサッ!
セラがスノウに軽くのしかかる。
「何が何が?セラ達が記念に彫ったとかじゃないの?」
「おい、重いっての!まあ、楽観的に考えたいんだけどな。……多分、これを彫るように指示した奴がいるはずだ。こんな特殊な保管の仕方、10代半ばの俺らで考えつくとは思えない。」
「え、それって、まさか……。」
「ああ、これを彫らせた奴は、俺たちが記憶を消される可能性を既に予測してた。だから、わざと形に残る、そして消し去りにくいここに隠したんじゃないか?」
空気が重くなる。
彼らが思っている以上に、人間とオーディンの戦いは根が深いのかもしれない。
しかし、オーディンについて詳しい存在が人間側にいる。
それは、彼らの希望になり得る。
「さすがの推察力ですね、ホープの隊長、スノウ・アクセプト。それも、第六感でしょうか。」
「お前ーー。」
「スノトラ!まだ歩いちゃダメだ!」
ガシッ。
セドリックは傷を庇いながら歩くスノトラを支える。
「すみません、隊長。ですが、彼らに伝えなくてはいけないことが。」
「俺らに?」
フラフラとしながらも、スノトラはスノウ達の前に立つ。
バサッ!
「助けてくれて、本当にありがとう。」
スノトラは直角に体を曲げ、お礼を述べる。
「え!?そんな、セドリックさんのお仲間さんだったら助けて当然ーー。」
「いや、私の同志がビフレストでは無礼を働いた。」
「っ!それって……。」
ユキナのビフレストでの記憶が呼び起こされる。
村の人を傷つけようとして、ユキナが
ビフレストに訪れた、ゲイルとの激しい戦いを繰り広げた。
「わ、私は、あなたのことはーー。」
ヒメノの拳に力が入る。
「確かに、ビフレストのことは水には流せない。それはお互い様だろ。でも、お前はあいつとは違う。」
「だが、彼女は私の同志でーー。」
「はぁ、本当に、セドリックの部隊には堅物しかいないのか?」
ファサッ。
スノウはスノトラのお辞儀をやめさせる。
「お前は、お前だろ。スノトラであって、ゲイルじゃない。」
「っ!……隊長の言う通り、変わったお人だ。」
「変わった!?セドリック、俺にどんなイメージを持ってるんだ?」
「今のスノウをそのまま伝えただけだよ。」
少し場が静まりかえる。
「ぶはっ、あははは!」
セラが突然笑い出す。
「なんだよセラ、いきなり!」
「だって、当時敵だった人にまで変わった人呼ばわりされるなんて、セラのお兄はやっぱり変わった人なんだなって再実感しちゃったよ!」
「たしかに!ていうか、スノウが普通の人だなんて、あたし達も感じたことないけどね!」
リサもセラに続けて笑い出す。
「あはははっ!同感です!」
「先輩が普通だったら、この世界の人全員変人ですよ!」
さらには、ヒメノとユキナも笑い出す。
「お前らな!……はぁ。」
スノウはため息をつき、肩に残ってた力が抜ける。
「本当に、良いチームなんですね。」
スノトラは軽く微笑む。
「良いチーム?違うね、俺たちは最強のチーム、ホープだ!そこんところ、間違えんなよ!」
フサッ。
スノウはスノトラに手を伸ばす。
「ああ、了解した。頭に焼き付けたよ、スノウ・アクセプト。」
スノトラも手を伸ばし、握手を交わす。
(あぁ、暖かい手だ。これなら、セドリック隊長も安心できそうだ。)
二人は握手を終え、真っ直ぐ見つめ合う。
「アクセプト。一つ、私からのお願いがある。」
「お願い?なんだ?」
ガサガサッ。
スノトラはポケットから小さいものを取り出す。
「これは、この祠で隊長が倒してくれたオークエンペラーのクリスタルだ。」
その手には黒い小さいクリスタルが。
「初めて見る色だな。これがどうした?」
「これは、まだ私の調べてる段階ではあるのだが、心して聞いて欲しい。ゴブリンは倒されるとクリスタルになるのは知ってるな?」
「まあな、これまでも何体も倒してるし何種類かは見たことあるぜ。それがどうした?」
スノトラは唇を噛み締め、表情が険しくなる。
「この祠で暴れてたオークのクリスタルは、我らの国王様から渡されたものなんだ。そして、これからやつが現れた。」
「は!?」
衝撃の発言に、スノウは戸惑う。
ゴブリンやオークの正体が、分かりつつあった。
♦︎♦︎
ここは、どこかの暗い部屋の中。
薄気味悪い暗い部屋にろうそくが立てられ、何かを調合する音がする。
ピキンッ!
「よおし、これも完成だ。さーて、次はどこで実験と行こうか?」
真っ赤なローブを着た者は、その手に奇妙に輝くクリスタルを持つ。
いったい、何を意味するのか。
第十一章 完
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第十一章まで読んで頂きありがとうございました。
ホープは
次章は、この世界についてさらに知れるかも!?
スノウ達の今後を気になってくれる方!
ゴブリンとは!? そろそろ派手な戦いなのでは!?
ホープの六人を応援してるぞ!
と思ってくださいましたら、
ぜひ、レビューや★評価とフォローをお願いします!
ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!
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