第七十九話 不安、過去の鍵
チュンッ、チュンッ、チュン。
今日も晴れ渡り、小鳥が囀る。
「すーっ。すーっ。」
スノウはゆっくりと眠っていた、昨日の疲れだろう。
反動は、体に残ってしまうようだ。
コンッコンッコンッ。
「先輩?起きてますか?」
「……。」
ユキナの声はスノウに届いていない。
「すみませんが、開けますよ。」
ギィーッ。
ゆっくりとドアが開かれる。
静かに眠りにつくスノウの姿が目に入る。
「寝坊ですよっ……て言いたいですが、疲れてるに決まってますよね。」
スタッ、スタッ、スタッ。
パタッ。
ベッドに近付き、腰をかける。
「セラさんもまだ起きてないですし、本当はかなり辛いんじゃないんですか?」
スノウの顔を見つめながら呟く。
「私も、お二人のようにさらに強くなりたい。役立たずの私とはお別れしたいんです。」
ユキナの眉間にシワがより、過去のことを思い出す。
目の前で守れなかった友達。
最後に
そんな自分を哀れに感じる。
「私は、皆さんの役に、立てているのでしょうかーー。」
「当たり前だろ。」
「ひっ!」
バサッ!
スノウは突然起き上がり、ユキナと向かい合う。
「せ、先輩、起きてたんですか!?」
「こんな近くに人がいられたら、第六感で感じ取って起きるっての。それより、さっきの話だ。」
「え、あ、はい。」
ガシッ!
ユキナの手をしっかりと握る。
「え、な、なにを。」
「この手は、今まで何人もの人を助けた。それはもちろん、俺たちも助けられてるんだ。だから、自信を持て。」
「先輩……。」
ユキナを自信つけるかのように、陽が差し込む。
「強いやつが崩れるのは簡単だ、自分にプレッシャーを与えすぎて心が耐えられなくなっちまう。だから、ユキナを強いと信じる俺を信じてくれ。俺が証明じゃ不安か?」
「……。」
スノウはとても優しい顔で語りかける。
「いえ、ありがとうございます。とても強い証人が出来ました、少し楽になれた気がします。」
「一応リーダーだからな、それっぽい事はあんま出来ねえけど、俺もみんなを頼る。だから、しっかり俺を頼れ。いいな?」
「はい、ホープのリーダー。スノウ先輩。」
スタッ、スタッ、スタッ。
「ふぁぁ。お兄、多分寝坊してるだろうから起こしに来たよーー。」
「っ!?」
寝ぼけてセラが部屋に入ってきたことに、二人は驚きを隠せない。
「セ、セラさん!」
「へっ?……あっ!お邪魔しちゃったかな!?」
「いや、勘違いするな!これはただ、ユキナが不安そうだったからーー。」
バフッ!
近くにあった枕がスノウにクリーンヒット。
「な、何言ってるんですか!早くご飯に行きますよ!」
「いや、事実を言っただけーー。」
「うるさいですよ!バーカ!」
ダッダッダッ!
ユキナは足早に部屋を出る。
「おっとっと。あはは、やっぱりお兄は女心を理解できてないね。」
「うるせえよ。はぁー。まあ、俺たちの力のことを知る方が簡単そうだ。」
ゴソッ、ゴソッ。
スノウもベットから起き上がる。
「セラも食堂行くから、お兄も早くおいでね。」
「分かったよ。先行っててくれ。」
スタッ、スタッ、スタッ。
セラも食堂へ向かう。
「うーんっ。はぁ、本当に分からん。」
スノウは伸びをして、女心の難しさを痛感した。
その後、準備を整えたホープはブレイザブリクを出発した。
ここからビフレストまでは、徒歩三時間ほど。
スタッ、スタッ、スタッ。
ホープは途中の道である情報について確認をしていた。。
「え、近くにそんな村があるんですか?」
「ああ、かなり古い村だが、バッリと言って前国王の、アトリ様がよく通ってた村があるんだ。」
「セドくんは物知りだね。たしか、アトリ様は病気で亡くなった人だよね?オーディンが来るまで、このギムレーを治めてた。」
セラは腕を組みながら思い出す。
「まあ、世間にはそう伝えられているね。」
「なんか引っかかる言い方だな、セドリックも違うと考えてるのか?」
「僕も?て事は、君たちも何か感じているってことかい?」
セドリックは立ち止まる。
「まあな、俺たちも一度ビフレストで話してたんだ。オーディンが国王になるまでは、この世界がどういう風にまとめられてたのかって。」
「なるほど、であればすこしバッリによって調べてみないか?アトリ様のことも分かれば、何かオーディン様につながるヒントもあるかもしれない。」
「それもそうだな、よし、行ってみるか。」
ホープはバッリに進路を変え、歩を進める。
果たして、そこで彼らを待つものとは。
♦︎♦︎
「ぐほっ、ぐほっ。」
ヴァルハラにて、オーディンは少し苦しそうにしていた。
そう、ロキが四肢を斬られたことによりその反動がオーディンに直接届いたからだ。
「ロキちゃん、なになに?油断しちゃったの!?そんなボロボロで!」
「油断はしとらん、じゃが……。」
イズンがロキを責める。
「やめて差し上げて、イズンさん。私が、次は向かいます。もちろん、沢山のものを使って。」
「おおっ!フレイ姉さんが行くなら余裕かな!!楽しんでね!」
「戦闘は、好きではないのだけど……。」
スタッ、スタッ、スタッ。
新たな刺客が、ホープに送られようとしていた。
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