第十三章 英雄は真実に近付く
第七十八話 力の正体、闇を知る
ブレイザブリクでの戦闘は、終わりを迎えた。
辺りに、戦闘の傷跡は生々しく残っている。
家々の破損、地面や木々の傷、地面の凹凸。
つい先日被害にあったばかり、
町の人々も疲れ切っていた。
その中で、ホープはデュポンを倒すことに成功した。
しかし、全てが成功したわけではない。
町の人や、兵士の死亡。
デュポンの変わり果てた真相などは分からないまま。
メギンギョルズに見限られたデュポンの死体は、ブレイザブリクの近くに埋められ、墓が建てられた。
その前で、セドリックは長い時間手を合わせていた。
(デュポン前隊長、あなたは、僕の目標だった。なぜ、変わってしまわれたのですか、何があなたを……。)
ズサッ。
スタッ、スタッ、スタッ。
セドリックは宿に戻った。
そして、ホープの六人は宿屋の広間に集まっていた。
スノウが自分とセラが使った力について説明し始める。
「まず話せる事は、俺とセラが発動した
体への負担は減るが、その分戦神との連携がうまく取れなければ、お互いがぶつかり合い力を引き出せない。
「俺が感じたのはこれくらいだな、セラはどうだ?」
「セラもお兄と同じ感じ。片方に任せるんじゃなくて、ヴァールと一緒に戦ったってのが一番の感覚かな。」
ヒメノ、リサ、ユキナは考え込む。
「その力は私達も使えるはずですよね?でも、まだ使えないって事は……。」
「ヒメノ達はトリガーとなる感情にまだはまってないのかもな。」
「感情?スノウ達のトリガーって何なの?」
リサは小首を傾げる。
「俺の場合は、憎しみだろうな。」
「え!?そんな怖い感情なの!?」
バンッ!
驚きのあまり、リサはテーブルを叩き立ち上がる。
「多分な、城で俺が力に目覚めた時のゴブリンへの感情、セクヴァベックでのロキに対しての感情、さっきのデュポンへの感情……そして、何より過去の俺が一番大きく抱いた感情が、憎しみだ。」
シーンッ。
その場は凍りついたかのように静かになる。
「で、でも、セラさんは全く違う感情なのでは!?」
「そ、そうですよね、ヒメノちゃんの言う通り、セラさんのトリガーは何ですか?」
ユキナが問いかける。
コクッ。
セラは俯き、静かに答え始める。
「セラはね、妬みだよ。」
「妬み??セラくんは、デュポン前隊長に何を妬んだんだい?」
「メギンギョルズだよ。たった一瞬で、大きな力を得られる、たとえどんな形であっても。セラは、何度も辞めたいと思った修行の先に、力を手に入れたのにって。あと、お兄にもね。」
ビクッ!
咄嗟に名前を出され、スノウは驚く。
「俺に妬み?なんでーー。」
「セラ達の過去のこと、また言わせるつもり?お兄が、セラにしたことに対してだよ。」
そう、スノウは良かれと思いセラには隠し続けていた。
自分が受けた仕打ちも、両親が受けた苦しみも。
それが、当時力の無かったセラには仲間はずれにされたという、妬みに変わったのだ。
スノウは俯く。
「そうだよな、悪い、セラ。」
「謝って欲しいんじゃないの!この前約束したでしょ!」
ズンッ! グイッ!
セラはスノウに迫り、顔を上げる。
「セラはもうお兄と離れるつもりはない、その為に強くなった!この先、お兄を妬むつもりはない。お兄はたった一人の大切な存在で、背中を任せられる仲間。それが、セラの意思。」
「……ああ、ありがとう。絶対に離さないさ、この先何があっても。」
スーッ。
セラはスノウから離れ、席にもどる。
「兄さんも、少しずつ成長してるんですね。」
「当たり前だ、俺は仲間を悲しませたいわけじゃない。」
「ふっ、あははっ!スノウらしくないセリフ!」
リサが笑い始める。
「たしかに!でも嬉しいですね!」
「先輩、リーダーらしくなってきましたね!」
ヒメノとユキナも連られて笑う。
「うるせえよ!」
「まあまあ、いいチームになれてる証拠だよ。誇りに思いなよ、スノウ。」
「はぁー、分かったよ。」
セドリックになだめられ、場が落ち着く。
「でもさ、あたし達三人のトリガーがなんなのかも知っておきたいね。」
「まあ、そうなんだけどな、焦りは禁物だ。」
「何で?」
リサの問いにスノウは胸に手を当て静かに話す。
「
「自分じゃなくなる……。」
「まあ、セラもお兄も正確な答えは知らない。知るためにも、一旦ビフレストに行くべきだと思うんだよね。」
ビフレストには、謁見の間があるので、直接戦神と話すことができる。
「それがいいと思うよ、僕ももう一度訪れたいんだ。」
「セドリックさんも何か用があるんですか?」
「うん、ビフレストは、デュポン前隊長と初めて一緒に向かった任務の地なんだ。」
ギリッ。
セドリックは拳を強く握る。
「デュポンのこと、知りたいんだよな。いいぜ、次はビフレストに行こう。」
ズザッ。
ホープは会議を終え、今日はゆっくりしようと各部屋に入った。
そして、次の日を迎えた。
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