第百九十一話 虎と魔神

ガギーンッ!

ガゴーンッ!

トールが放つ雷魔法を、リサは長剣で弾きながら突き進む。


「ふんっ、以前にも増して力を得たか、虎の女よ!」

「その言い方は、女の子に嫌われるよ! 虎派三式コハサンシキ! 虎走コバシリ!」


ズザザッ!

ガギーンッ!

スピードに乗った一撃がトールに傷をつける。


「うぐっ、人間が神に楯突こうなどと! 王位魔法オウイマホウ! 光槍ホーリーランス!」


ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!

光で作られた槍が降り注ぐ。


「魔法使いとはあたしは相性悪いかも!」


シュンッ!シュンッ!

ズザーッ!

リサは走りながら槍を避ける。


「すばしっこい虎が!」

「虎は狩りをするために頭も良くて体も軽いんだよ! 虎派四式コハヨンシキ! 虎転一刀コテンイットウ!」


ジャギーンッ!ジャギーンッ!

長剣で受け流しながらトールに迫る。


「ほらほら、雷様遅いんじゃない!」

「舐めるな若造が! 魔神初式マジンショシキ! 雷光弾サンダーボルト!」


ピカーンッ!

ドゴーンッ!

光を生み出すとともに、雷のように降り注ぐ。


「くっ、ここは一気に!」


スッ!スッ!

ズザーッ!

リサは雷を避けつつ、一気に近づく。


「敵を焼き斬れ! 猛獣ビースト! 虎派十式コハジュウシキ! 爪龍虎鳥斬ソウリュウコチョウザン!」


ボァァ!!

ジャギンッ!ジャギンッ!

炎を纏った連続斬りがトールを襲い、右手から血を流す。


「ぐっ、やられるだけてはないわ! 魔神中式マジンチュウシキ! 雷槌砲トールハンマー!」

「うぐっ!」


ドーンッ!

ズザーッ!

リサは雷で作られたハンマーの衝撃で吹き飛ばされる。


「やはりホープは危険なようだ、なんとしてともここで倒さなくては!」

「やられるわけにはいかなんだよ!あたし達は!」


バギーンッ!バギーンッ!

長剣と片手サイズのハンマーがぶつかり合う。


「オーディン様の邪魔をするやつらが、なぜそんなことをする!」

「そんなの一つに決まってるでしょ!この世界はあたし達人間が作り上げた世界!あたし達が未来を作らなくてはいけないの!」

「その鎖につながれているから、世界は壊れてしまったのだろう、貴様らが選択を間違えたから!」

「人間しか間違えないとでも?あんた達神でさえも間違いを犯してるじゃない!」


ガギーンッ!

二人の激しい攻防が繰り広げられる。


「我らが間違いを犯すことがあるとでも?今も尚お前達の世界を救うために手を貸してやってるだろう!」

「何を言ってるの!あんた達は人間を助けるために、


ガゴーンッ!

リサの力にトールは力負けする。


「必要な犠牲ってやつよ。危険因子を私たちが取り除き、そしてさらに良い世界を作るのだ!我ら神の手によって!」

「そんなこと、誰が望んだの!誰かの命を奪う権利なんて誰にもないんだよ!それは、あんた達の基準で考えた一つの正義でしかない!」

「それの何が悪い!我らの正義の先に道をつくり、常に明るい未来を照らしている。そうすることで皆は喜び、世界も喜ぶ!それの何が悪いのだ!」


ガゴーンッ!

ズザーッ!

二人は距離を取る。


「確かに、あんた達はこれまで世界を救ってきたのかもしれない、けど!必要な犠牲だからといって、目の前で助けを求めてる人を見捨てることなんてあたしにはできない!」

「それが貴様らの弱さだ!弱いからこそ、決断ができない、未来のためになると分かっていても、そこで判断を誤る! 魔神上式マジンジョウシキ! 終焉の雷撃ライトニングエンド!」


ドゴーンッ!

空から豪雷が降り注ぐ。


「くっ! 吹き飛ばせ! 炎鳥フレアバード! 虎派終式コハシュウシキ! 鳳凰天衝ホウオウテンショウ!」


ボォォォ!!!

バゴーンッ!

炎を纏った斬り上げが、雷を打ち消す。


「貴様らホープのような強者だけがこの世界にいるのではない、お前達は稀有な存在なのを自覚せよ!」

「あたし達が強者?ふざけたことを言うのね、あたし達もみんなと変わらない一人の人間、あんたの言う弱者よ!」

「戯言を!お前達は力を持っている、我らと同等に戦える力を!」

「人間の力はそれだけじゃない!あたし達の真の力は、なんだよ!人間も神も、一人では何もできない!」


チャキンッ!

ズザッ。

二人は相対して武器を構える。


「そうか、ならその信じ合える力というものを我にも見せてもらおうか!」


ピカーンッ!

トールの手には強化結晶バーニアクリスタル


「何をするつもり?」

「すぐに分かる、貴様も注意するのだな!」


パリンッ!

ゴォォ!!!!!

トールの体を黄色い煙が覆い、辺りに雷を飛ばす。


(リサよ、ワシに代わってくれるか?)

(グラニ、珍しいね、トールと話したいことでも?)

(うむ、すこしだけ時間を欲しい。)

(了解!あたしの体、大事に使ってね!相棒!)



ヒューンッ!!

ボォォ!!

リサの周りにも赤いオーラが現れる。


共鳴突破クロスドライブ! 開始オン! 激情の神赤虎グラニ・オーズ! あたしと戦え!」


バゴーンッ!

リサは共鳴突破クロスドライブを発動。


それと同時に、トールも黄色い大きな体に二つのハンマー。

大きな尻尾も生え、化け物の姿になった。


「おうおう、ずいぶんカッコよくなったではないか、トール。」

「お主は、グラニか?いいだろう、お前達の判断が間違ってたことをここで証明してやろう!」

「できるかね?ワシとリサの力の前に!」


シュンッ!

ガギーンッ!

ハンマーと長剣が再び火花を散らす。


二人の戦いはまだ続く。

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