最強の俺たちが国王に記憶を消されたので、どんな手を使ってでも成り上がってやる件

第百九十話 武神とは

「はははははっ！！いいぜ、いいぜ！どんどん力が湧いてくる！」

「なんて早さ、それにパワー、桁違いなのは分かるーー。」

「うぉら！！」

バギーンッ！バギーンッ！

二人の攻撃は激しくぶつかり合う。

「ほらほらほら！！避けてるだけじゃ勝てねえぞ！」

「あなたも、そんなに力を使い続けてたらスタミナ切れするのでは！」

「そんなもの、俺にはねえよ！」

ガゴーンッ！

ズザーッ！

ヒメノは拳を弾くが、少し吹き飛ばされる。

「はぁ、はぁ、このままじゃ私も危険ですね。」

「ふははははっ！いくぜいくぜ！」

シュンッ！

フレイヤが勢いよく迫る。

(ヒメノ、私にやらせて。)

(グリンカンビ、何か分かるのですか？)

(ええ、少しフレイヤと話をしたいの。)

(分かりました、お願いしますね！)

「共鳴突破（クロスドライブ）！　開始（オン）！　慈愛の神紫鷹（グリンカンビ・フリッグ）！　私と飛んで！」

バゴーンッ！

ヒメノは共鳴突破（クロスドライブ）を発動する。

「はっ！やっときたか、お前の中の神様よ！！」

「フレイヤ、あなた達のしたことが分かってるのですか！　鷹派一式改（オウハイッシキカイ）！　三日月月光（ミカヅキゲッコウ）！」

ガゴーンッ！

高速なサマーソルトがフレイヤを襲う。

「そうだよな、てめえだよな！グリンカンビ！」

「覚えてましたか、なら話は早い！もうこんなことはやめなさい！これ以上人の世界を壊さないで！」

ガギーンッ！ガギーンッ！

二人の戦いはさらに激化する。

「はっ！この世界はもう手遅れなのさ！少しでも早くオーディン様の手でより良い世界にされるべきなんだ！」

「それは私たち神のエゴです！ギムレーは人が作り上げてきた世界、それを余所者の私たちが奪って都合のいいように作り変えてはいけない！」

「知ったことか！俺たちが元の世界でやられてきたように、これが生きることに対する定めなんだ！」

バゴーンッ！

二人は距離を取る。

(グリンカンビ、どういうことですか？あなた達がいた世界でいったい何が？)

(それは……時が来たら話すわ。もう少しだけ、私に付き合って。)

(分かりました、何か理由があるんですよね。)

ズザッ！

フレイヤが迫ってくる。

「この世界を俺たちのものにする、そうすれば散って行ったあいつらに顔向けできるってもんだ！」

「ですが、ギムレーの人たちにはなんの罪もない！私たちが征服するんじゃない、手を取り合って助け合う世界だって作れるはずです！」

「そんな甘いことを言ってるから、あんなことが起きるんだろうが！　ぶっ飛べ！　地獄の火炎（ヘルフレイム）！」

ボォォ！

拳の形をした炎がヒメノに迫る。

「なんで、わかり合おうとしないの！　焔槍（バーンランス）！　翠廻槍（サイクロンランス）！　同時展開！　紫鷹上式（シオウジョウシキ）！　火炎烈風脚（カエンレップウキャク）！」

バヒューンッ！

ボォォォ！！！

火炎の竜巻と、豪風の竜巻が炎を迎え撃つ。

ガガガガガッ！

二つの技は一歩も譲らない。

「まだ終わらねえぞ！」

シュンッ！

ガゴーンッ！

攻撃を切り裂いて、フレイヤの拳でヒメノが殴り飛ばされる。

「うぐっ！」

「ギアマックスでいくぜ！」

ガギーンッ！ガギーンッ！

速さと力の応酬に、ヒメノは防戦にまわる。

「はははははっ！そんなもんかよ、グリンカンビ！」

「くっ！」

シュッ！シュッ！

ポトッ。

ヒメノの皮膚に切り傷がはいり、血が流れ出す。

(ヒメノ、私にこの技を使うことを許してくれる？)

(まだ一回も使ったことのない、私たちの最後の技ですね。はい、もちろんです！)

(ありがとう、私の相棒。ここで終わらせます。)

ガゴーンッ！

ズザーッ！

ヒメノは衝撃をなんとか防ぎつつ、距離を取る。

「そろそろ終わりにするか！グリンカンビ！」

「そうですね、終わりにしましょう！あなたと話しても、埒があきません！」

ヒューンッ！！

バゴーンッ！

ヒメノの周りに風が巻き起こる。

「すごい力だな、なら俺も応えないとな！うぉぉ！！」

フレイヤも力を最大限に貯める。

フレイヤの前には大きな炎の渦巻きが。

「吹き飛びな！　地獄の業火炎（ヘルギガフレイム）！」

バゴーンッ！

二つの拳の形をした巨大な炎が迫る。

「いくわよ、ヒメノ！　焔槍（バーンランス）！　翠廻槍（サイクロンランス）！　最大展開！　紫鷹流派最終奥義（シオウリュウハサイシュウオウギ）！　流星群（スターダスト）！」

バヒューンッ！バヒューンッ！バヒューンッ！

ボォォ！ボォォ！ボォォ！

片足には風を、もう片方には炎を纏う。

そして、交互に振り抜きながら風の弾丸と炎の弾丸がまるで流れ星のように降り注ぐ。

「うぉぉぉ！！死んじまいな！！」

「私たちは、人と生きる道を選ぶ！はぁぁぁ！！」

ガゴーンッ！

二人の攻撃は真ん中でぶつかり合う。

「まだ、まだ！！」

「はぁぁぁぁ！！終わりにしますよ、フレイヤ！」

徐々にフレイヤが力負けをする。

「なぜだ、俺が力負けをするだと？本当の姿に戻ったのに、なんで！！」

「あなた達は個の力しか知らない。助け合う力を、その身で感じなさい！はぁぁぁ！！」

「み、認めない、俺は、俺たちはーー。」

ガゴーンッ！

フレイヤに風と炎の弾丸が直撃する。

「ぐはっ、げほっ。くそっ、くそっ！あいつらのためにも、俺は、俺はーー。」

シュイーンッ！

フレイヤの体が光の粒子になり、空高く消え去っていく。

赤い空間は、静けさを取り戻す。

「はぁ、はぁ。ありがとう、ヒメノ、あなたのおかげで勝てたわ。」

シューンッ。

「共鳴突破（クロスドライブ）、停止（オフ）。」

ヒメノは元の姿に戻る。

ピカーンッ！

白い扉が突如生まれる。

「フレイヤ、あなたに何があったのか私には分からない。けど、何かを背負ってたのはよく分かりました。……少しでも、安らかに休めることを願います。」

スタッ、スタッ、スタッ。

ガチャンッ。

ヒメノは白いドアを開ける。

ヒメノvsフレイヤ。

ヒメノの勝利。