第百八十九話 鷹と武神

「くらえや!! 武神初式ブシンショシキ! 破顔ハガン!」

「はぁぁ!! 鷹派一式オウハイッシキ! 三日月ミカヅキ!」


グルンッ!

バギーンッ!

フレイヤの拳とヒメノのサマーソルトがぶつかり合う。


力の強さが特徴の神と軽やかさが特徴のヒメノは、凄まじい風圧を巻き起こす。


「いいな!やっぱり最高だ、これが殺し合いだよな、お前もそう思うだろ、鷹の女!」

「全く思わないですよ、私は!」


ガゴーンッ!

火花を散らし、二人は距離を取る。


「本当にそうか?お前も力を持つもの、その力を自分のために使わなくて勿体無いとは思わないか!!」

「あなたと一緒にしないで!私は、みんなと生きるためにこの力を使うんです!」


ズザッ!

地面を蹴り、スピードを上げる。


火槍ファイアランス! 展開! 鷹派十式オウハジュウシキ! 紅月コウゲツ!」

「ふん! 武神中式ブシンチュウシキ! 閃光撃センコウゲキ!」


ブォォ!!

ガギーンッ!

炎で纏われたかかと落としと、光を超える勢いのフレイヤの正拳突きがぶつかり爆風を起こす。


「なるほどな、お前強くなってるな、あの村で会った時より!」

「当たり前です!あなたなんかに負けてる暇はないので!」

「何がだ、何がそんなにお前を強くする!」

「そんなの、私には一つしかありません。」


ガゴーンッ!

足技と拳がぶつかり合う。


「私は、。だから、私は守るためにこの力を使います!」

「はっ!他人のために力を使うだ?綺麗事がすぎるんじゃねえか!鷹の女!」

「綺麗事だと感じるなら、そう思っててください!私は、その綺麗事を成し遂げて見せます!」


ガゴーンッ!バギーンッ!ガゴーンッ!

拳と脚が派手にぶつかり合う。


辺りにはその早さを体現するかの如く、傷や擦れた痕跡が。


「俺には信じられねえな、他人のために力をつかうだと?自分を犠牲にしてまで?偽善者が!! 武神上式ブシンジョウシキ! 爆砕重落下バクサイジュウラッカ!」


ズザッ!

ヒューンッ!!

空高く飛び上がったフレイヤは、右の拳に大きな炎を纏いヒメノに向かって突撃する。


「あなたは、火の魔法使いなんですね、なら! 風槍ウインドランス! 展開! 鷹派八式オウハハチシキ! 竜巻タツマキ!」


ブォォ!!

竜巻がフレイヤを襲う。


「はっ!風で俺の炎が消せるとでも?」

「その逆です、あなたはかなりの自信家、なら炎の力にもかなり自信があるのでは?」


ボォォ!!

炎が竜巻に移り、炎の竜巻が生まれる。


「うぁぁ!!まさか、てめえ!」


ガゴーンッ!

拳から放たれた風圧で竜巻をかき消す。


「そうですよ、自分の炎で燃えてもらおうと思いまして。まあ、こんがりまではいかなかったみたいですが!」


シュンッ!

ヒメノは高速でフレイヤに迫る。


「舐めたことを! 武神初式ブシンショシキ! 破顔ハガン!」

「私についてこれますか! 鷹派九式オウハキュウシキ! 烈風多連脚レップウタレンキャク!」


ブンッ!

ザッ!ザッ!ザッ!

拳を華麗に避け、足蹴りの連撃が襲う。


「くっ、この程度ーー。」


ピカーンッ!

フレイヤは真上に何か光を感じとる。


「そうですか、ならこれでどうです! 火槍ファイアランス! 風槍ウインドランス! 同時展開! 鷹派終式オウハシュウシキ! アカツキ!」


ブォォ!!

ボワァァ!!

風と炎を片足ずつ纏い、フレイヤ目掛け落下する。


「お前のような俺より貧弱なやつに、遅れをとると思うな!」

「人を見た目で判断すると、痛い目を見ますよ!」


ガゴーンッ!

フレイヤはなんとか炎の蹴りを受け止める。


「ほらな、この通りさーー。」

「あなたは、!」


バゴーンッ!

風を纏った蹴りがフレイヤを吹き飛ばす。


「がはっ!」


グルルルルンッ!

フレイヤは転がりつつ体から血を流す。


「この程度、俺には効かねえ!」

「強がりを、体が悲鳴をあげてますよ。」


スタッ。

ヒメノは地面に着地する。





「はははははっ!!」


急にフレイヤは笑い始める。



「何がおかしいんです?」

「いいや、やっぱり戦いってのはいいな!この痛み、この昂り、この憎悪!てめえを殺す準備はできた、感謝するぜ!鷹の女!」


ピカーンッ!

フレイヤの手には赤く光る宝石のようなものが。


王国で行われた会議の時に五神に配られた、強化結晶バーニアクリスタルである。


「何をする気ですか、その禍々しいもので!」

「お前にも分かるんだな、この力の素晴らしさが!なら分かち合おうぜ、殺し合いの楽しさってのをよ!!」



ピキーンッ!

ヒメノにグリンカンビが話しかける。


(あれはダメ!ヒメノ!なんとしてでも止めないと!)

(え!?わ、分かりました!)


ズザッ!

ヒメノはフレイヤに高速で接近する。


「だめ!それは!!」

「もう遅いぜ、使うなら今だ!」


ピカーンッ!

強化結晶バーニアクリスタルが眩い光を放ち、フレイヤを赤い炎が覆いつくす。


「間に合わなかった、いったい何がーー。」


シュンッ!

炎の中から目にも止まらぬ早さの火の玉が射出される。


「なに!?」


ズザーッ!

瞬時に横に飛びなんとか避ける。


「あんな技さっきまで使ってこなかった、まさかあの結晶ってーー。」

「そうだ、これが、俺たち神の本当の姿だ!!」


バゴーンッ!

炎が消し飛び、中から全身赤色で筋肉ゴリゴリの鬼のような姿の物体が。


「あなた、フレイヤなの?」

「当たり前だ、これが本来の姿なのさ!さあ、もっと俺を楽しませてくれよ、鷹の女!!」


シュンッ!

今までとは比べ物にならないスピードで迫る。


(気を付けてヒメノ、あれは危険すぎる。)

(分かってます、私たちも行きますよ!)


ガギーンッ!

拳と脚がぶつかり合う。


第二ラウンドのスタートである。

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