第十九章 英雄は不思議に出会う

第百十七話 旅路と不安

フォールクヴァングで戦闘が発生してから、一日が経過した。


バルドルの戦争宣言が発令されたことで、ギムレーの各町や村は慌てていた。



次は自分の住んでいる地が狙われるのではないか気が気でないからだ。



そして、ホープ達はフォールクヴァングでこれからのことについて話し合っていた。



「バルドルは、いつ動き出すかな?」


ムシャ、ムシャ。

セラはケーキを頬張る。


セドリックから奢ってもらったケーキである。


「そうだね、彼のことはあまり知らないが、かなり用意周到な神ではある。すぐに動くとはあまり思えないかな。」

「だとしたら、今の段階で俺たちも最善の準備をしなくちゃだな。とりわけ、これか?」


ガチャンッ。

スノウは自分の刀を取り出す。


ノーアトューンで、エインズ・ホワイトホースに作ってもらった武器である。


ただ、最上級の武器ではない。


彼らホープには、それぞれの力を最大限発揮できる素材がある。






とても希少価値の高い鉱石であるとともに、持ち主によって色を変えると言われている代物。



彼らがヘルクリスマスの時に持っていた武器になる。



「たしかに、今のあたし達なら新しい武器も使いこなせるかも!」

「そうですね!リサさんの言うとおり、私たちも成長してきました。兄さんはどう思いますか?」

「ああ、かなり元の俺たちに戻れてると思う。そろそろ、エインズに新しい武器作ってもらってもいいかもな。」



次の目標が決まった。


ノーアトューンへ向かい、自分達の武器の強化だ。



「スノトラはどうする?俺たちとくるか?」

「嬉しいお誘いですが、私は緊急事態が起きた時にすぐ伝えられるように王国の動向を探っておきます。」

「すまない、スノトラ隊員。」

「何を言うんですか、私は私のやりたいことをしてるだけです。皆さんのお役に立ちたいだけですので、お気になさらず。」


スサッ。

スノトラはお辞儀をする。


「ハルカさんは、私たちが全力でお守りするよ。アトレウスさん達にも護衛をお願いしたし、安心して行って来てくれ。」

「ありがとうございます、ハンクさん。何度も私たちを助けてくれて。」

「当たり前だろ!ユキナくん!君たちは、私たちのなんだから。」


タッ、タッ、タッ。

ホープの六人はフォールクヴァングの正門に集まる。



「じゃあ、行ってくる!」

「ああ、気をつけてな!君らの進む道に、光があらんことを。」


ハンクはホープを送り出す。



再び、六人になったホープの旅が始まった。



「そういや、俺たちが初めてノーアトューンに向かった時も、フォールクヴァングからだったな。」

「そういえばそうですね!なんか、運命みたいなものを感じます!」

「ヒメチン、ロマンチックなこと言うね!なんかさらに楽しみになって来ちゃった!」


いつものホープの風景。


彼らの賑やかさは、周りの植物すら笑顔にしそうである。


そして恒例の、休憩タイム。



ヒメノが手際よくお茶を淹れ、フォールクヴァングのギルド娘、ミナからもらったお菓子を開ける。


「なんだろうこれ?とてもいい香り!あたし好きかも!」

「ミナさんのお話だと、甘い芋を食べやすいサイズに切って、砂糖と水でいい感じに焼いて、この黒いゴマってものを振りかけるのがポイントって言ってました!特に名前はないらしいです。」

「せっかくだ、早く食べようぜ。」


パリッ、サクッ。


芋のお菓子は、外はカリカリで甘く、中は芋の柔らかさと滑らかさで食べやすく、小腹が空いた時やおやつにぴったり。


そこに、ヒメノが淹れた少し苦味が強いお茶がとてもマッチする。


「ミナちゃんすごいね!とても美味しい!これセラも作ってみたい!」

「セラに料理ができるのか?」

「お兄よりは出来るよ!先生が家にいない時は、自分で作ってたんだから!……まあ、失敗もしたけど。」

「失敗しないと料理は上手くなれませんよ!失敗を恐れて、やらないで想像だけしてるより、ですから!」


六人は束の間の休息を過ごす。


その笑顔は、彼らがこの世界を救おうとしている最強の戦士であることを忘れさせるほどにまぶしい。



「そういえば、スノウ達は自分の先生には会えたのかい?」

「いや、情報はバッリに行ったときに得られたけど、そこからはまだ何も。」

「僕の予測なんだが、案外近くにいたりしないのかい?王国でもみんなの先生達はかなりの脅威になるはず、何かしら手を打ってるとは思うけど、王国にとっての良い知らせは聞いたことない。」

「近くにか、いるんだとしたらしっかり話したいな。」



スノウはヴァルハラでクレイトスに助けられた時のことを思い出す。


スノウの記憶では、最初で最後の出会いとなってしまっていた。



休憩を終え、ノーアトューンに向けて歩き始める。



しかし、事件とは突如起きるものである。



ドゴーンッ!ドゴーンッ!

何かが爆発したような大きな音が、順路ではない方角から聞こえる。


「なんだ!?爆発?」

「いえ、この音は……足音?生き物の動いてる音な気がします。」

「ここまで響く大きさなんて、相当の大物ですよね、先輩?」

「ああ、行って確かめよう。俺らの出番かもしれねえ!」


ダダダダダッ!

ホープは物音の方角は走る。



彼らが向かった先には……。

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