第百十八話 危険な予兆
「総引退避!!退避!!」
ダダダダダッ!
兵士が町の方へ撤退していく。
「グォォ!!」
「キシャァァ!!」
全身に黒い装備をつけたモンスター二体が暴れている。
ドゴーンッ!バゴーンッ!
辺りの岩や、壁、地面など複数箇所を破壊していく。
「くそ!我々では止められん、町まで引き上げるぞ!」
「隊長!このままではエーリュズニルにまで来てしまうかも知れません。どうにか対策をしなくては!」
「そんなことは分かっている!だが、我々の力ではびくともしてないのも確かだ。救援を要請するしかーー。」
ダダダダダッ!
先頭の二足歩行のモンスターが勢いよく走り出す。
「うわぁ!!」
「なんでいきなりこっちに!」
ズザーッ!
逃げ惑う兵士たちはなんとか避ける。
モンスターは兵士に目もくれず、少し先に見える町、エーリュズニルに向かっていた。
「いかん!最初から狙いは町だと言うのか!?」
「そんなモンスター見たことありませんよ!」
「私も同じだ、ただ、この状況は受け入れねば!我々も早く戻るぞ!」
タッタッタッ。
兵士たちも走り出すが、二足歩行のモンスターの速さは予想以上に早く距離をどんどん離される。
「なんだあの速さ、あのゴツい体にこの俊敏さを兼ね揃えたモンスターは聞いたことがない。」
「隊長、このままでは!」
「くそっ、どうすればーー。」
ダダダダダッ!
二人の人間が目にも止まらぬ速さで駆け抜けていく。
「な、なんだ!?」
「あれは!もしかしたら!」
ガタッ、ガタッ。
「ギガァ?」
迫り来る何かに気付いたモンスターが振り向く。
「よお!少し遊んでくれよ!
「そこから先は、行き止まりだよ!
グルンッ、ジャギンッ!
スサッ!ザシュンッ!
スノウの回転斬りと、セラの空からの一撃はモンスターに直撃する。
「イギャァァ!」
ドスンッ!ドスンッ!
モンスターは足を止める。
ズザーッ!
スノウとセラはモンスターの前に立ち塞がる。
「ウギャア!」
黒い装備が所々壊れ、肌が露出する。
「なんだ、このモンスター?」
「異形種かな?まあ、町を壊そうとする悪い子は、お仕置きしないとね!」
ズサッ!
二人は挟み込むように接近する。
「ウゴァ!!」
モンスターの両手に闇の魔法が宿る。
「は!?モンスターが闇魔法!?」
「何かおかしいよこの子!気をつけてお兄!」
ボンッ!ボンッ!
闇魔法が火の玉のように投射される。
「ちっ!」
ドゴンッ!ドゴンッ!
闇の玉は岩を削り消える。
「紛れもなく、闇魔法だな。異形種とはいえ、こんなことあり得るのか?」
「分からないけど、なんか嫌な予感がする。まずは倒そう!」
二人が疑問に思う闇魔法について。
本来、光魔法と闇魔法は人間しか発現しないのだ。
自然から生まれるはずのない、魔法の要素。
不安が二人を包む。
「ウガァ!」
「いくぜ!
シュンッ!シュンッ!シュンッ!シュンッ!
スピードに乗った四撃を放つ。
ザサッ。
スピードに特化してるスノウの攻撃をそのモンスターは容易く避ける。
「んなっ!?」
「早いなんてレベルじゃない!お兄!」
ブンッ!
ガギーンッ!
モンスターの拳を刀で弾く。
「ちっ、こいつ、何かがおかしい。」
「お兄!離れて!
ビリリリリッ!
雷の斬撃がモンスターに迫る。
「ウガァ!」
バゴーンッ!
モンスターは拳を地面に叩きつけ、岩の壁を作り雷を弾く。
「ウガァァ!!」
モンスターの雄叫びが響き渡る。
「あの岩を作る戦い方……もしかして、ドライアド!?」
「そんなわけあるか!ドライアドって、50cmぐらいの植物科のモンスターだろ?どう見たって、サイズ感五倍はあるぞ!」
「腑に落ちないことは多いけど、セラ達の攻撃を容易く防ぐことも通常のモンスターには難しいことだよ。だとしたら……。」
「異形種じゃなくて、意図的に誰かに改造されたモンスター。そんなことが可能なのか?」
ドダドダドダッ!
モンスターは勢いよく迫る。
「まずはあいつを倒さないと!お兄、いくよ!」
「ああ!」
ダダダダダッ!
二人はモンスターを挟み込む。
「グォォ!」
闇の炎を撃ち出してくる。
「やっかいだな!
パリンッ!
氷の蝋燭を生み出し、炎をかき消す。
「
ガギーンッ!
セラの重い縦斬りを右手で受け止める。
「もらった!
ズサンッ!ズサンッ!
スノウの連続斬りがモンスターの足に傷をつける。
「ウギャァ!?」
ガタンッ!
バランスを崩したモンスターが膝をつく。
「いくよ!お兄!
「おう!
二人の回転斬りのタイミングが重なる。
「
ズシャン!
「ウギャァ!」
モンスターは怯み、空を見上げる。
その空には、一つの大きな鳥のようなものが映る。
「終わりです!
ジュワンッ!ザシュ!
炎を纏ったヒメノのかかと落としが顔面に直撃。
「ギャァ!」
シューンッ。
モンスターはその場から消える。
「ナイスタイミング!さすがヒメちゃん!」
「お二人のおかげです!でも、このモンスター。」
「ああ、違和感だらけだ。」
ガギーンッ!ガギーンッ!
スノウ達の後方では、リサ達がモンスターと対峙している。
このモンスターはいったい……。
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