第八十八話 この世界の理
「はははっ、いきなり大きく出たな。」
「別にいいだろ、いずれは知ることになるんだ。……そう言えば、お前達前よりはっきり見えるな。」
スノウは改めて戦神を見ると、初めて呼び出した時より鮮明に部分部分が見えることに気付く。
「そうだな、
フェンリル・テュールがまず、オーディンについて話す。
「まずは、オーディンは俺たち戦神と呼ばれてる20体の主人だ。」
一言めから、全員に衝撃を与える。
「なるほどな、予想はしてたけど、強烈だ。」
明平元年(ヘルクリスマスの起きる10年前)
とある廃墟に、オーディン達は現れた。
オーディンは、戦神20体を配下に置き、身の回りを五神のフレイヤ、トール、ロキ、フレイ、イズンで固め、息子にバルドルがいた。
彼らは、姿形を獣で成しており、周りから近寄られるような存在ではなかった。
そして、オーディン以外に一つ共通していることがある。
彼らは、ギムレーにどのようにして召喚されたのか分かっていない。
オーディンはこの世界に来たことについては何も話さなかった。
混乱しながらも、最初はどのように人間と共存するかを考え日々を過ごしていた。
人の言葉を覚えるか、自分達は危険ではないと証明する方法はないか、人間とはどう言う生き物なのか。
しかし、そう簡単に情報は得られず進展はなかった。
ある日、この廃墟に一人の人間が来た。
スタッ、スタッ、スタッ。
誰も近寄ろうとしない廃墟に、軽い足取りで向かう一人の人間。
当時国王のアトリである。
国王であるアトリは、たった一人で廃墟に来たのだ。
「キシャァア!」
「グルルッ!」
庭にいる周りの戦神が警戒をする。
スタッ、スタッ、スタッ。
アトリは周りの獣達に怖気付かず、廃墟の中に入る。そして、オーディンのいる部屋に一直線。
「あなた達が、この世界に現れた異人ですか?」
「うむ?なぜ、わしらと話せるのだ。」
アトリとオーディンが話し始める。
「ああ、それでしたらこの空間にいるあなた達の言語能力をこの世界基準に書き換えました。」
「なぬ!?お主、何者だ!?」
「申し遅れました。ギムレーが国王、アトリと申します。」
バサッ。
アトリは着ているローブを整え、お辞儀をする。
オーディンは衝撃を受けた。
彼の力に、そして、当たり前のように自分たちと接するアトリの姿に。
「お主は、わしらが怖くないのか?」
「怖い?何を言ってるんだ。怖いと感じているのは、あなた達の方でしょう。」
ドクンッ。
オーディンはこの言葉に衝撃を受ける。
「私の目には、少し先の未来が見えてな。あなた達が現れることはわかっていたのだ。まあ、本当に人間でいないのには少し驚いたが。」
「それにしては、動揺してる気配が全く感じられんが。」
オーディンはまだ警戒を解かない。
「まあ、見ず知らずのやつが現れて、いきなり信用しろって言うのは無理がある。だが、私ならあなた達に力を貸せるかもしれない。」
「わしらに手を貸すと?何が望みなのだ?」
「うーん、望みですか。私は、新しいものが大好きなので……。」
ニヤリッ。
アトリは笑みをこぼす。
「私と、友達になってくれませんか?」
「友達じゃと?」
「はい、異世界の住人と友達になれるのであれば、これほど幸福なことはない。」
静寂がこの空間を支配する。
「うーむ、確かに今のままでは埒が開かない。いいだろう、その申し出受け入れる。わしは、オーディンだ。」
「オーディン。あなたが、この仲間達のリーダーですね。であれば、二人きりでお話ししたいので。」
アトリは周りをチラッと見る。
周りに五神と、フェンリルたちが隠れているのが分かっていた。
「人払いをお願いできませんか?」
「うむ、分かった。お前達、外に出ていろ。」
「は、はい。」
ドタッ、ドタッ、ドタッ。
一つの空間で、オーディンとアトリが二人きりで話し合う。
こうして二人の会合が実現し、二ヶ月後にオーディンが国王になったのだ。
アトリは病死したと国中に流れた。
オーディンはヴァルハラに五神とバルドルと共に住み、戦神は各地域にバラバラに別れトップが継承するべき伝説となった。
また、戦神が人の内側に入り込むことができるようにしたのはオーディンであった。
そして、最大の衝撃はトップの20人が生まれたその次の日にヴァルハラにおいて発生した。
明平八年
トップになれず、脱落した子供達がヴァルハラの広間に集められた。
そこには、オーディンと五神、戦神20体も集っていた。
そして、
「ここまでたくさんの苦労をしたであろう。よく頑張ってくれた、心から感謝をする。」
ザワザワザワザワッ。
子供達は何事かと話し始める。
「何も心配することはない、安心するのだ。君たちはまだわし達の力になれる。このようにな!」
シュイーンッ!
オーディンは手から光を放ち、一人の男の子から何かを抜き取る。
「う、うわぁ!」
バタンッ。
男の子は苦しみ、叫んで倒れる。
「う、うそだろ。」
「逃げろ!」
ダダダダダッ!
子供達は広間から一斉に逃げ出す。
「何してるんだよ!オーディン!」
フェンリル・テュールはオーディンを睨む。
「これが、彼らの使い道よ。」
オーディンの手の上には何かモヤモヤした物体が浮かぶ。
一体、何が起きたのか。
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