第八十九話 真実と奇襲
オーディンは一人の男の子から何かを抜き取り、男の子は倒れ込み動かなくなる。
「さぁ、お前たちの力をわしによこせ!」
「いやぁぁ!」
「うわぁぁ!」
シュイーンッ! シュイーンッ!
多くの子供達から何かを抜き取る。
バタッ、バタッ、バタッ。
抜き取られた子供達は、次々と倒れる。
ブンッ!
フェンリル・テュールがオーディンに襲いかかる。
「オーディン!何してやがるって聞いてんだ!」
「ふん、使い道がなくなったこやつらに、意味を与えてやってるのさ!」
「ふざけてんのか!こいつらの七年間をなんだと思ってやがる!」
ガギーンッ!
フェンリル・テュールは何かに弾き飛ばされる。
「ぐはっ!」
「白狼よ、そこでじっとしていろ。」
「テュール!」
黒狼のフェンリル・ヴァールが寄り添う。
逃げる子供達を五神が道を遮り、逃げ場をなくす。
「さすが、我が手足となる五神よ。そうじゃ、お主達も早くトップの中に戻るがいい。もうやることはここにはない。」
ピカーンッ!
オーディンの手から天井に光が放たれ、戦神を包んでいく。
「くそっ!オーディン!!!!!」
シュンッ!
フェンリル・テュールの叫び声と共に、戦神は広間から消される。
それから、子どもたちの行方を知る者はいない。
「これが、俺たちの知るすべてだ。」
「ええ、テュールの話してることに間違いはないわ。」
テュールとヴァールが俯きながら答える。
「それじゃあ、俺たち以外にトップになれなかったやつらは、オーディンに……。」
「まだ確定はできないが、少なくとも彼らの存在を俺たちは確認していない。」
「そんなことって……。」
ギリリッ。
スノウの歯に力が入る。
「ねえ、グリンカンビ。あなた達がオーディンと戦っているのって。」
「そうよ。私たちは、アトリ様のおかげでこの世界で生きられた。なのに、恩を仇で返すようなオーディンに嫌気がさしたの。」
キリッ。
グリンカンビの目が尖る。オーディンを睨むかのように。
「グラニ!なんで、アトリ様はオーディンにこの国を?」
「そこは本当に分からんのじゃ。アトリ様はオーディンとのみ話をされていた。わしらも、その答えは知らないんじゃ。」
「ヨルムンガンド、これからの目的って。」
「そうやで、ユキナ。うちらは、あんた達に全ての力を貸す。そして、オーディンから真実を聞き出す。それがうちらの目標ってところやね。」
ホープは改めてこれからの目標を再認識した。
「最後に教えて、ヴァール。元々仲間だったオーディンを倒そうとしてるあなた達は、辛くない?」
「っ、セラ。あなたは優しいのね。いえ、ホープのみんながあなたみたいな寛大さと、優しさを持ってる。正直、辛くないとは言えない。……けど、他人の世界をぐちゃぐちゃにする権利なんて、誰にもないの。だから、あたし達はオーディンを止めたい。」
戦神の五体は、その目に強い信念を感じる。
「これが、戦神の覚悟か。すごいですね、神様というものは。」
「何を言ってるんだ、騎士の男。お前も、ホープの一員だろ?お前からも、スノウ達と同じ力を感じる。」
「ば、僕も、一員?」
セドリックは俯き、何かを考え始める。
「まあ、ある程度は分かったぜ。ありがとうな、テュール。」
「ああ、俺たちが伝えられるのはこれまでだ。後は、一緒に俺たちと探しに行ってほしい。」
「当たり前だ!これからも頼むぜ、相棒!」
「おう、任せろ。」
シュイーンッ!
戦神達は姿を消す。
「よしっ、そんじゃあビフレストの村に戻るか。」
「そうですね、ソーンさんやアトレウスさん達にも報告したいですし……。セドリックさん?」
ヒメノが考え込むセドリックに声をかける。
「ん、あ、ああ。行こうか、村に。」
「大丈夫ですか、セドリックさん?顔色が少し良くない気が。」
「平気だよ、ヒメノくん。早く向かおう。」
スタッ、スタッ、スタッ。
セドリックは足早にビフレスト山を降りる。
「兄さん、セドリックさんは……。」
「ああ、分かってる。あいつは、何かを抱え込んでる。けど、もう少し待ってやった方がいいかもな。あいつは真面目だから。」
スノウ達も山を降りる。
スタッ、スタッ、スタッ。
ビフレストの村まで戻ってくる。
「おーい、ソーンはいるか?」
「おおっ!ホープのみんな、待っておったぞ!」
「ん、ソーンチン何かあったんですか?」
リサが問いかける。
「それが、近くでモンスターが暴れてると連絡が入って、アトレウスさん達に向かってもらったのだが全く帰ってこないのだ。」
「暴れてる?そういや、ここにくる時もトロルがいたな。分かった、あの人たちなら平気そうだけど俺たちも向かってーー。」
バゴーンッ!バゴーンッ!
何か爆発音のようなものが響き渡る。
「なに!?」
「正門の方だ!リサ、見えるか!?」
「うーんと、トロル……と、人間??」
リサの千里眼には複数の何かが映る。
「リっちゃん!ここからどれくらい!?」
「だいたい400mくらい!」
「よし、ソーン。行ってくる!」
ダダダダダッ!
ホープの六人が爆発のあった場所へ向かう。
「頼む、我らが希望よ。」
ソーンはスノウ達の方を向き、願いを捧げる。
一体、何が起きているのか。
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