第百九十六話 感神の思いとは

「あはははっ!いいね力って!力があるだけで、何でもできる気がする!!」


シュンッ!シュンッ!

複数の砂の槍がセラを襲う。


「イズン!自分を取り戻しなさい!そんな力の使い方をしたら、あなたが無事じゃ済まない!」

「そんなの何でわかるの?イズンちゃんは恐怖を乗り越えたんだよ!だから、もう誰にも何にも邪魔されないの!立ちはだかるなら、お前も死んじゃえ!」

「くっ、あなたは何で、昔からそうやって……、希狼派三式改キロウハサンシキカイ! 豪雷狼牙ゴウライロウガ!」


ガギーンッ!ガギーンッ!

砂の槍を弾きつつイズンに迫る。


「そんなに足掻いても、何も意味がないってことを教えてあげるね!バカな狼さん! 岩の雨ロックレイン!」


バッバッバッ!!

上空から大量の石が降り注ぐ。


「くっ! 轟雷充填スパークチャージ! 希狼派五式改キロウハゴシキカイ! 可憐な破雷カレンナバラ!」


バリリリリッ!

雷の薔薇を上空に咲かせ、岩を弾き飛ばす。


「ほらほら!そんなところに止まってたら、潰れちゃうよ!!」

「イズン!あなたはこんなことをする神じゃないでしょ!あなたは、

「はぁ!?まさか、あんた、ヴァール!?ふんっ、そんな昔の話忘れたよ、今のイズンちゃんは誰でもこの手で倒せる最強の存在なの!」

「そんなことやめなさい!自分の心を、自分で傷つけて何になるの!!」


シュンッ!シュンッ!シュンッ!

セラは降り注ぐ岩を避けながら、空を浮くイズンに近づく。


「少しイズンちゃん達を知ってるからって、調子に乗るな!あんた達がおかしいのよ!なんで?なんであたし達を傷つける人間に手を貸すの?」

「この世界の人間は、みんながみんな悪い人たちじゃない!私たちに手を差し伸べてくれる人だっている!アトリ様や、セラのように!」

「ホープはオーディン様の手によって作られた存在だよ!セラリウム・アクセプトは、ホープの人間は、この世界の人間とは違うーー。」

「何も違わない!この子達は、自分の意思で、私たちの知る同じ人間、そして人間の光となれる存在なの!」


ズザッ!

セラはイズン目掛け高く飛ぶ。


「来るな!来るな!裏切り者が! 深淵の叫びアビスシャウト!」


キシャァァ!!!!

爆弾が弾けたかのような、イズンの感情の咆哮がセラ目掛け放たれる。


黒狼中式コクロウチュウシキ! 疾風迅雷シップウジンライ!」


シュンッ!

ズシャン!

その咆哮を超えるスピードで、雷を纏った刀がイズンの右肩を切り付ける。


「うぐっ、痛いなぁ!もう!!」


ドゴンッ!ドゴンッ!ドゴンッ!

複数のさらに大きい岩がさらに射出される。


「まだ痛みは感じるのね、なら! 轟雷充填スパークチャージ! 希狼派六式改キロウハロクシキカイ! 狼牙雷電斬ロウガライデンザン!」


バリリッ!バリリッ!

下から狙ってくる岩を、雷の斬撃が迎え撃つ。


バゴーンッ!バゴーンッ!

岩は砕け散り、セラは着地する。



「はぁ、はぁ、はぁ、まだ動けるのね、早く、早く死んでよ!!イズンちゃんの前からいなくなれ!」


シュンッ!シュンッ!シュンッ!

ドゴーンッ!ドゴーンッ!ドゴーンッ!

複数の砂の槍と岩が射出される。



「イズン、私にできるのはこれくらいなの、早く楽にしてあげるね。力を借りるわよ、セラ!」

(OK!しっかりやってきな!相棒!)


ビリリリリッ!

セラの周りに電気が走る。


「な、なに?ヴァールの雰囲気が変わった?」

「これが、人間と神の力を合わせたもの、未来を生み出す力よ! 轟雷充填スパークチャージ! 黒狼流派最終奥義コクロウリュウハサイシュウオウギ! 轟雷狼鋭陣ゴウライロウエイジン!」


バゴーンッ!バゴーンッ!

空から雷が降り注ぎ、砂の槍と岩を砕き飛ばす。


そして、雷の間を縫うかのようにセラは目にも留まらぬ速さで駆け抜ける。


「なになになに!なんなのよ、お前は!」

「私は、ギムレーに光を差す戦士、ホープの人間よ!眠りなさい、イズン!」


ピキーンッ!

ワォォンン!!

雷を纏ったセラはまるで狼のよう。




そして、


ジャギンッ!


イズンがセラの姿を認識した時には、イズンの強化水晶バーニアクリスタルは雷の攻撃により砕け散っていた。



「そんな、なんで、なんで……。」


シューンッ。

イズンの体から青い光が外に溢れ出し、元の姿に戻る。



バタンッ。

イズンは床に倒れ込む。



スタッ、スタッ、スタッ。

セラはイズンの側に歩み寄る。


「ヴァール、イズンちゃんは、死ぬのかな?」

「あれだけの力を使ったんだもの、死ぬことはないだろうけど、すぐには動けないわ。」

「あたしにトドメを刺さないの?じゃないと、また誰かを殺し始めるかも。」

「私は信じるわ、あなたの声に、その瞳に戦意が宿っていない、それが何よりもの根拠。」


スチャッ。

セラは刀を納める。


「……、イズンちゃんの完敗だね。気をつけて、ヴァール。」

「え?」

「オーディン様は、あんた達が思ってる以上にこの世界を憎んでいる。ギムレーを手にしたら、どうなるか分からない。」

「……なんでそんなことを話すの?私はあなたの敵よ?」


ニコッ。

イズンの顔に微笑みが。


「なんでかな、なんか、ホッとしてるの。もう、解放されるのかと思うと。大変だな、人生って。」

「それはそうね、人も神もいつか必ず辛い道を歩く。でも、それを乗り越えた先に希望はある。」


スタッ。

セラはイズンの隣に座る。


「ヴァールの言う通りかもね。ねえ、ヴァールは今からでもイズンちゃんの友達になってくれる?」

「ふっ、何言ってるの。いつでも歓迎よ、一緒に罪を償いましょう。」

「ふふっ、ありがとう、それが聞けただけで十分。はぁ、ヴァール、


ドンッ!

イズンはセラを押し飛ばす。


「うわっ!イズン、何をーー。」

「さようなら、あたしの最初で最後の友達ーー。」


バゴーンッ!

イズンの身体が突如爆発する。




その場所には、強化水晶バーニアクリスタルの破片が。



「そ、そんな。イズン、イズン!」


ギリッ。

セラの歯に力が入る。


(ヴァール、これって。)

(あの水晶に自爆機能があったんだと思うわ。そして、遠隔で誰かが操作した。)

(あり得るとしたら、オーディンだね。)


シューンッ。

共鳴突破クロスドライブ停止オフ。」


セラは感じている。

心の中でヴァールが悔やんでいるのが。



「ヴァール、セラは決めたよ、やることはただ一つ。」



ピキーンッ!

白いドアが生まれる。


スタッ、スタッ、スタッ。

そのドアへ向け歩みを進める。


「オーディン、あんただけは。」


ガチャンッ。

優しくドアを開く。


「許さない。」


バタンッ。

一言言い残し、セラはドアを通ったのだった。


セラvsイズン

セラの勝利

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る