第百九十五話 黒狼と感神
「ここで死んじゃえ!
「そう簡単にやられるわけにはいかないの!
ズザッ!ズザッ!ズザッ!
砂でできた槍を弾きつつ、距離を詰める。
「あんた達がいなければ、イズンちゃん達は平和に暮らせたのに!なんで邪魔ばかりするの!
ドゴーンッ!
大きな岩を生み出し、セラめがけ放つ。
「何を言っているの!平和を崩しているのは、あなた達神の方でしょ!
ビリリッ!
ガゴーンッ!
雷を纏った大きな刀の攻撃で、岩は粉々に砕け散る。
「何ふざけたことを!イズンちゃん達はギムレーを平和な世界にしようとしただけだよ!それなのに、あたし達のことを理解していない他の神や人間に邪魔されたの!」
「平和な世界を作る為に、あなた達は何人の未来を潰したの!散って行った人たちを数えたことある!?」
「そんなの数えるわけないじゃない、イズンちゃん達を邪魔するならそいつらは必要のない存在なだけ!だからこの手で消して、理想の世界を作ろうとしてるんだよ!」
「その理想の世界を、セラ達は知らない。いったいどんな世界を作ろうとしたの!」
ガゴーンッ!
刀と砂の槍がぶつかり合う。
「あんた達が考えてるような世界だよ、アトリが作り上げたように種族は違くても分かり合える世界!それがイズンちゃん達の目指した世界!」
「っ!?本当、なの?だったら、なんで無益な争いを起こしたの!ヘルクリスマスなんて、必要のないものだったんじゃないの!」
「起こしたくて起こしたんじゃない、ただ、怖かったの。前いた世界みたいに、誰かに襲われてイズンちゃん達の自由を、命を奪われるんじゃないかって。」
「前の世界?だったら、なんでセラ達人間に相談をしなかったの!そうしてたら、また違う世界が作れたかもしれないのにーー。」
ドゴーンッ!ドゴーンッ!ドゴーンッ!
大きな岩が数発セラに向け落とされる。
「イズンちゃん達は人間の愚かさを知ってる。だから、オーディン様が導いてあげようとしたの!完璧な世界をつくれば、そうすれば、人間も従うんじゃないかって!」
「なんで全員を縛りつけようとするの!人間と神が手を取り合って生きていく世界じゃいけなかった理由は何?」
「理想はそうだよ、けど、現実は違う!イズンちゃん達神を邪悪な存在として排除しようとする人間もいた、だから、信じちゃいけないって誓ったの!」
「だからって、話し合いもしないで全てを消してしまったら、さらに敵を増やすことになる!同じことを繰り返すだけの、悲しいだけの出来事になってしまう!」
ズザッ!
セラはスピードに乗りイズンに接近する。
「そうかもしれない、けど、恐怖を打ち消す為なら、仕方がなかったの!
シュイーンッ!
右手に砂を纏いドリルのように回転させる。
「なんでそこで諦めたの!少し、あと少しでいいから、踏み出す勇気をなんで持てなかったの!
ガギーンッ!
砂のドリルと、雷の衝撃波が激しく火花を散らす。
「うるさい!うるさい!イズンちゃん達は、もう元の世界で経験したような怖い思いをしたくないの!だから、邪魔をするならみんな消すだけなの!邪魔をするな!」
「それじゃあ、あなた達神もあなた達の世界を襲った奴らと同じ存在になってしまう!そんなの、あなた達だって望んでないでしょ!」
「あたし達は違う、特別な、神という特別な存在!だから、だから周りから疎まれる。けど、そうされるほどの完璧な存在があたし達なの!」
「この世界に完璧な存在なんていない!どんな生き物にも、良いところと悪いところが共存しているの。それが、この世界に生きるものの定めなんだよ!」
ガゴーンッ!
グラッ。
セラの攻撃でイズンは体勢を崩す。
(まずい、このままじゃイズンちゃんが殺される?)
「いやだ、いやだ、いやだ!死にたくない、イズンちゃんは、またみんなで笑うんだ!あたし達の世界のために、その為に、この手でホープを殺すんだ!!」
ピカーンッ!
イズンの首元にある青い結晶が光る。
そう、
(セラ、あれは危険!なんとかして壊さないと!)
(ヴァール?わ、分かった!)
シュンッ!
セラの刀が青い強化水晶に迫る。
「イズンちゃんの前から、いなくなれ!!」
ドゴーンッ!
イズンを青い煙が覆う。
ズザーッ!
衝撃波により、セラは吹き飛ばされる。
「くそっ、間に合わなかった。」
ピカーンッ!
青い煙の中から眩しい光が生まれる。
その中から、羽が生えたまるで蝶のような青いイズンの姿が。
「あははは!これで、これでイズンちゃんは最強になれた!見てて、オーディン様!この力で、邪魔するやつを殺してみせるから!」
「なんて嫌な力、寒気がするどころじゃない。」
(セラ、あたしに代わってくれる?)
(え?……分かった、何か理由があるんだね。)
(終わったら話すわ、ありがとうね。)
スタッ、スタッ、スタッ。
セラはイズンの前に立つ。
「
ドゴーンッ!
セラは共鳴突破を発動。
蝶と狼の戦いが始まる。
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