第四十五話 永遠の課題、新たなスタート
ザザーッ。
静かに川の流れる音が響き、二人だけのこの空間は張り詰めている。
「なぜ、デュポン前隊長を助けなかった。」
「なぜ、か……。」
スノウは空を向き、腕を組み少し考え込む。
「考えちまったんだよ。あいつを助けて救われる命と、見捨てることで救われる命を。」
「っ……。それでも、それでも君はーー。」
「殺人者、だな。」
スノウはゆっくりと振り返りセドリックを見つめる。
「この国の
「ああ。……そして君は、罰を受けることになる。」
セドリックの剣は、スノウの首元で迷いを表すかのように震えている。
それを他所目に、スノウはセドリックの目をまっすぐ見つめて伝える。
「連れてけよ。王国へ。」
「っ!そ、それは。」
「お前は国の
スノウは両手を差し出す。
月明かりと川の音が静かに見守る。
しかし、セドリックはその手を取ろうとはしない。
「僕には、分からないんだ。君のやったことが、間違いなのか。それに、君は直接手を下したわけでもない。」
「何言ってんだよ、俺があいつをここに連れてこなければ死ぬことはなかった。つまり、俺はあいつを殺した。それが罪状だ。」
「だが!もし君がやっていなかったら……僕が彼を、殺していたと思う。」
セドリックの言葉には苛立ちと迷いが混ざっている。
ドサッ。
その手から剣がこぼれ落ち、セドリックは頭を抱える。
「僕は、どうすればいいんだ。騎士として、君を王国へ連れて行かなければならない。……けど、セドリック・リーンベルとしては、君だけが罰を受ける理由が見つからない……。」
セドリックの目から涙が溢れでる。
その涙は、乾いた地面を濡らしていく。
「分からないんだ。何が正しくて、何が間違いなのか。僕の、正義は……。」
セドリックは膝を折り、ストンっと崩れ落ちる。
迷いの中にあるセドリックに、スノウはそっと近付く。
「なら、お前は俺の罪を忘れないでくれ。お前の中で決断した時、俺を裁いてくれ。」
「っ!?」
スノウは迷いのない眼差しをセドリックに向ける。
「アクセプト、君は怖くないのか。殺人罪で、死ぬかもしれないんだぞ。」
「そんなの、怖いに決まってるだろ。でも、これが俺の正義だ。俺が間違っているなら、俺は、お前に修正して欲しい。」
スノウの顔には固い決意とともに、微笑みが浮かぶ。
「アクセプト、すまない。元はといえば、僕らの王国が統治をしっかりできていたら、こんな罪を君に背負わせることなんてーー。」
「堅物が、起きちまったことを無かったことにはできない。けどまあ、もし、俺みたいなやつを作り上げないでくれるなら、それは、お前みたいな奴が国を統べるときなんじゃねえのかな。」
スノウはゆっくりと手を差し伸べる。
その手は、一人の人間の道を示すかのように月明かりで照らされる。
「セドリック、俺たちと来ないか?監視役として。」
「……監視役。」
「ああ、俺が間違った行動を取った時は、お前が迷わず斬ってくれ。あいつらには、少し荷が重すぎる。」
語りかけるスノウの顔には、微笑みながらも決意が見てとれる。
冷たい風が、二人を撫でる。
「ありがとう。……明日まで、待ってくれないか。考えてみる。」
「ああ、分かった。」
セドリックはスノウの手を取り立ち上がる。
スタッ、スタッ、スタッ。
二人は静まり返った夜道を歩き、宿屋に戻る。
「何が、荷が重すぎるですか。」
ひっそりと宿屋の裏でヒメノは二人の会話を聞いていた。
地獄耳の良いところでもあり悪いところでもある。
「私達は、兄さんの中でそんなに弱い存在ですか。私たちには、頼れってよく言うくせに。なんで私たちを頼ってくれないんですか。……ばか。」
ヒメノは涙を浮かべながら部屋に戻る。
次の日、デュポン前隊長の死体が川下で発見された。
死因は溺死。その後は王国より使者が来て、彼の亡骸を運んでいった。
「さてと、そろそろかな。」
「先輩、さっきから誰を待ってるんですか?」
スノウ達は宿屋の外で準備を終えている。
「それはー、おっ、来たぞ。」
「え?」
ホープの四人が振り返ると、セドリックが金色の甲冑を脱ぎ白い防具をつけて歩いてきた。
「待たせてすまない、アクセ……スノウ。」
「おう。待ってたぜ。」
「ど、どうなってるの?セドリンなんでここに?さっき王国の人たちは全員帰ったんじゃ!?」
スノウ以外の三人は狼狽える。
「紹介する!今日から同行する、セドリック・リーンベルだ!かなりの堅物だが、俺たちと変わらない強さを持ってる!これからよろしくな、セドリック。」
スノウは力強く手を差し出す。
「堅物は余計だよ。まあ、こちらこそ、よろしく。」
二人かがっちりと固い握手を交わす。
セドリック・リーンベル 18歳 男
現ヴァルキュリア隊 隊長
銀色の髪で、アシメヘアー。白い軽装備の鎧を着て、腰には白い直剣。
180cmを超える高さで、スノウと似た体型。
堅物と言われるが、固い信念を持つ真面目系誠実な人間。
「経緯とかは、次の村に向かいながら話すよ。とりあえず、ミュルクヴィズに向かおうぜ。」
スノウはセカセカと話す。
「兄さん、そこに何かあるんですか?」
「ああ、セドリックの言うことが正しければ……。」
「スノウの妹、セラリウム・アクセプトがいるはずだよ。」
スノウの生き別れた妹、セラリウム・アクセプト。
記憶に残っていなかった存在。
スノウは妹に会うことができるのか。
第七章 完
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第七章まで読んで頂きありがとうございました。
何が正しくて何が間違いなのか、現実も難しいですよね……
そして、仲間が増えたホープに、次の村では何が??
スノウ達の今後を気になってくれる方!
次の厨二病な技は!? 次は誰!?
ホープの五人組 応援してるぞ!
と思ってくださいましたら、
ぜひ、レビューや★評価とフォローをお願いします!
ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!
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