第八章 英雄は新たな再会を遂げる
第四十六話 二匹の狼
五人になったホープは、新しい村 ミュルクヴィズに向けて歩を進めている。
今日は日差しが強く、眩い光がホープを照らす。
「で、兄さん。セドリックさんが一緒に来てくれる理由はなんなんですか?」
「うーん、簡単に言えば、俺たちのまとめ役が欲しかったってところだな。」
「まとめ役?セドリンはそう言う素質があるの?」
リサはセドリックの顔をまじまじと見る。
「リサくん、一応僕はヴァルキュリア隊の隊長を任されたんだ。それなりには自信があるつもりだよ。後、何だいその呼び方は?」
「気にするな、リサは誰のこともあだ名で呼ぶんだよ。」
「う、な、なるほど。まあ、まとめ役を任せてもらえるならなんとかやってみるよ。」
五人はもう打ち解けているようだ。
セドリックが加わったことにより、戦力は大幅に上がり、賑やかにもなった。
そして、話は本題に移る。
「それで、セドリックはなんで俺の双子の妹、セラリウムと会ったんだ?」
「それは、先日の見回りの帰り、モンスターに襲われている商人達がいてね。そこでたまたま出会ったんだ。」
セドリックが前回の見回りの話をし始める。
二日前、とある道
「ウォーウルフの群れだ!早く逃げろ!」
商人達は馬車を動かし逃げ始める。
「グルゥ!ガウガウ!!」
爪の長い灰色の狼が商人の持ち物を奪おうと俊敏に追いかける。
ザッザッザッ!
「各位!陣形を乱さずに、ウォーウルフを討伐せよ!」
「はっ!」
セドリックの一声で、ヴァルキュリア隊はファランクスの如き堅牢な陣を敷き、ウォーウルフを討伐する。
「ヒギャ!」
「キャィン!」
ウォーウルフは精錬されたヴァルキュリア隊に敵わず、瞬く間に倒されていく。
しかし、
「だ、誰か!」
一人の商人は、突如木の裏から現れたウォーウルフにまさに引き裂かれる寸前。
「くそっ!戦騎術ーー。」
シュンッ!
何かがセドリックの隣を風の如く駆け抜けていく。
「
バリィーンッ!!
雷の如く激しい音と、目にも留まらぬ速さでウォーウルフは斬り裂かれる。
その場には地面が焦げたような跡が。
その攻撃により、戦闘は終わりを迎える。
「あ、ありがとう。」
「どういたしまして。」
ウォーウルフを倒した者は、商人を助け起こしその場を去ろうとする。
「あ、待ってくれ!」
「なんですか?セラに何か用?」
「いや、用ってほどでもないんだが、商人達を助けてくれてありがとう。僕は、セドリック・リーンベル。君は?」
その者はフードをかぶっており、顔まではよく分からない。
「セラリウム。これでいい?」
「あ、ああ。」
「あそ、じゃ。」
素っ気ない態度でセラリウムは去っていく。
(不思議な人だ。)
「隊長!誰も怪我なく討伐完了です!」
「了解した。僕たちも王国へ戻ろう。」
セドリックは帰り道で考え込む。
(彼女の技、どうもアクセプトのものと似ている。偶然か?)
時は現在に戻る。
「それで、王国で調べたらスノウと彼女の名前がアクセプトってことが分かって、昨日伝えたんだ。」
「なるほどな、てことは傭兵とか守備隊とかで今も活躍してるのかもな。」
スノウは空を見上げながら何かを考えてるようだ。
「それにしても、なんでウォーウルフがいきなり商人を?こんな整備された道には出てこないと思うんですがーー。」
ヒメノが話し切るのを遮るかのように、
ガサッ!ガサッ!
「っ!」
五人は武器を構える。
何かが周りからホープを睨みつけている。
「ヒメノ!何体だ!」
「音からして……八体です!」
バサッ!!
「グガァ!」
物陰からウォーウルフが飛び出してくる。
「噂してたらなんか出てきちゃったよ!セドリン責任取って!」
「え、僕が悪いのかい!?と、とりあえず倒すしかない!」
ジャキーンッ!
ザスッ!
一体ずつウォーウルフは素材となり落ちる。
さすが、元最強の戦士。
ホープの五人は素早く対処していく。
「
セドリックは地面を割る程の力で跳び、その勢いでウォーウルフを刺し倒す。
「キャウン!」
一体のウォーウルフが怯えて逃げ出す。
「先輩!一体が村の方に逃げます!」
「任せろ!」
スノウは刀を構え、ウォーウルフを真っ直ぐに捉える。
(ん?他に何かが狙ってる?いや、まずは倒す!)
足に血管が浮き出るほどに力を溜める。
「
「
ジャキンッ!
ジャキンッ!
二つのスピード特化の攻撃がウォーウルフを斬り刻む。
ズザーッ!
二人は地面を滑り、削りつつ止まる。
「あ!セドリックさん!あれって!」
「あ、ああ。間違いない、彼女がーー。」
スノウは刀を下げ振り返る。
スノウと対面から斬り込んできた者も振り返る。
「っ!」
「うそ、まさかっ!?」
二人の間に静かな、そして冷たい空気が流れる。
「セラ。」
「お兄。」
二人はその場に立ち止まり、ただただ見つめ合っていた。
これは、感動の再会か、それとも……。
♦︎♦︎
「国王様、セドリックがホープと一緒に行動しているとの報告が。」
「うむ、やはり人間が考えることは理解に苦しむ。」
オーディンは椅子に腰をかけ、果物を口にする。
「そろそろ奴らは目障りです。故に、拙者が奴らを射殺したく思います。」
「行ってくれるか、
「お任せを。」
シュンッ!
その場からロキは影のように消える。
ホープ達の元に、再度危険が迫っていた。
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