第四十七話 再会、不安

突如再開したスノウとセラリウム。


しかし、二人の間の空気はどことなくピリついていた。


「あなた達怪我はない?」

「ああ、おかげさまでな。」

他人行儀な話し方が他のホープ四人の不安を仰ぐ。


「あ、す、スノウ。彼女が話してた、セラリーー。」

「セドリック、ミュルクヴィズはどっちだ?」

スノウはセドリックの話を意図的に遮る。


「ミュルクヴィズに行くの?なら、うちが滞在してる村だから案内するよ。」

「そうか、助かる。」

セラリウムに連れられ、ホープの五人はミュルクヴィズに向かう。



道中、スノウとセラリウムの間には会話一つなかった。


暗い雰囲気の二人を日差しが意図的に照らしてるようにも見える。



「ねえねえヒメチン、なんでスノウあんな不機嫌なのかな?」

「分かりませんよ、なんか話しかけづらいですしどうしたんでしょう。」

周りから見てる四人は下手に干渉せずに着いていくのが無難と判断した。




15分ほど歩くと、ミュルクヴィズに辿り着く。


「着いたよ、ここがミュルクヴィズ。」

「ああ、助かった。」

スノウとセラリウムは見つめ合い、


「んっ。」

セラリウムがクイッと首を傾ける。


「……。」

スノウ達五人は黙ったまま村の中に入って行く。



ホープとセラリウムはこの場で別れた。


「あれが、セラのお兄……。」

セラリウムは遠ざかるホープの背中をじっと見つめていた。



「ねえ、スノウ。なんで話してこないの?妹なんでしょ?」

「ん、あ、ああ。」

スノウは眉間にシワを寄せ、何かを考えてるようだ。


「スノウ、何か理由があるんだね?」

「……。」

「いいよ、僕たちは先に宿屋に向かってる。後から来てくれ。」

「……ああ。分かった。」

スノウはその場に立ち止まり、他四人は宿屋へと向かう。



スタッ、スタッ、スタッ。


スノウは村の噴水があるところまで向かった。


「来たのね、スノウ。」

「ああ、セラリウム。」

セラリウムは先に噴水の近くのベンチで、待っていた。


そして、彼女は少し警戒をしている雰囲気。


「よくわかったね、ここに来て欲しいってこと。」

「分かるに決まってるだろ、お前が合図してたしお互いを会得してるんだからな。」

「あはは、本当に、スノウ・アクセプトなんだね。」



やはり会話の中に違和感が混じる。


兄弟の会話……というよりは敵対してる者同士の会話のようだ。



「隣、座ってよ。」

「ああ。」

ベンチの端と端に二人は座り、その距離は心の距離とも窺える。


「スノウも、記憶を消されてるんだよね?」

「ああ、約十年間はぽっかり空いちまってる。お前もか?」

「うん、うちもだからね。」



二人の間を静寂の時間が訪れる。



「ねえ、スノウ。うちのこと、

「っ……。」



何も答えられない。


そう、スノウの中にはセラリウムの記憶が0に等しい。


「悪い、正直ほとんど覚えてないんだ。」

「やっぱり、そうなんだね。」

「やっぱり?どういうことだ。」

スノウの眉間にシワが寄る。


「うちとスノウはさ、無理やり引き裂かれたんだよ。FC計画のの時にね。」

「診断テスト?それって、自分に何の適性があるかって調べたーー。」


スノウの中に一つの記憶が呼び起こされる。




「ここ、どこ?なんか、嫌な部屋。」

「大丈夫だよスノウくん、安心して。」

この時七歳のスノウは、一人の大人に誘導され個室に入れられる。


ウィーン!

機械音のようなものと共に、眼前に言葉が現れる。


適性:氷 能力:感覚


二つの力がスノウに発現していた。



そして、次はセラリウムが入る。


ウィーン!


適性:雷 能力:感覚


セラリウムも二つの力が発現する。



「セラ!終わった?」

「うん!お兄も終わったの?」

「うん!早く帰れないかな?」

二人は手を繋ぎ、廊下をゆっくり歩く。


すると、ヒソヒソと声が聞こえる。



「おい、どうする。」

「どうするったって、しょうがないだろ。いくら珍しいっていっても同じ力を持つやつは一人で十分だって言われてるし、片方はしか。」


近くの部屋で聞こえる二人の男の話し声。


「処分?何かゴミでもあるのかな?」

「さあ、分からないよ。それより早く行こ!セラお腹すいた〜。」

「いいよ!何食べようか〜。」


二人は気に留めず建物を出る。



それから、一ヶ月後



「よし、君らは1:となった!ここにいる2500人の中から、未来を守るヒーローを育てる!皆、覚悟を決めろ!」




時は現実に戻る。


「なあ、セラリウム。一つ聞きたい。」

「なに?」

「俺たちはセクター1で修行してたよな。……なんで、狼流派はなんだ。他のやつはーー。」

スノウが言葉を発する前に、セラリウムがその口を手で押さえる。


「その先を言わないで。今スノウの頭に浮かんでることが、真実だよ。無理に、再確認する必要はない。」

「けど、そしたらなんでセラリウムは俺と同じ流派だったのに、

「それがさっきの答え。うちは、スノウと引き裂かれたの。同じを持つものとして、トップという一人の最強を作るためだけに生まれたセクターの中から。」



空気が重くなり、スノウの目はまんまるになる。


「一体、誰に?」

「それは……よ。」

「っ!?」



クレイトス……スノウ達を城から脱出させてくれた男の名。


彼は何者なのか。

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