第四十八話 過去の鎖
「クレイトス!?それって、俺たちが城で助けられーー。」
「先生に会ったの!?」
セラリウムはスノウの眼前まで迫る。
「あ、ああ。会ったっていうより、命を助けられた。」
「どういうこと!?先生は生きてるの!?」
「……分からない。俺たちを逃がすために魔法を使って、フォールクヴァングに送ってくれたんだ。」
「フォールクヴァング……そこって、先生の住んでた村だよ。」
二人の会話がここで途切れる。
「なあ、セラリウム。教えてくれ、俺たちは一体何者なんだ。トップって、俺たちが生きてる意味って。」
「そうだよね、スノウだけじゃなくてお仲間さんも知りたいよね。」
セラリウムは立ち上がり、噴水の方へ歩く。
その背中は、寂しさを含んでいた。
「いいよ、教えてあげる。……けど、一つお願いを聞いて。」
「お願い?」
スノウも立ち上がりセラリウムと向き合う。
「そう、うちと、
「
「そう、うちとスノウでどっちが最強の狼流派なのか、本物のトップはどっちなのか決めたいの。」
二人の間に冷たい空気が流れる。
「なあ、それって、俺たちで殺し合いをするってことか。」
「まあ、平たくいえばそうだよ。トップという名前の通り、各流派の人間は一人しか存在してはいけない。……だから、どっちが最強か、決めたいの。」
「……。」
スノウは何も答えられずにいた。
風が、二人の髪を揺らす。
その夜、スノウは布団の中で考えていた。
「明日の12時、広場に来て。一人でもいいし、仲間も連れてきてもいいよ。」
セラリウムはそう言い残し、走り去っていった。
バサッ!
スノウは布団を頭まで被る。
(くそっ、どうすりゃいいんだ。)
月明かりがスノウを照らす。
(俺とセラがどっちが最強か決める?それがお願い?そんなのどっちでもいい!俺は、あいつと一緒に生きる方法を……。)
(迷っているんだな、スノウ。)
(フェンリル……ああ、俺には分からない。)
スノウはフェンリルと対話する。
(お前達は、過去に囚われる必要はない。お前達のやりたいように未来を生きろ。)
(俺たちの、やりたいように……。)
スノウは布団の中で未来を想像した。
そして、そこにセラリウムの姿は……
ゆっくりと月明かりがスノウを避けると、スノウは眠りについていた。
タッ、タッ、タッ。
次の日の昼、スノウは武器を持ち広場へ向かっていた。
彼の目には、何事にも揺れない固い決意を感じる。
今日の決闘を望んでいるかのように、空は快晴。
「スノウ、ありがとう。来てくれて。」
だだっ広い広場の真ん中にセラリウムは二本の刀を構え、準備万端。
同じ流派ではあるが、スノウの構えは二本の刀を逆手持ちに対し、セラリウムの構え方は順手持ち二本。
「なあ、セラリウム。最後に確認させてくれ。どういう結果になっても、後悔はしないか。」
スノウはセラリウムの目をまっすぐ見つめる。
「うん、これがうちの目標。絶対に後悔しない。……だから、スノウも本気で来て。」
「……ああ、分かった。」
二人は武器を構え、全神経を相手に集中させる。
その場は二人の呼吸音のみが響く。
ザッ!
地面を蹴る音がした途端、
「
「
バキーンッ!
スノウのスピード特化の攻撃と、セラリウムの回転斬りが火花を散らす。
トップ同士の本気の決闘が始まった。
同時刻、宿屋にて。
「どういうことなんですか!兄さんとセラリウムさんが戦ってるって!」
「そうだよ!セドリン説明して!」
セドリックが他三人に詰め寄られていた。
「すまない、言うかどうか迷ったんだが、スノウはけじめをつけるって出ていったんだ。」
そう、今朝スノウは起床するとともに、セドリックにこう告げていた。
「昼の12時、ちょっとけじめをつけてくる。今日のことは、正直お前達が真っ向から反対するだろうから、セドリックにだけ伝えとく。」
「え、スノウ、それは妹さんとーー。」
「さすが、頭が切れるやつは違うな。」
そう言い残すと、スノウは宿屋を後にした。
「なんで止めなかったんですか!」
「それは、その、すまない。」
「ヒメノちゃん、セドリックさんを責めてもしょうがないよ。」
全身に力が入ってるヒメノを、ユキナが抑える。
「とりあえず、早くスノウのところに行こう!」
「はい!」
ヒメノ、リサ、ユキナは広場に向けて走る。
「スノウ……すまない。僕には、彼女達を止めることはできない。君のやろうとしてることが、分かってたとしても。」
セドリックも後を追う。
ザワザワザワザワッ。
村の人たちが広場近くに集まっている。
バキーンッ!
バキーンッ!
その先からは、高い金属音が鳴り響く。
「すみません、通してください!」
四人は人混みをかき分けて進むと、
『この先、危険。』
と書かれた紙が柱などに貼られており、その先で戦闘音が鳴り響く。
村の人たちを傷つけないために、スノウが先んじて用意したようだ。
「ここまでして戦う必要は……くっ!!」
ヒメノを先頭に四人は広場へ向かう。
その先で、四人が目にしたものとは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます