第四十九話 避けられない衝突

バキーンッ!

バキーンッ!


激しさを増すスノウとセラリウムの命の駆け引き。


ピキッピキッピキッ!


氷付与アイスエンチャント! 狼派二式ロウハニシキ! 蒼波ソウハ!」


バリッバリッバリッ!


雷充填ライトニングチャージ! 希狼派六式キロウハロクシキ! 雷電ライデン!」

青い氷の斬撃と、黄色い雷の斬撃が弾け合う。


スタタタタッ!

二人は狼の如く左右に移動し、目にとらえるので精一杯。


スノウの両腕に血管が浮き出るほどの力が入る。

「くそっ、 狼派七式ロウハナナシキ! 餓狼撃ガロウゲキ!」


バギッ!

重い溜め斬りが、地面を斬る。


「そんなものなの!スノウ! 希狼派一式キロウハイチシキ! 爆砕牙バクサイガ!」

縦回転した勢いで、スノウに二刀が迫る。


(この攻撃を受け止める、なら!)


ピキーンッ!

スノウの記憶が呼び起こされる。


「ちっ! 氷付与アイスエンチャント! 狼派九式ロウハキュウシキ! 狼燭ロウソク!」


ピキッピキッピキッ!

スノウの刀を氷が大きく覆い、地面に刺すことで蝋燭の様になり攻撃を防ぐ。


「くっ、はぁ!!」

「こんのぉ!!」


バキーンッ!

スノウとセラリウムは鍔競り合う。



周りの空気は、とてもざわついている。




「はぁ、はぁ、はぁ。兄さん!」

ヒメノ達四人が広場にたどり着く。



「セドリック!なんで連れてきた!」

「すまない、スノウ。ただ、僕には止めることができなかった!」

「よそ見厳禁!!」

セラリウムの二刀がスノウの眼前に迫る。


「ちっ、狼派五式ロウハゴシキ! 円陣狼牙エンジンロウガ!」


バキーンッ!


ギリギリのところで回転斬りで弾き返す。


「セラリウムさん!やめてください!」

「なんで!あなたとスノウが戦う必要があるの!」

ヒメノとリサが大声でセラリウムに呼びかける。


「簡単だよ、これが、うちのだから!」


瞬足でスノウに近づく。


希狼派二式キロウハニシキ! 連牙斬レンガザン!」

「やっぱり、似てるな。 狼派六式ロウハロクシキ! 裂羅サクラ!」

二人の連撃がぶつかり合う。


その衝撃は、周りのものを吹き飛ばさんとする勢い。


「う、くっ!なんて衝撃。これが、トップ同士のぶつかり合い……。っ!」


ブオンッ!

四人目がけ、ベンチの椅子が飛んでくる。


「くっ! 戦騎術センキジュツ! ! 剛衝斬ゴウショウザン!」

セドリックの力強い一撃がベンチを弾き飛ばす。


「どうにかして、二人を止められないの!?」

「難しいよ、リサくん。あの中に入れば、こっちもタダじゃ済まない。」


バキーンッ!

バキーンッ!


尚も戦闘は激しくなる。


金属のぶつかり合う音が、地面を蹴る砂埃が、二人の気迫がその空間を支配する。


(おい、スノウ。)

(なんだよ、フェンリル。戦闘中だぞ!)

(分かってる、だが、これじゃお前たちも。)


スノウの中でフェンリルが語りかける。


(お前は、セラリウムと直接対話したいんだろ。)

(そりゃそうだけど、でもそんな方法はーー。)

(俺に任せろ、お前の体を借りるがやれることはある。)

(はっ!?)


シャキーンッ!

セラリウムの刃先が、スノウの右頬を掠める。


雷充填ライトニングチャージ! 希狼派七式キロウハナナシキ! 紫電衝破シデンショウハ!」

電撃を帯びた刀先から、衝撃波を放つ。


氷付与アイスエンチャント! 狼派八式ロウハハチシキ! 氷華ヒョウカ!」

その衝撃を氷の刃で受け止め、体勢を立て直す。


(ねえ、セラリウム。あたしと変わってみない?)

(なに、フェンリル?いつも戦闘したくないって言ってるあなたが、どうしたの?)

(少し、挨拶しておきたい人があそこにいそうでね。)




スノウとセラは距離を取り威圧し合う。



「セラリウム!お前の考えてることは、俺と同じはずだ!文句はねえな!」

「ええ!それがあたしも正しいと思う。だから、やり合いましょう。二人の、本気で!!」



ヒューッ!!

バチバチバチッ!


スノウの周りには突如冷気が生まれ、雪国のような寒さを感じる。


対して、セラリウムの周りには静電気のようなバチバチと音を発する電撃が纏い始める。



「兄さん、セラリウムさん……っ!まさか!」

ヒメノ達四人も二人の行動を察する。




限界突破オーバードライブ! 開始オン!」


バゴーンッ!

スノウからは青い光が、セラリウムからは黄色い光が立ち上り周りに激しい風を巻き起こす。


「よお、久しぶりだな。。」


スノウは、フェンリルと入れ替わり白い狼のような尻尾と牙、そして髪が真っ白になり腰ほどまで伸びる。


「ええ、久しぶりね、。」


セラリウムも同じく、黒い髪が腰ほどまで伸び、黒い尻尾と黒い牙が生える。




白狼、黒狼、二つの狼が揃った瞬間だ。



「フェンリル・ヴァール、これから先は、あいつら二人の時間だ。……とはいえ、ここで決闘しあいを終わらせるつもりはない。」

「そうね、あたし達もあの子達に付き従う者として、全てを賭してでも決闘しあいに勝ちたい。……そうよね、フェンリル・テュール?」

「ああ、その通りだ。」


二つの狼からは、周りのものを全て消し去るほどの気迫を感じる。


「始まる、トップ同士の本当の戦いが……。」

「そんな、先輩……。」

四人は遠くから見つめることしかできない。



「いくぞ、ヴァール! 氷付与アイスエンチャント! 白狼初式ハクロウショシキ! 雪月花セツゲツカ!」

「参ります!テュール! 雷充填ライトニングチャージ! 黒狼中式コクロウチュウシキ! 疾風迅雷シップウジンライ!」


ドゴーンッ!

テュールの雪の中に咲く花のような、力強い一撃と、ヴァールの雷を纏った高速の一撃が弾け合う。


「さあ、スノウ。お前達で!」

「セラリウム、しっかり、けりをつけてきなさい!」


二人の戦いは激化する中、スノウとセラリウムは二人だけのとある世界に感覚を飛ばされていた。

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