第三十七話 ことの真相、町の闇

「なんで、ここにお前たちが!」

「さあな、たまたま居合わせただけってことで。」

スノウの刀のきっさきはヴァルヴァの首にくっ付いてる。


「こんなことして、町の民が許すと思うか!」

「じゃあ、聞いてみようぜ。」

スノウはヴァルヴァを掴み、処刑台の上に立つ。


「スノウ!なんで君たちが、俺には構うなとーー。」

「何言ってんだ、俺たちはただ居合わせただけだっての。そこで見ててくれ、スティング。」


町の人たちはさらにざわめき出す。


「今ここに集まってるみんな!正義の鉄槌を下すのは、これを見てからにしてくれ!ブラック隊!」

「任せろ!」

ブラック隊の隊員が多くの紙を撒き散らす。


「な、なんだ?」

「IWSの、設計書?え、何これ!?」

町の人たちが見た紙には、IWSの概要が書かれており、右下にある文字が書かれていた。



『稼働五分で、自分の意識を乗っ取られる。』



「な、なんだよこれ。てか、Mk-Ⅱってなんだ?」

「意識が乗っ取られるって、どういうこと?」

町の民は混乱している。


「これが、四日前の戦いの時にアウルが着用してたIWSだ!そして、アウルはここに載ってる通り意識を乗っ取られ暴走し始めた。」

「な、何をでたらめな!そんなもの、どこからーー。」

「あんたらの地下研究所だよ。」




時は遡り、二日前。



「兄さん!大変です!スティングさんが!」

「スティングが?」

「このままだと、処刑されてしまいます!」

ホープの四人はスノウの部屋に集まる。


「もう分かってることだが、アウルはどう考えても普通じゃなかった。暴走してたってのが正しい感じだった。」

「兄さんの言う通り、あの力は人間が扱えるものではありません。あんな動き、体が保ちません。」

「あたし達で、調べてみようか。」

リサは地図を出し町長の家を指し示す。


「やっぱり、町長の家が一番怪しいよね。あんな事態が起きても、動揺すらしてなかった。」

「そうですね、先輩、あまり良くはありませんが町長の家に潜入しませんか?」

「おー!ユキチン大胆!でも、それが一番早いかもね。」



その晩、四人は町長の家に近づく。


「えほっ、えほっ。ここも、やっぱりひどい匂いです。」

「ユキナ、なんの匂いが強い?」

「血の匂いです。家の下の方から特に濃く感じます。」

四人は正面門に向かう。


「玄関をぶち壊して入るのは、礼儀に欠けるか?」

「当たり前じゃないですか!でも、どう入りますか。」

「あ、壊さなきゃいいんだよね?」

リサはドアに近づく。


「リサさん、何をーー。」

「よいしょっ!」

リサはドアをきれいに外し、床に置く。


「さあ!入ろ!壊してないし、オッケーでしょ!」

「リ、リサさん!た、確かに壊してませんけど!そんな入り方ーー。」

「馬鹿力って怖いな。」

「あ??」

リサがスノウを睨む。


「さーて、何か手掛かりあるかな〜?」

「帰ったら、あたしの部屋に集合ね〜スノウ〜」

「こんなゆるい雰囲気でいいんでしょうか。」

ヒメノとユキナは不安を抱えつつ中に入る。


「下の方か、地下の入り口を探すのがいいな。」

「そしたら、私の地獄耳で探してみます。」

ヒメノは集中する。


サァーッ。


風の音が聞こえる。地下に向かう風の音だ。


「こっちです。」

「さすがヒメチン!」

四人はヒメノを先頭に地下の入り口に向かう。


「ここですね。」

地下へ続くであろう、ハッチを見つける。


「さらに血の匂いが濃いです。ここに間違いありません。」

「よし、行くか。ユキナはどうする?この先さらに行ったら体に負担じゃねえか?」

「大丈夫です。真相を確認したいので。」

四人はハッチを開け、ハシゴを降りていく。


「ん?みんな待って!」

「リサさん、どうしました?」

「何か見えた。この先に誰かいるよ。」

リサを先頭に四人は歩き始める。



少し歩くと、光が差す部屋が見える。


「よし、これでデータも取れた。後は、周りの町や村、王国に売って稼ぎ放題ーー。」


ザッ!


「んぐっ!?」

「こんばんは、通りすがりの冒険者です。」

リサが素早く男の口を抑え、床に伏せさせる。


「ここが研究所か。IWSが何個もある。」

「そうですね……っ!先輩!あれ!」

ユキナが指差す先に赤いIWSがある。


「あれは、アウルさんが使ってた。」

「おい、あんた町長の助手だろ。この赤いIWSは何だ?どんな構造してやがる。」

「そ、それは……。」

男は口を閉じる。


「脅したくはないんだ。……けど、俺らも殺されかけたんでな、最悪は。」

スノウは刀に手をかける。


「ひぃっ!!わ、分かった。この紙を見てくれ。」

「これは、赤いIWSの詳細か。……っ!なんだよこれ!」


そこに書いてあったのは、


一般人被験者 十人。行動不能。一般人には使えない。

ブラック隊候補生 二人。一分で行動不能。更なる強靭な体が必要。


 五分稼働。複数のゴブリンを撃退。トップも寄せ付けない力。常に暴走状態。


「これって……。兄さーーっ!」

「……くっ!!」

ヒメノはスノウの顔を見て言葉をつまらせる。



スノウの表情は怒りに満ちており、殺気すらも感じる。


そして、二日後にホープは行動を実行した。

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