第三十六話 後悔、理不尽な世界

裏門が戦場となり、五分経過。


恐怖が支配する空間を、一つの音が切り裂いた。



「はあ、はあ、はあ。」

アウルの後方には、スティングが片膝をつき起き上がっていた。


「スティング!」

「す、てぃん、ぐ、たい、ちょう。」

アウルはスティングの方を向き、両手を広げる。



「もういい。」

スティングは右手をアウルに向けて構える。



「もういいだろ!!」


ダーンッ!


スティングのIWSから鉄の鉛が放たれる。


ズシャッ!


鉄の鉛はアウルの頭を撃ち抜く。


「ぁ……り……とぅ。」

アウルはその場に倒れ込み、額から血が流れ出る。



その場に静寂が流れる。



それを破ったのは、


「アウル、お兄ちゃん。」

ライラは倒れたアウルの方に歩き始める。


ゆっくり、ゆっくりと。



バッ!


「見るな、見ちゃだめだ。」

スノウはライラを前から抱きしめ、アウルの姿を見えなくする。


「っ、ひっく、アウル。すまない……。」

スティングはその場で崩れ落ちる。


「くそっ、なんでだよ……。」

スノウはライラを抱きしめたまま、口に力が強く入り血が滲み出る。



「おーい!大丈夫か!」

町の方からブラック隊の人達が救援に来る。


この戦いは、人間の勝ち……とは言い難い結果となった。




ガチャコンッ!


とある地下の牢屋が開かれる。


「お前は、そこにいろ。」

一人の男が、牢屋に入れられる。


「明日が判決の日だ、最後まで生を実感するんだな。」

牢屋の扉が閉められる。



「くそっ、アウル。すまない……すまない。」

牢屋に入れられたのは、であった。



時を同じくしてスノウたちの泊まる宿。


コンッ、コンッ。

「先輩、入っていいですか?」

「ああ、空いてるぞ。」

スノウの部屋にユキナが入ってくる。


「先輩、もう明日ですね。」

「ああ、分かってる。」

「予定通りに行くでしょうか?」

ユキナはスノウの隣に座る。


「あの戦いから、もう三日たった。準備はできてる。」

「そうですね、後はやるだけですね。」


二人の部屋を明るい月が照らす。

何故だろうか、その月は二人を照らしてるように見える。



翌日



ファンサリルが町長、ヴァルヴァ・ヴァンは町の広間に多くの町民を集め集会を行なっていた。



そこには、処刑台も設置されていた。



ザワザワザワザワ。


町の人たちも落ち着かない様子。



「町長、ヴァン様。ご到着!」

町長のヴァルヴァは馬に乗って現れる。


「今日か。」

「まあ、あんなことをしたらね。」

町の人たちからこのような声が上がる。


「では罪人、前へ。」


手を後ろで縛られたスティングが軍人に連れてこられる。


「なんでスティング隊長が。」

「何かされたんだろ。」

ザワザワが止まらない。


スティングの顔には正気が宿っていない。


連れてかれるがままに、スティングは処刑台に座らされる。


「町長、お願いします。」

「うむ。」

ヴァルヴァは町民たちの前に立つ。


「皆、聞いてくれ!彼、スティング・レイは同胞のの命を奪った罪がある。アウルの額には一つの穴が開いており、その場で絶命したとのこと。」


町民がさらにざわつく。


「アウルくんはこの町に尽くして我々多くの人間を助けてくれた。だが、彼の隊長スティングはアウルを殺した挙句これからのブラック隊を無くすべきだと唱え始めた。」


スティングは何も言わずに軍人に取り押さえられたまま。


「スティングは、この町の作り上げたIWSを否定し我々にゴブリンやモンスターの恐怖に日々怯えることを強いているのだ。このようなこと、許されていいはずがない!」


「そうだそうだ!」

「なんでアウルさんを!あんないい人だったのに!」

町民も批判の声を上げる。


(アウル、すまない。俺は、間違ってたのか。お前に誰も殺してほしくなかった、そう思ったのは俺の過ちだったみたいだ。)

「スティング、前へ!」


のそのそと処刑台の上に乗り、腰に武器を差した人の前に膝をつき座る。


「彼は、この町のだ!この場で、私が彼にの鉄槌を下す!」

ヴァルヴァは剣を携え、スティングの前に立つ。


「スティングよ、何か言い残すことはあるか。」


スティングはゆっくり、頭をあげる。


「いいえ、何もございません。」

「その潔さはよし。何故こんなことをしたのか、今も理解に苦しむ。しかし、これは町の総意。受け入れよ。」

ヴァルヴァは剣を構える。


「彼に、正義の鉄槌を!安らかに眠るがいい!」

「すまない、アウル。」



シュンッ!


カランッ、カランッ


剣が地面に落ちる。



「き、貴様。何を。」

を下していいんだろ。なら、遠慮なく下してやるよ!」

スティングの隣に立っていた軍人が、刀を抜き出しヴァルヴァの首につける。


「な、なにをしているーー。」

「動かないで!」

ヴァルヴァの周りにいた軍人は、駆け付けようとした瞬間背後からいろんな武器を向けられる。


「お前は、まさか。」

「ああ、そうだよ。」

軍人の服を着た四人は、フードを脱ぐ。


「ホ、ホープ!?」

「よお、町長さん。を下しにきてやったぜ。」


その四人はスノウたちであった。


いったいこの場で、何が起きているのか。

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