第三十一章 英雄は更なる激戦を始める

第百八十七話 再会、更なる敵

スタッ、スタッ、スタッ。

ホープは傷を負いながらもバルドルを倒すことができた。


そして少しずつヴァルハラ城へと近付いていた。



「あれか?ヴァルハラってのは?」


スサッ。

スノウが指差すさきには、黒と深い緑色で建てられた大きな城が。

魔力で覆われているのだろうか、城一帯の空気がドヨンとしている。


「先輩のいう通り多分そうですね、あそこに私たちの目標、オーディンがいる。」

「さっきのオーディンも本物だよね?だとしたら、あたし達が来てることを知りながらも待っている……よほど自信があるんだね。」

「でも、待ってくれてるなら行ってあげないと逆に失礼だよね!セラ達の手でなんとかしないと!」


怪我を負っているものの、ホープはいつもと変わらない明るさが宿っている。



この雰囲気の良さも、彼らの強さの秘訣なのかもしれない。



ガサガサッ!

近くの草木が揺れる。


「この匂いは、まさか!」

「アトレウス!アヤセ!」


ズザッ。

反対側の道からアトレウス隊とホワイト隊が出てくる。


「ああっ、なんとか出会えたな。」

「皆さんすごい怪我、ご無事ってことでいいんですか?」

「大丈夫だよ、僕達はまだ戦えるさ。」

「俺たちの方はオークの集団はいたが、そんな強敵ってほどではなかった。恐らく、ハズレの道を選ばせてしまったな。」


アトレウスは謝ろうとする。


「いいや、アタリの道だったよ。いろんなことを知ることができたからな。」

「……そうか、合流できて嬉しく思う。」


スタッ、スタッ、スタッ。

計12人に戻った彼らは、ヴァルハラへ向かって歩いていた。


「あたし達のターゲット、残りは五神とオーディンか。少しはゴールが見えてきたかな?」

「そうですね、みんなの助けがあってここまでこれてる。しっかりとやり遂げないとですね!……兄さん、どうしました?」

「いや、もしかしたら他のトップのやつとかに出会うんじゃねえかと考えちまってよ。オーディンは慈悲もなく味方を殺す、けど、そんなことはさせねえ。」


ギリッ。

スノウはバルドルを殺したオーディンを許さない様子。


「私たちは、やれることをやるだけです。行きましょう、兄さん。」


数分ほど歩くと、城の近くの広場にたどり着く。



「ここが、ヴァルハラの庭ってところか?」

「そうであろうな、それにこの感覚。」

「ああ、敵が隠れてやがるな。厄介だ、少しでも楽してえんだけどな。」

「ガァァ!!」


ドスンッ!ドスンッ!

複数体のオークが武器を構え走ってくる。



「早速来ますよ!」

「ここは俺たちがやる、ホープは少しでも休息を!」

「行くよ!ホワイト隊!」


ズザッ!

アトレウス隊とホワイト隊が突撃する。


「なあ、俺たちもいったほうが。」

「そうしたいけど、僕達もかなり消耗している。ここはアトレウスさん達に任せたほうがいい。」

「だけどよーー。」


ガゴーンッ!

近くにあった扉が壊され、そこからさらにオーク達が押し寄せてくる。


「どうやら、セラ達を休ませてくれるつもりはないみたいだよ。」

「やるしかありません、皆さん!私たちも戦闘態勢にーー。」

「その必要はないぞ!ホープ!」


シュインッ!

ズシャン!

高速な攻撃が、目の前のオークを倒す。


「っ!?ははっ、まさかの展開だな。」

「そうかい?妥当なところだと、私は思うがな。」

「はぁぁぁ!!」


ズシャン!

大剣が数体のゴブリンを薙ぎ倒す。


「お待たせ!あたし達の弟子達!」


ガシャンッ。

目の前の女性は肩に大剣を乗せる。


「最高のタイミングだぜ、ミーミル!!」


そう、グニパヘリルで別れたミーミル達が合流したのであった。


「ミーミル様達がいるということは、まさか!」

「もちろん、私たちもいますよ!隊長!」


ガゴーンッ!

空からの攻撃が、オーク達を倒す。


「スノトラくん!スクルドくん!」


ヴァルキュリア隊の二人も合流した。

一気に戦力が増強し、人間側の優勢になる。



「ホープ、見ろ!あそこが入口だ!」


アトレウスが指差す先には、大きな門が。


「あそこから、ヴァルハラに行ける。」

「それじゃあ、早くここの敵を倒してあたし達みんなでいこう!」

「いや、こいつらは際限なく生まれてきてる、私たちがそうだった!」


ガゴーンッ!

ミーミルが光魔法でゴブリンを倒す。


「どういうことだ!?」

「ここまでくる道中、たくさんのオークとゴブリンと出会した。しかも、クリスタルになるわけではない、特殊な個体だ。」

「マジかよ、それじゃあどうすれば。」

「方法は一つだ!」


ジャギンッ!

アトレウスが一太刀の元に斬り伏せる。


「ホープ、君らがいくんだ!」

「はっ!?何言ってるんだ、あんたらを置いてけってのか!」

「君たちでないと、オーディンを倒すことは難しい。なら、私たちがここで食い止める!」

「ですが、ミーミル様ーー。」


ヒメノの声をミーミルは遮る。


「私たちも、だ。だから、信じてくれないか。」

「くっ……。」


スノウは考える。

本当に残していくのが最善なのかと。



「……分かった、最速でここに戻る。だから、ここは任せる!」

「ああ、私たちが道を開く!いけ、私たちの希望!」


ガゴーンッ!

ヴァルハラの門までの道のりが開かれる。



「今だ!」


タタタタタッ!

ホープは敵の中を突き進み、門へと一直線。



ガチャンッ!

そして、その門をくぐり抜ける。



「さあ、いいか!みなのもの!ここは、私たちが死ぬ気で守り抜かなければならない。しかし、。いけるな、みな!」

「はっ!!」


アトレウス隊、ホワイト隊、ヴァルキュリア隊、ミーミル軍は進行を食い止めるために全力でぶつかり合った。




ホープ達に、最後の希望が託されたのだった。

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