第百八十六話 神との決着

「ぐはっ、そんな、俺が。」


ボタッ、ボタッ、ボタッ。

多くの血がバルドルから流れ落ちる。


ズザーッ!

スノウは地面に土煙をあげ、刀を口から離す。


シュイーンッ!

ホープの自由を奪っていた能力が解除されたのだろう、彼らの体から黒いオーラが抜けていく。


「良かった、セラ達の体いつも通りに動かせる。」

「ああ、闇魔法が解除されたんだ。僕達はまだ戦えるね。」

「はい、そして……。」


グタリッ。

近くに動かなくなったバルドルの姿が。



「えほっ、えほっ。はあ、今回はかなりやばかったぜ。なあ、バルドル、聞かせろ。」


ズザッ。

スノウはバルドルに近づく。


「セドリックさん、治療しますね。」

「ありがとう、ユキナくん。」


テキパキテキパキ。

ユキナはセドリックを応急処置していく。



「ごぼっ、はぁ、はぁ、ホープ、やるじゃねえか。」

「なあ、てめえらの考えがどうしても理解できねえ。なんで、

「ふんっ、そんなことか。」


バルドルは殺意を完全に失っていた。



そう、自分の死を確信したからだ。



「手を取り合うってのはどんなふうにだ?お前の頭には、俺たち神はどう映っていやがる?」

「そうだな、俺たちよりも賢いそして、力を持った存在だ。」

「ふふっ、そうか。それだけか?」

「俺はな。けど、これは俺の考えだ。人の総意としては、いろいろあるかもな。」


ギリッ。

スノウの拳に力がこもる。


「お前のような奴だけが、人間にいるのなら共存もできたかもな。けど、現実はそんなに優しくない。」

「なるほどね、セラ達はどちらかというと少数派、自分達以外の種族と向き合うことが苦手な人たちも多くいるはず。」

「その通りだ、もちろんそれは俺たちも同じだ。全てを受け入れることは確かに難しい、けど、その努力もしない奴とはどう足掻いても分かり合えない。」


シュイーンッ。

バルドルから完全に闇の力が抜ける。



「人間が弱者であるが故だな。確かに、お前達も苦労してるのは理解できた。だったら、なんで人間を殺すことを進めていった?」

「そうですよ、私たちはあなたの力によって変えられた人やモンスターとたくさん対峙してきた。みんな戦いたくないと言いながら力を振るっていた。」

「それが俺たちのだったんだ。」

「どういうことですか?」


ヒメノの頭にははてなが浮かぶ。


「俺たちには、少し特殊な力が備わっていた。俺の力は、相手の力を奪うもの。もちろん、父上にも力はある。けど、力を持つものはないものからしたら恐怖の対象となってしまう。」

「……、俺たちはお前達神によって力を与えられた存在。けど、この世界の人間はそんな力は持ち合わせていない。俺たちみたいなやつが最初からいたらもしかしたらお前達と対等に話せたかもな。」

「そうかもな、けど実際は違かった。俺たちも、この世界をぶっ壊したいわけじゃない。」


シーンッ。

ホープの六人は考えさせられる。


「だとしても、あたしはまだ納得できないよ。確かにあんた達も苦悩してたとは思うよ。でも、だからって人間を殺していいって理由にはならないんだよ。」

「そうだな、虎よ、それが正しい。俺たちは確かに間違っていた、けどよ、お前達も考えてみろよ。」


バタッ。

バルドルは手を挙げる。


「もし、自分が知らない地にいきなり生まれ落ちて、右も左も分からない時に命を狙われる。……そう、自分とは違う種族にだ。その中で、冷静でいられるか?」

「そ、それは……。」


その場が氷のように凍りついた。



「ははっ、けど俺たち神が正しいってわけじゃない。もっと、最適な方法があったかもしれない、俺たちもお前らのいう弱者だったんだ。」

「お互いを恐れ合うが故に、どちらかを消すことでしか解決できないと考えてしまった。そして、俺たち人間は神を受け入れない、お前達神は力を誇示して付き従うように迫った。お互いに、大きな過ちだな。」

「だけど、その中に一筋の光はあったんだ。」

か。」


その身一つで、オーディン達と対話を成し遂げたアトリ。


そして、彼は息子のミーミルが作る世界を手伝ってほしいとオーディンに頼んでいた。




しかし、その世界は出来上がることはなかった。


では、どこで間違いが起きてしまったのであろうか。



「バルドル、オーディンはなんで一人でこの世界を作り上げようとする?俺たち人間を信頼できないならまだわかる、けど、お前達家族でさえ同格にはいないんだろ?」

「それは、父上はーー。」


バキューンッ!

何か小さい物体がスノウのすぐそばを突き進む。


「うがはっ!」


ビシャッ!

バルドルは血を吐く。


「なんだ!!」

「あなたは、まさか。」

「……オーディン!!」


そこにはオーディンの姿が。



そして彼の手のひらには、魔法を放った痕跡が。


「ああ、父、上。」

「話しすぎだ、バルドル。我とてそれは許しおけん。」

「てめえ、何してんのか分かってんのか!自分の息子だろうが!」

「ふんっ、そんなものにこだわるほど我は暇ではない。」


シュイーンッ!

闇の中にオーディンは消え去る。



「くそっ!」

「スノ、ウ。」


バルドルは弱々しく手を触れる。


「なんだ?」

「父上、を、たの、む……。」


ピキピキピキッ!

パリーンッ!

バルドルは全身にヒビが入り、広場から消え去る。



「……、お前のことは許せねえよ、バルドル。……けど、もし違う世界線でお前に会えたら一緒に戦う仲間だったのかもな。」

「お兄。」

「遠い世界から見ておけ、バルドル。俺たちの活躍は、空のてっぺんから地の果てまで轟かせてやる。罪を償いながら、ゆっくり休め。」


スザッ。

ホープは傷を負いながらも広場を進む。




バルドルとの決着はここに極まれり。


第三十章 完


◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


第三十章まで読んで頂きありがとうございました。


ホープはバルドルを倒すことに成功。

そして、彼らの心に忘れられない存在となった。

彼らのオーディンを倒す決意はより強固なものに。


スノウ達の今後を気になってくれる方!

次の敵は! まだまだ戦いは終わらない!!

ホープの六人を応援してるぞ!


と思ってくださいましたら、

ぜひ、レビューや★評価とフォローをお願いします!


ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!



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