第百八十五話 結集する力

「少しの間だったが、なかなか楽しめたぜ!さあ、ホープの力、早く俺のものにさせてくれよ!」

「そう簡単にくれてやるわけにはいかねえんだよ!俺たちの帰りを、待ってくれてる人たちがたくさんいるんでな!」

「俺の力に勝てるとでも思ってるのか?この力差で!」


ガゴーンッ!

闇の力はさらに強まる。


「まだ、まだやれる!セラ達のこれまでの苦労を考えたら、これくらいで折れるわけにはいかない!」

「はっ!結局は父オーディンの手のひらで踊らされてた人間が、神に歯向かうなんて無駄なことなんだよ!」

「無駄なもんか!ギムレーは人間の世界だ、人間の世界は人間であるセラ達が作り上げていく!そのために、あんた達を倒す!!」


ピキーンッ!

スノウ、リサ、セラにヒメノから感覚共有シンクロが送られる。


「おいおいマジかよ、まあ、迷ってる暇はねえよな!」

「はい、私たちならできます!すぐに始めます、3、2、1、散会!」


ブワッ!

四人は一斉に別れて走り出す。


「ふんっ!まだ何か隠してやがるな、いいぜ!全て打ち砕いてやるよ!!」


バゴーンッ!

複数の闇の弾丸を放つ。


「ユキナくん!頼む!」

「任せてください! 私の手となれ! 蒼い波動アズールウェーブ! 鮫派五式改コウハゴシキカイ! 逆槍防護陣サカヤリノボウゴジン!」


ズシャーッ!!

槍を地面に刺し、ユキナとセドリックを守るように水の波を発動する。


ガギーンッ!ガギーンッ!

その波は闇の弾丸を弾く。



「よしっ!ここでいくよ!セラチン!」

「うん!二人の力を合わせるよ!」


ドゴーンッ!

セラとリサは力を最大限に発揮する。


「はぁぁぁ!! 敵を焼き斬れ! 猛獣ビースト! 赤虎上式シャッコジョウシキ! 猛獣突撃ビーストキラー!」

「いくよ! 轟雷充填スパークチャージ! 希狼派十式改キロウハジュウシキカイ! 轟雷刃剣ゴウライジンケン!」


ボォォォ!!!

バリバリバリッ!

炎の獣と、雷を纏った巨大な刀がバルドルを狙う。



「ふんっ!こんなものでやれるとでも思うか!」


ガゴーンッ!

闇の魔法が二人の攻撃を防ぐ。


「押し負けしちゃダメだよ!リっちゃん!」

「もちろん!」


ガゴーンッ!ガゴーンッ!

二人の攻撃はバルドルの意識をスノウとヒメノから逸らす。


「ううっ、流石にきついか。」

リサは片手で長剣を振るっている。


故に、疲労はピークに達していた。


「はははっ!虎はもうもたなそうだぜ!」

「セラはまだまだいけるよ!はぁぁぁ!!!」


バゴーンッ!

さらに雷の威力が増す。


「ふんっ!ならお前から終わらせてやるよ!ぶっ飛べ!」


ガゴーンッ!

闇の力をセラの方に強める。


「うわぁ!」


ズザーッ!

セラが吹き飛ばされる。


「セラチンっ、げほっげほっ。まだ、まだぁ!!」


バゴォォ!!

さらにリサも力を強める。


「お前も往生際が悪い!ここで終わらせーー。」


シュンッ!

バルドルは空に一つの姿を捉える。



「いくぜ!バルドル!」

「はっ、わざわざ空からとはな!来いよ!スノウ!」


シューンッ!

闇魔法がスノウに迫る。



ガゴーンッ!

「うあっ!」


闇魔法は両手に直撃。


「ははっ!勝ったぞ!」




ここで、バルドルの頭に疑問が浮かぶ。


(なぜ両手が空いてる?あいつは刀を持ってたはず、戻した形跡もない、どういうことだ?)


「悪いな、いくら作戦とはいえ。」

「大丈夫です。私には、足があればいい! 焔槍バーンランス! 翠廻槍サイクロンランス! 同時展開! 紫鷹上式シオウジョウシキ! 火炎烈風脚カエンレップウキャク!」


ブォォ!!

ヒューッン!

スノウの背後から、炎と風の竜巻が生まれスノウを覆う。


「ちぃ!あの手は、鷹のものか!」

「そうです!けど、あなたを倒すにはこれしかない!お願いします!兄さん!」

「おう!」


シューンッ!

風に乗りバルドルへ向かい直滑降。


「そんなもので!」


シューンッ!シューンッ!

闇の弾丸がスノウを狙うが、竜巻にかき消される。


「ちっ!なら、これでどうだ!」


シュイーンッ!

バルドルは両手で闇喰獣カーズイーターを放つ寸前。


「やらせません!セドリックさん!」


ガシッ。

ユキナはセドリックの体を支える。


「ああ! 完全上限解放フルバースト! 開始オン! 戦騎術センキジュツ! 肆ノシノツギ! 豪刃光波ゴウジンコウハ!」


シュインッ!

ズシュンッ!

光の斬撃がバルドルの右手を吹き飛ばす。


「うぐっ、まだまだ!」

「あたしも忘れないでね! 赤虎中式シャッコチュウシキ! 猛虎双爪撃モウコソウソウゲキ!」


ズシャン!

虎の爪のような一撃が、左手を弾き飛ばす。


「うぐっ、こんな奴らに!」

「いけ!スノウ!君の力を!!」


シューンッ。

さらに加速してバルドルに迫る。



「ぐっ、まだだ!てめえらでは、俺を殺せねえ!」


ギョロリッ!

ヒューンッ!!

あろうことか、目を大きくかっぴらき、闇魔法を展開する。


「ちっ、まだやるかよ! 凍魔晶付与ブリザードエンチャント! 白狼初式ハクロウショシキ! 雪月花セツゲツカ!」


バゴーンッ!

ガギーンッ!ガギーンッ!

氷の刃で闇魔法を弾き飛ばす。



しかし、闇喰獣カーズイーターを弾いたことにより、両手は使えない。


「うぐっ、くそっ。力が入らねえ。」

「はははっ!!今度こそ勝った!さあ、俺に屈するんだな!」

「へっ、まだだ!」


ピキーンッ!

セラに感覚共有シンクロを発動。



「うっ、任せて。これが、セラの全力!!」


ビリリリリッ!

セラの刀に雷が纏われる。


「届けぇ!!」


シュンッ!

ブォォ!!

その刀はスノウに向け投げられる。


「なにを!?」

「俺の妹は、本当に最高だぜ、セラ!!」


ガシッ!

スノウは投げられた刀を口で咥える。



「終わりだぜ、バルドル!」

「ぬぁぁぁ!!スノウ!!」


ガゴンッ!

バルドルは口を開き、口からも闇魔法を放とうとする。


「遅えよ、この戦いはここで終わらす!」


バキバキバキッ!

雷の刀に、氷も纏われる。


「死ねぇ!スノウ!」

「てめえは、永遠に覚めない夢でも見てな! 重ね狼派カサネロウハ! 神狼獣の鋭牙フェンリルノエイガ!」


ビギーンッ!

ワオーンッ!!

スノウは一匹の白と黒が混ざった狼のように見える。


「うぐっ、これが、狼の力ーー。」

「違うな、姿!!」


ヒューッン!

ズシャン!

スノウの一撃は、バルドルを口から真っ二つに斬り裂く。



「うぐ、ぁ、ぁ。」


ボワーンッ!

闇の力が途端に消え去る。



辺りの広場は、元の自然豊かな地へと戻る。



戦いの決着は、すぐそこに。

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