第四十話 恐怖との対面、友達?
「セドリック。」
「アクセプト。なんでここにーー。」
セドリックは剣に手を伸ばす。
「待てよ、俺たちは争うつもりはない。」
「それを信じろと?アクセプト、君の目からはビフレストのことを許さないって気迫を感じるよ。」
ビフレストで、セドリックの連れたヴァルキュリアが争いを起こした場面が思い起こされる。
「ああ、それについては1ミリも許すつもりはねえよ。」
カチャッ。
セドリックは剣を抜こうとする。
「けど、あれはお前の本意じゃねえだろ。」
「っ!なんで。」
セドリックは剣を納める。
「セドリック、お前は頭が切れるんだろ。今戦うのがどんだけ意味のないことか分かりきってるだろ。」
「そうだね。アクセプトの言う通り、今は争うべきではない。」
戦場になりかけたその場は、安寧を取り戻す。
「ところで、なぜ君たちホープがこんなところに?」
「ヴァルキュリアの隊長が来るって話を聞いたからな、ちょっと確認したかっただけだ。」
「僕のことかい?それとも、前隊長のことかい?」
「前隊長?」
ガタッ、ガタッ、サッ、サッ。
スノウ達が話している場に、一つの集団が近づく。
「ああ、ここにいたのかリーンベル隊長。」
集団の中央に位置する馬車から、一人の男が降りてくる。
「お久しぶりです、デュポン前隊長。」
「前隊長、こいつが……。」
この瞬間、ホープ四人それぞれの力が反応する。
(なんだ、この最悪な感覚。あいつから、最悪なオーラが出まくってる。)
スノウは目が鋭くなる。
(何、あの人。体の至る所に宝石つけてすごい音、それもかなり高価なもの。あんなにどこから……。)
ヒメノは足に力が入る。
(何、あのモヤモヤは。あたしにしか見えてないと思うけど、あの人の周りには不穏な気配がダダ漏れてる。)
リサは歯を食いしばる。
(なんですか、この異臭は。血よりももっと酷い、この世のものとは思えない何かをあの人から感じる。)
ユキナは拳に力が入る。
「にしてもリーンベル隊長、こやつらはなんだ?新しい部下か?」
「っ!」
ホープの四人が一斉に動き出そうとする。
武器に手をかけながら。
「彼らは!僕の友人です!」
四人の動きを止めるかの如く、大きな声でセドリックが話す。
「ゆ、友人?」
スノウ達はきょとんとする。
「ほう、こんなところに友人がいたのか。」
「はい、ただ今回は偶然出会っただけです。目の前のアクセ……スノウとは久しぶりに会えました。」
「なるほど、だからわざわざこの町まで来たと。君も、物好きだね。」
デュポンは馬車に戻り、
「まあ、せいぜい僕の邪魔はしないでくれよ。」
集団はその場を去る。
殺気の目立った空間が、徐々に和らぐ。
「セドリック、どういうつもりだ。いつの間に俺たちはお前の友人になったんだ。」
「君らこそ、その感情むき出しにするのをどうにかできないのか。僕が止めなかったら、彼を殺しかねなかっただろ。」
「そ、それは。」
四人は反省する。
「まあ、これはこの前の借りを返しただけだ。」
「借りですか?私たち、セドリックさんに何か貸しましたっけ?」
「ビフレストのことだよ。あの場で、ヴァルキュリアのゲイルを止めてくれなかったら、僕らは罪のない人を殺してしまう所だった。」
セドリックは頭を下げる。
「本当にありがとう。」
「貸し借りなしなんだろ。頭下げるなっての。」
「そうですよ!セドリンが助けてくれたからあたし達も無駄に人を傷つけなかったんだし!」
「セ、セドリン??」
セドリック隊とホープは同じ宿屋に向かう。
「なんだ、同じ宿かよ。」
「そうだよ、この町の宿屋はここだけだからね。」
「隊長!!」
セドリックの元に隊員が走り寄る。
「どうした?」
「酒場から協力要請です。この近くに、トレントが異常発生してるみたいです。」
「トレント、木の姿をしたモンスターか。分かった、我々ですぐにーー。」
「ちょっと待ってくれよ。」
スノウが話に割って入る。
「なんだい?」
「この要請、俺とお前でいかないか?セドリック。」
「な、何を言って。」
「友人、なんだろ。だったら、少しくらい付き合ってくれよ。」
スノウはセドリックとの行動を申し出る。
「兄さん!いきなり何言ってーー。」
「分かった。僕と君で行こう。」
「た、隊長!?」
セドリック隊の隊員と、ヒメノ達は慌てる。
「モンスター退治ってことだろ、二人もいれば十分だろ。」
「そうだな、万が一町に被害が出ても行けないから戦力は残しておきたいし、僕とアクセプトで行ってこよう。」
「わ、分かりました。先輩もセドリックさんもお気を付けて。」
スノウとセドリックは西門からトレントの場所へ向かう。
辺りは木が多く生えており、花や草も多く生えている。
「で、何が目的だい?」
「そうだな、今の所二つある。」
スノウとセドリックは歩き続ける。
「一つ目は、なんで俺たちの感情が読めたのか。」
「まあ、気になるだろうね。もう一つは?」
「もう一つは、お前が言ってた……エデンについてだ。」
スノウはセドリックと向かい合う。
エデン……これは一体何を指すのか。
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