第四十一話 背中を預けられる者

「いいよ、その質問答える。」

「あっさりとしてるもんだな、もっと警戒しないでいいのか。俺は、一応お前のだぞ。」

「事実はそうだね。……けど、これが僕の信念だ。」

セドリックはまっすぐスノウを見つめる。


「一つ目の感情についてだけど、これらは君らの能力に近いよ。僕は、危険感知アラートといって、周りの人の感情や瞬間的な殺意とかを感じ取れるんだ。」

「俺たちの第六感とかと同じ?なら、お前もトップなのか?」

「いいや、僕はだった。訳あって離脱したけど、能力は手に入れてしまったってのが僕という存在だね。」

セドリックはスノウ達と近しい存在ということが発覚した。



「そしてもう一つ、エデンについてだね。エデンとは、僕の先生が目指した世界、のことだ。」

「どういうことだ?お前とかその先生が王にでもなるのか?」

「いいや、そこは重要じゃない。この世界には、人が人に虐げられる状況が残っている。……それを僕は無くしたいんだ。」

セドリックはスノウに近づく。


「アクセプト、君もその目で見たんじゃないか?人が人を虐げている瞬間を。」

「……、全くない、とは言えねえな。」

「それがこの世界の真実だ。それを僕は変えたい。……これくらいでいいかい?」

「ああ、そろそろ敵さんもお出ましだしな。」

スノウ達の周りに5mはあるであろう、人のように歩く木のモンスター、トレントが動き回る。


「いい話を聞けた、その礼として俺が二倍働いてやるよ!」

「貸を作るのは嫌いなんだ、五分五分でいこう。」

「この堅物やろう、まあ、どっちが早いかだけどな!」


スノウは刀を構え突撃する。


狼派六式ロウハロクシキ! 裂羅サクラ!」

二刀を構えた乱れ斬りがトレントを襲う。


「さすがだね、なら! 戦騎術センキジュツ! イチ! 一閃イッセン!」

セドリックは構えた直剣で、一直線にトレントをなぎ払う。


(あれがセドリックの技か、確かに俺らと似てるな。)


スノウとセドリックは背中を合わせる。


「なあセドリック、聞いたことはあるか?敵の敵はなんて言うか。」

、だろ。」

「そういうこと。後ろ、突破されるなよ!」

「誰に言ってるんだい!」

スノウとセドリックは敵同士とは思えない連携で、トレントを着実に倒していく。


氷付与アイスエンチャント! 狼派二式ロウハニシキ! 蒼波ソウハ!」

氷の斬撃が四発飛んで行く。


「キシャァァ。」

トレントは氷漬けになる。


戦騎術センキジュツ! サン! 螺旋斬糸ラセンザンシ!」

セドリックの回転斬りが氷ごと斬り壊す。


(あの技、俺にも。)


ピキーンッ!

スノウの記憶が呼び起こされる。


狼派五式ロウハゴシキ! 円陣狼牙エンジンロウガ!」

スノウは刀を構えクルクル周りトレントを斬り刻む。


10体以上いたトレントは跡形もなく消える。


「さすがだね、これがトップの力か。」

「まあな、お前も十分俺らと張り合えるレベルだろうけど。」

二人は町に戻り始める。


「アクセプト、僕も一つ質問いいかい?」

「なんだ?」

「ビフレストで聞いてきたね、僕のとは何かって。君にとっての正義はなんだい?」

ビフレストでスノウがセドリックに問い詰める場面が思い起こされる。


「そうだな、正直まだ探し求めてるところだ。……まあ、。今はそんなところだ。」

「そうか、噂通りの人間みたいで嬉しいよ。」

「噂?どこのだ?」

「君たちが今まで通ってきた町や村からのだよ。」

スノウとセドリックは本当の友のように話しながら歩く。


「そうだ、もう一つ聞きたいことがあった。行動しているトップは君ら四人だけなのか?」

「そうだな、俺たち四人でホープとして動いてる。」

「そうか、じゃあ僕が出会った彼女は関係ないのかな。」

セドリックは腕を組み考える。


「彼女?誰のことだ?」

「たしか、さんとか言ってた気がーー。」

「セラリウム!?お前、その名前どこでーー。」


カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!


ブレイザブリクの方から警告の鐘の音がする。



「なんだ!?町の方か?」

「モンスターかもしれない!アクセプト、話は後だ!戻るぞ!」

「分かってるよ!」

二人は町に全速力で戻る。




鮫派三式コウハサンシキ! 破甲槍ハコウソウ!」

ユキナは槍の波動でトレントを吹き飛ばす。


虎派一式コハイッシキ! 猛虎モウコ!」

そのトレントをリサが叩き斬る。


「なんで町の中にモンスターが!」

「分かりません、けどなんとかしないと町の人たちが!」

「ヒメチン、町長の方に向かったけど無事だよね?」



「全体!隊列崩すな!各個撃破でいけ!」

「了解!」

セドリックの部隊もトレントを迎撃する。



「た、助けて!」

一人の男がトレントから逃げる。なぜか、ボロボロの肌着の姿で血を流しながら。


鷹派六式オウハロクシキ! 嘴閃シセン!」

トレントはヒメノの空からの連続蹴りで倒される。


「あ、ありがとう。」

「大丈夫ですか!治療しないと……っ!この怪我、トレントのものじゃありませんよね。」

「こ、これは。」

男は言葉を詰まらす。


「教えてください!何が起きてるんですか?」

「い、言えない。言ったら、殺される。」

「え?それって、どういうことーー。」

ヒメノが聞こうとした途端、


「ほらほら!早く働け!このクズども!」

デュポンが馬車から男達を放り出し、丸腰でトレントに向かわせる。


一体この町で何が起こっているのだろうか。

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