第七章 英雄、選択は二つに一つと知る
第三十九話 再会、新たな影
ホープ達四人は、ブレイザブリクに向けて進んでいた。
「ヴァルキュリアの隊長って、確かビフレストで会った男の人だよね?」
「確かそうですね。そういえば先輩、あのセドリックさんって人と何か話してましたよね?」
四人は平和な旅を迎えている。
そして、久しぶりにほのぼのした風景が広がる。
「ああ、少しな。あいつに思うことがあっただけだ。」
「思うことってなんですか?兄さんと似てたとか?」
「そう言うのじゃねえんだが、なんか第六感で思うところがあった。うまく説明できねえんだけど。」
スノウはビフレストで話したことを思い出す。
「僕の正義は……みんなが公平に生きられる世界を作ることだ。それは、エデンに至る。」
これがセドリックが残した言葉。
(エデン、なんか引っかかる。)
スノウはこの答えを知るためにブレイザブリクに向かおうとしているのだ。
「まあ、スノウの頭じゃ上手い説明なんてできるわけないよね!」
「あ??おい、リサ、それはどう言う意味だ?」
「そのまんまの意味だけど〜。」
「お前もただの脳筋だろうが!」
二人が言い合いを始める。
「誰が脳筋だって!!」
「ヴァルヴァの家のあんな頑丈なドアを、ヒョイっと持ち上げるやつが脳筋以外のなんだってんだよ!」
「そのおかげで無駄に破壊する必要なかったんでしょう!」
「兄さんも、リサさんも落ち着いてください!」
ヒメノが仲介する。
少し離れたところから、水の音が聞こえる。
「みなさん!見えて来ましたよ!」
ユキナが指差す先に、周りを川で囲まれた町、ブレイザブリクが見える。
「意外と近いんですね、ほら、兄さん達喧嘩してないで行きますよ!」
「はーい、ユキチンに癒されてから行きます〜。」
「ひゃっ!ちょっと!」
リサはユキナに抱きつく。
「スノウにいじめられたからユキチンで回復中〜。」
「リサさん!どさくさに紛れて色んなところ触らないでください!」
「あはっ、バレた!」
「ほーら!早く行きますよ!」
四人はブレイザブリクに入る。
★ブレイザブリク……川に囲まれた町で、多くの畑や家畜が育っており田舎の雰囲気を持っている町。子供から老人まで多くの人が住んでいる。
「今まで行った町の中で、一番のどかな場所だな。」
「そうですね、ここにヴァルキュリアの隊長さんがいるって何かあるんですかね?……あれ?ヒメノちゃん?」
「可愛い羊さん〜もふもふ〜。」
ヒメノは羊を撫ででいる。
「まさか、ヒメチンがまとめ役とは思えない行動に!」
「そういや、ヒメノは動物が大好きだったっけな。」
「意外な一面です。」
三人はヒメノを見つめる。
「っ!あ、す、すみません!い、行きましょうか。」
「別に、もう少し遊んでてもいいんだぞ。」
「大丈夫です!」
四人はまず宿屋に向かう。
「旅のお方ですね。あいにく二人部屋が二つになりますがよろしいでしょうか?」
「へっ?」
女性陣三人は戸惑う。
「ああ、それで頼む。」
「かしこまりました。お代は町を出発される時で大丈夫ですので、202と203号室になります。」
「ありがとな。」
スノウは何事もなかったかのように鍵を受け取る。
「ちょっと待って!」
リサがスノウを呼び止める。
「うん?どうした?」
「兄さん、一応聞くんですが誰と誰が同じ部屋か考えてますか?」
「え、特に考えてねえよ。誰でもいいだろ。」
三人はため息をつく。
「これだから先輩は。」
「どうする?二人が嫌だったらあたしがスノウとーー。」
「いやいや、ここは兄妹の私がーー。」
「いえいえ!私も全然構わないです!」
三人の小さな戦いが始まる。
「じゃあ、公平にじゃんけんでどう?」
「分かりました。いきますよ、じゃんけん、ほい!」
外は快晴。自然豊かなブレイザブリクには心地よい風が吹いてた。
「そろそろ行くか。準備いいか?」
「うん!いつでもいいよ!」
部屋はスノウとリサ、ヒメノとユキナが同室となった。
「なんか落ち着く町だよな。余生ってやつをここで過ごしたがる人の気持ちも理解できそうだ。」
「こんな町でヴァルキュリアは何してるんだろう?」
「さあな、観光に来てるわけでもねえだろうしな。」
スノウとリサは部屋を出る。
「あ、兄さん、リサさん。」
「これで集まりましたね。早速、見てまわりましょうか。」
四人は合流して外に出る。
「とりあえず、町長に会いに行くか。」
「そうですね。あ、そうだ。先輩、宿屋の人から地図もらって来ました。」
「おお、ありがとな。さすがユキナだな。」
地図を見て町長の家を見つける。
「町の真ん中にあるみたいだね。」
「みたいだな、行ってみるか。」
四人が歩き出そうとした瞬間。
(ん?この感覚、どこかで……。)
スノウが右側を振り向くと、
「ここが、前ヴァルキュリア隊隊長のデュポンさんがいるところみたいだ。」
「セドリック隊長が自ら動かなくても良いのでは?」
「いや、ちょっと僕も調べたいことがあってね。」
スノウ達の右側からビフレストで会った、セドリックが歩いてくる。
「お前は!」
「ん?っ!君は。アクセプト。」
この再会は何を意味するのか。
歯車がまた動き始める。
♦︎♦︎
「このケダモノが!僕の邪魔するなよ!」
「も、申し訳ございません。」
バチンッ!バチンッ!
鞭を打つ音が響く。
「こいつは牢屋に入れといてね。」
「はっ!かしこまりました!」
鞭を持った者は部屋を出る。
「まったく、ここは僕の町だ。歯向かう奴は、どうなるか抑えてやらないとな。」
その者はニヤリと笑う。
またしてもスノウ達に不穏な気配が迫っていた。
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