第百十一話 新種と望まぬ再開

「はぁぁ! 虎派六式コハロクシキ! 円虎玉砕エンコギョクサイ!」

「どいて! 鮫派二式コウハニシキ! 断空槍ダンクウソウ!」


ザシュンッ!ガギーンッ!

リサのパワーが乗った回転斬りと、ユキナの風を切る貫通技が炸裂。


「やっぱり数が多いね、ヒメチン!お願い!」

「はい! 風槍ウインドランス! 展開! 鷹派八式オウハハチシキ! 竜巻タツマキ!」


ゴォォー!!

ヒメノの蹴りが巻き起こした竜巻が複数のゴブリンを巻き込む。


「ウギャァ!」

「さすがヒメチン! 敵を貫け! 火龍レッドドラゴン! 虎派七式コハナナシキ! 激龍爪ゲキリュウソウ!」


ボォォ! ザシュンッ!

火を纏った龍の爪のような一振りが、竜巻ごとかき消す。


ポトッ。ポトッ。

所々にクリスタルが落ちる。


「リサ!敵の数は分かるか!?」

「ぱっと見でも、30体はくだらないよ!」

「おいおい、戦争かっての。」


ザシュンッ!ドガンッ!

ホープ達は着実にゴブリンの数を減らしていく。


「ゴォァ!」

ドゴーンッ!


一際大きな地響きと共に、一体のオークが出てくる。

今まで見たことのない、新種だ。


全長4mはあるだろう、全身にトゲトゲ防具を着て、片手には斧を、もう片手には槍を持つ。



「お兄!なんか、今日のコースメニューの前菜が出てきたみたいだよ!」

「まだまだメインディッシュは遠そうだな。ユキナ!俺と来い!」

「はい!」


ダダダダダッ!

スノウとユキナは新種のオークに向けて突撃する。


「グォォ!」


ブンッ!

大きな斧を縦に一振り。


「おっと!」


バゴーンッ!

地面はひび割れ、風圧で二人は少し飛ばされる。


「馬鹿力すぎんだろ。少なくともリサよりは上だな。」

「あっ??聞こえてますけど!」

「やべっ、ちゃっちゃと終わらす! 狼派七式ロウハナナシキ! 餓狼撃ガロウゲキ!」


ガギーンッ!

力強い一振りが斧で受け止められる。


「かなりタフだな。けど! 氷付与アイスエンチャント! 狼派八式ロウハハチシキ! 氷華ヒョウカ!」


カチカチカチッ!

刀に生まれた氷が斧ごと包んでいく。


「ウゴォ!?」

「大きい分、当てやすいですね! 鮫派三式コウハサンシキ! 破甲槍ハコウソウ!」

「グガァ!」


ドデーンッ!

槍の衝撃波によって、新種のオークは吹っ飛ぶ。


しかし、ダメージは大して通っていないようだ。


「ウゴァ!」

オークは槍を投げ捨て、拳で迫ってくる。


「脳筋が!」


ガギーンッ!ガギーンッ!

二人は攻撃をうまく捌く。


「クガァ!」

大きく右拳を振りかぶる。


「隙だらけだ! 狼派五式ロウハゴシキ! 円陣狼牙エンジンロウガ!」

「合わせます! 鮫派九式コウハキュウシキ! 鮫牙旋槍陣コウガセンソウジン!」


ザシュンッ!

スノウの回転斬りと、ユキナの投げた回転した槍が右手を斬り落とす。


「ウギャァ!」


ドスンッ!ドスンッ!

痛みで暴れ出すオーク。


「うおっと、危ねえな。」


スサッ。

二人は距離を置く。


「どうしますか、先輩?」


ピキーンッ!

二人の頭に電撃が走る。


「これ、いい案じゃねえか?」

「はい、やってみる価値ありですね!」


カチャ。

二人は武器を構える。


「先輩!乗ってください! 開け!水面ウォーターサーフェイス! 鮫派八式コウハハチシキ! 水刃牙スイジンガ!」


バシャンッ!バシャンッ!

複数の水の斬撃を生み出す。


「ああ! 氷付与アイスエンチャント!」


カチカチカチッ!

スノウの足を氷が纏う。


スタッ。

そのまま投射された水の斬撃に乗る。


「ウギャ。」

オークは水の斬撃を必死に弾く。


その視線の先に、スノウが映る。


「ヒギャ!?」

「気付くのが遅かったな! 氷付与アイスエンチャント! 狼派十式ロウハジュッシキ! 氷山一角ヒョウザンノイッカク!」


グルンッ!グルンッ!

体ごと回転させ氷のドリルのようになりオークを突き刺す。


「ウギャァ!!」

「これで終わりです! 纏え! 水面ウォーターサーフェイス! 鮫派十式コウハジュウシキ! 水槍乱舞スイソウランブ!」


スノウの後方から、水を纏った槍でユキナが突撃してくる。


「はぁぁ! 氷水滅波コキュートス!」


ザシュンッ!

二人の攻撃はオークを貫く。


ポトンッ。

オークは、初めて見るドス黒い赤色のクリスタルとなる。


「ナイス!ユキナ!」

「はい!」


パチンッ!

ハイタッチの音が響く。




「はぁ! 虎派八式コハハチシキ! 虎牙剛斬コガゴウザン!」


ザシュンッ!

リサの重い縦斬りが、一体のゴブリンを倒す。


「あっ、お兄とユキちゃん倒し終えたみたいだね。」

「さすが、あたし達も負けてられないね!」

「もちろんです!行きますよ!リサさん!セラさん!」


他三人も敵を順調に倒していく。


「まだ斥候ってところか、セドリックはどこにいる?」


ザシュンッ!

着々とゴブリンの数は減っていく。



「っ!?何か空から来ます!かなり大きな音がーー。」


ズーンッ!

スノウ達はゴブリンやオークとは違う大きなプレッシャーを感じ取る。


「何だ?この変な感じは?」

「っ!!見て!空!」


ファーッ。

何かがふわふわと空を浮かんでスノウ達に迫ってくる。


「奇妙な感じはしますが、この感覚、私たちは知ってる。」

「ああ、間違いない。あいつだ。」



スノウ達はふわふわ浮いているものを見つめる。



「そこにいるんだろ!セドリック!!」



ズサッ、ズサッ、ズサッ。

セドリックがゆっくりと顔を出す。


「ホープ。」

「来やがったか、セドリック。」


ホープとセドリックの間に冷たい空気が流れる。

数日前まで共に背中を預け合い、その身を守るため、誰かを守るために戦った仲間との望まぬ戦いが始まろうとしている。


彼らは誰も望まぬ形で、対面を果たしてしまった。



彼らの運命は……。

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