第百十二話 仲間との決戦
フワッ、フワッ、フワッ。
セドリックは空に浮かぶ雲のようなものに乗っている。
ホープは彼の姿を見上げる。
「スノウ・アクセプト率いるホープに王国から勅命が下っている!今すぐ投降しろ!そうすれば、無駄な被害を生まずに平和にことを終わらすことができる!」
セドリックの苦しみながらも、声を張った言葉は全員の耳に届く。
「へえ、それじゃあ国王様の言う平和とは何なのか教えてくれよ!返答次第じゃ、考えなくもないぜ!」
スノウも同等の力のこもった言葉で返す。
大きな違いとして、彼の目にはとても強い意志が宿っていた。
「このギムレーを我らが国王、オーディン様が全て統治する。そうすれば、無用な殺傷が起きずに誰も苦しむことがなくなるのだ!」
「本当にそうか?俺の目には、ただ平和に暮らしてる人間を殺していった五神が映ったぜ!それのどこが平和だと?」
「あれは……必要な犠牲だったのだ。一つの国を作るには、危険因子は先に詰んでおかなくてはならない!」
「必要な犠牲?……ふざけてんのか!!命は誰にだって平等にあるものだろうが!優劣をつけた挙句に、無くなった命のことを必要な犠牲だ?そんな奴に従うほど、俺たちはバカじゃねえ!」
ジャキンッ!
スノウは刀を構える。
「スノウ、やはり君は戦う道を選ぶんだな。」
「当たり前だ!俺たちは、今を生きてるんだ!誰かに操作されながら一生を終えるつもりはない!俺たちは、俺たちの信じる道を突き進む!」
「……、やはりこうなるんだな。でも、覚悟は出来ていた、いくぞ。」
ブワンッ!ブワンッ!
セドリックはクリスタルを投げ、その中から先ほどの新種のオークが二体出てくる。
「ゴァァ!!」
ドスンッ!ドスンッ!
二体のオークが着地した地面はひび割れる。
「さあて、メインディッシュの登場だ!いくぞ、ホープ!」
「了解!」
ダダダダダッ!
ホープはセドリック及びオークに向けて突撃する。
(ホープで厄介な存在、それは、セラくん。)
ズンッ!
セドリックは雲のようなものから飛び降り、セラ目掛け一直線。
「っ!?セラ!」
「まさかのセラ狙い!?」
チャキンッ!
セラはセドリックに刀を向ける。
「セラくん、すまない。
「セラなら倒せるとでも?
バギーンッ!
セドリックとセラの重い一撃がぶつかり合う。
「くっ、セラ!」
「グォォ!!」
「ちっ!」
ズザーッ!
スノウはオークに道を遮られる。
ガチャガチャガチャ。
刀と剣が鍔競り合う。
「セドくん、セラに惚れたの?お兄に行くかなと思ってたから予想外だったよ!」
「そんなことはないさ、君なら、もしかしたらーー。」
「そんな否定されると、少し傷つくんだけど!」
バギーンッ!
二人は距離を取る。
「セドくん、さっきのは本心じゃないよね?」
「ははっ、そう思われると思ってたよ。僕は、間違えていたんだ、なんのために戦うべきか、何を信じるべきだったのか。」
「そんなの、今から正せばいいんだよ!人間は、たくさん間違えて成長するんだから!」
「ああ、君は本当に優しくて強い戦士だな。そんな君にだから、僕は任せたい。」
ジャキッ。
セドリックは剣を構える。
「セラに任せる、それって、もしかしてーー。」
「ああ、僕を、止めて(殺して)ほしい。
「……ええ、分かってるよ。セラが必ず、止めて(救って)みせる!
バギーンッ!バギーンッ!バギーンッ!
セラとセドリックは激しい攻防を繰り広げる。
二人の周りには、地面の凹みや壁に傷が生まれる。
「ウゴォ!」
「じゃまだ!
ズシャン!ズシャン!
スノウの連続斬りがオークを襲う。
「兄さん!手伝います!
シュンッ!シュンッ!シュンッ!
空からの連続蹴りがオークに傷をつける。
「ウギャァァ!!」
ブンッ!ブンッ!
もう一体のオークは、両手に持つ斧と槍を振り回す。
「あんたに構ってられないの!
「リサさん!冷静に!
ズシャン!ジャキンッ!
リサの斬り上げとユキナの回転斬りがダメージを加える。
セドリックに向かう道を、二体のオークが遮っている。
これは意図して起こされたとすら感じられる。
「セドくん!まだ間に合うよ!セラ達とまた一緒に旅をしようよ!」
「僕は、僕は王国を裏切れない!王国に全てを捧げたんだ!」
「だったらなんで、なんでそんなに苦しそうなの!セドくんが本心から従ってるなら、もっと自信を持てるでしょ!」
「そ、それは……、だけど。僕は、僕は王国の兵士として戦わなきゃいけないんだ!」
バギーンッ!
二人は少し息をつく。
「セドくん、なんで一人で抱え込むの?セラ達はそんなに信用できない?」
「そんなことはない!ただ、そっちに行けない理由があるんだ。」
「だったら!セラ達にその重荷を分け合ってよ!一人で背負いきれないなら、分け合えばいいんだよ!」
「っ!?」
セドリックの心に迷いが生じる。
このまま甘えてもいいのかと……。
(さあて、そろそろ始めようか、リーンベル隊長。)
「う、まさか、待ってくれ。」
「セ、セドくん!?」
「に、逃げて、くれ、セラ、く、ん。」
ドゴーンッ!
セドリックの周りを闇が渦巻く。
「な、なに!?」
「う、あ、あ、うぁぁぁ!!!!!」
一体何が起きているのか。
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