第百十四話 対話、真実
シューンッ!
スノウはセドリックを掴みながら村から離れる。
「スノウ!!」
「セドリック!!」
ガギーンッ!
二人は距離を取る。
(スノウ、ありがとう。これで僕は、闇に溶けても……。)
ドゴーンッ!
セドリックは更に闇の力を増幅させる。
「セドリック……くそが!やってやるぜ!
シュバンッ!シュバンッ!
大きな氷の斬撃が飛び交う。
「ぐぉぉ!!」
バキンッ!バキンッ!
それをものともせずセドリックは突撃してくる。
「はぁぁ!セドリック!!」
ガギーンッ!ガギーンッ!
武器がぶつかり合うたび、周りには氷や闇の衝撃が飛び散る。
その衝撃は、戦闘の激しさを物語る。
(いや、少しでもスノウに力を貸さないと。セラくんとスノウのおかげで、少しは動かせそうだ。)
「うぐ、ぐぐぐ。」
セドリックの動きが鈍る。
「っ、今なら!
ガギーンッ!
音速を超える一撃は、セドリックの闇の兜を吹き飛ばす。
ガチャンッ。
セドリックの顔が見える。
その顔には、光は全くなく闇が支配していた。
(さすがだ、スノウ。これで、僕は楽に……。)
「セドリック!!お前は、大切なものを傷つけて、ましてや自分を犠牲にしてまで何やってるんだよ!!」
「ス、ノ、ウ。」
「お前には、俺たち全員から説教をしてやる!だから、早く戻ってきやがれ!!」
ヒューン。
セドリックの右目が元に戻る。
(まさか、スノウ。君は、僕を助けるつもりなのか?ダメだ、僕はもう、闇の人間なんだ。)
「ふ、ふふ。何を言ってるんだい!僕は、僕のやりたいことをやってるだけさ!!」
セドリックは力を振り絞り、スノウとの会話をする。
「やりたいことだと?ふざけてんのか!誰かを傷つけることが、お前のやりたいこと?それがお前の正義だとでもいうのか!笑わせんじゃねえよ!」
「そうさ!僕は、誰かを傷つけ、幸福を得る人間なのさ!そのためなら、何でも犠牲にしてやるさ!」
ガギーンッ!
二人は武器で火花を散らす。
「お前の正義が、そんなものなわけないだろ!」
「君に何が分かる!僕は、僕にしか分からない!」
「分かるに決まってんだろ!俺はお前のリーダーだ!傷つけることに幸福を感じる奴が、誰かの死を悼んで、涙を流すか?苦しんでる奴に手を差し伸べて、共に歩むか?」
「くっ!」
ガギーンッ!
二人は距離を取る。
「ふざけるな、そんなものは僕じゃない!僕は僕の正義を貫くだけだ!」
「お前が目指してたエデンってのは、本当にそんな世界なのか!!誰かを傷つけ、自分のためだけに生きる世界なのか!!そんなことしたら、人が人でなくなっちまう!」
「僕は、エデンに至るためにたくさん積み重ねてきた!そのためなら、人であることすら辞めてやるさ!」
「人が人であるのを辞めることに、なんの大義がある!!」
シュンッ! バギーンッ!バギーンッ!
二人の激しいぶつかり合いは止まらない。
「君に、君に何がわかる!!」
「人が人であるための世界がエデンじゃなかったのか!!」
「っ!?」
「人が人として生きられる!!皆が助け合い、一つの世界を作り上げていくのが、お前の目指してたエデンじゃなかったのかよ!!」
シューンッ。
少しずつセドリックの闇が弱まる。
「くっ、僕は、僕は!」
シュンッ!
大きな闇の剣で迫ってくる。
「何がだ!何がお前を、そんなに縛り付けてる!!
カキーンッ!
氷の刃がそれを迎え撃つ。
「僕は、こうするしかないんだ!でなければ、失いたくないものがこの手からこぼれ落ちてしまう!」
「だったら、落とさないようにしっかり支えてやればいいだろ!それがお前だけで出来ないなら、俺がやってやるよ!」
「っ!?な、なにを。」
「全部一人で出来るつもりか?人間なめてんじゃねえぞ!俺たちは、一人一人が弱者なんだ!弱いからこそ、手を取り合って助け合うんだろうが!」
ガチガチガチッ!
刀の氷が闇の剣を飲み込む。
「そんな、僕には、そんなことできる人なんて。」
「ここにいるだろ!俺が、俺が背負ってやる!」
「ス、スノウ。」
「お前を縛り付けてるもの、全部俺に見せやがれ!!それがなんなのか、どれだけでかいものでも関係ねえ!セドリックが俺たちと生きてくれるなら、俺が全部ぶち壊してやる!!」
「っ!?」
シューンッ。
更に闇の力が弱まる。
「だから頼れ!俺はお前のリーダーだ!!」
「僕は、僕は王国の兵士。だから、命令に背くわけにはーー。」
「だったら!俺が命令してやる!」
スッ、ガゴーンッ!
スノウは勢いよくセドリックに頭突きをする。
「ホープのリーダー、スノウ・アクセプトがセドリック・リーンベルに命令する!……逃げるな!!俺たちと生きろ!!これが、お前のリーダーの命令だ!!」
バギーンッ!
セドリックを覆っていた闇の鎧が全て砕かれる。
ポロッ、ポロッ。
そして、彼の目には涙が。
「スノウ、僕は、本当に君たちと、仲間になっていいのかい?」
「当たり前だ!お前に一緒にいてほしいと望んでるのは、俺だけじゃねえ。俺たちホープが、お前の生きることを望んでる。だから、俺たちと生きてくれ。」
サッ。
スノウはゆっくり手を伸ばす。
彼の顔は、とても優しかった。
「あ、ああ。ありがとう。」
スサッ。
二人は優しい握手をする。
その握手は、生涯忘れることのできないものになるだろう。
「はぁぁ!!」
「終わりです!!」
オーク二体もヒメノたちに倒される。
静かな空間が、ようやく生まれた。
バババババッ!
戦闘が終わった途端、闇のオーラが空に現れる。
「なんだ!?」
「兄さん!空を見て!」
ブワンッ!
闇の中から、一体の人型が出てくる。
「あいつは?」
「バルドル!!」
セドリックは闇の中の人型に叫ぶ。
バルドルはなぜここに出てきたのだろうか。
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