第八十四話 力の覚醒、決意

「グゴォァ!」


ブンッ!

トロルの大きな丸太がスノウ達を襲う!


「来たれ!ヒカリよ! 戦騎術センキジュツ! ロク! 反射光リフレクター!」


バギーンッ!

セドリックが攻撃を受け止め、


シュンッ!

狼派七式ロウハナナシキ! 餓狼撃ガロウゲキ!」


バシュッ!

トロルの左手にかすかな傷が入る。


「さすがに硬いな。」

「なら私が! 鮫派二式コウハニシキ! 断空槍ダンクウソウ!」


ズサッ!

岩をも貫く槍が、トロルの左手を刺す。


だが、ガチガチの左手は貫けない。


「ウゴァ!」


グルンッ!

トロルは体を一回転させ、三人を遠ざける。


「なあ、セドリック。こんなにトロルってのは頑丈なのか?俺たちでこんな苦戦するんじゃ、一般の戦士じゃ歯が立たねえだろ。」

「僕も戦うのは初めてだけど、普段は温厚で自分の寝床を荒らされた時のみ暴れるとしか資料で読んだことない。こんな、激昂した状態は資料にはなかった。」


バゴーンッ!バゴーンッ!

トロルは辺りの木々や、岩などお構いなしに壊していく。


「やっぱり、何かおかしい。先輩、トロルの頭見てください!」

「頭?……ん?何かくっついてる?」

「はい、あの機械みたいなものから、嫌な匂いがするんです。」


トロルの頭を見ると、そこには銀色の素材でできたアンテナのようなものがくっついている。


「あからさまだけど、あれが弱点とか?」

「分かりませんが、やってみる価値はありそうです!」

「OK、俺とセドリックが惹きつける。ユキナ、任せるぞ!」


ドキンッ!

ユキナの心臓が強く打つ。


スノウに頼りにされた事が、彼女の中で喜びに変わった音だ。


「っ!はいっ!」

「よしっ!いくぞセドリック!」

「了解!」


ズザッ!

スノウとセドリックはトロルを挟み込むように動く。


氷付与アイスエンチャント! 狼派二式ロウハニシキ! 蒼波ソウハ!」

「来たれ!ヒカリよ! 戦騎術センキジュツ! ! 光波コウハ!」


シュンッ!シュンッ!

氷と光の斬撃がトロルを襲う。


「ウガァ!」

トロルは怯み、動きが止まる。


「今だ!ユキナ!」

「はい! 鮫派四式コウハヨンシキ! 閃鮫センコウ!」


ザギーンッ!

スピードに乗った槍が、金属のアンテナに直撃。



キィーーーンッ!!


途端に、アンテナから高音の奇声が発せられる。


「うっ!」

三人は頭の中に何かが流れ込むのが分かる。



(なんだ、なんなんだ!おでは、おでは!ただ、寝てただけなのに。なんで、こんなに苦しいんだ、怖いんだ。)


紛れもない、トロルの声が人の言葉のように三人の頭に響く。


(なんでだ、なんでおでだけ生きてる?おでの友達は?どこにいるんだ?……なんでこんなに寂しいんだ?)



「な、なんだ、これは?」

「トロルの、声?僕らに直接訴えてるのか?」

スノウとセドリックは耳を押さえる。



そんな中、ユキナはしっかりとトロルの目を見つめ、その言葉を受け止めていた。



「この声、この感覚、前の私と同じ。あなたも、自分を責めてるのね、そしてあなたの見た世界が、私にも見える。」

ユキナはゆっくりとトロルに近づく。


(なんで、みんな倒れてる?口の中が苦い、何飲んだ?なんで、血が流れてる?誰がやった?……おでが……殺した?)



ピタッ。

ユキナがトロルの足に触れる。


「ユキナ!何やってんだ!危険だぞ!」

「先輩、私は、この子を解放してあげたい。」


ユキナはいたって冷静だった。


シュイーンッ!

さらに鮮明にユキナの頭にトロルの記憶が流れ込む。



(おでは、おでは……)

(あなたは、仲間殺しの最低なトロルよ。さあ、殺した仲間の分まで、暴れてきなさい。)

トロルの視点から、緑色の服を着た女性の姿が見える。


苦しみ、もがいてるトロルにユキナが干渉し語りかける。


(トロルさん、苦しいんですよね。それだけじゃない、悲しみも、憎しみも、あなたを支配してる。)

(おで、苦しい。なあ、そこのお前、おで、お願い、ある。)

(なんですか?)

(おで、楽に、なりたい。頼めるか?)


現実のユキナとトロルは見つめ合う。


(分かりました。私が、あなたを解放します。)

(すまない、名も知らない人間。)




ゴォォ!!

ユキナの周りに緑色のオーラが生まれる。


「ユ、ユキナ!?」

「あなたの願い、必ず遂げます。」

ユキナの血は沸騰したように熱く、その哀れみの感情はヨルムンガンドに届く。


(ヨルムンガンド、お願いできる?)

(もちろんよ!うちは、ユキナのものやさかい!)

(ありがとう、よろしくね。)



共鳴突破クロスドライブ! 開始オン! 寛容の神緑鮫ヨルムンガンド・ロヴン! 私と踊って!」


ピチャ、ピチャ、ピチャ、ピチャ。

ユキナの周りを水が回り始め、右目は赤く、左目は緑。

両腕にギザギザのヒレが生え、半人半神の状態となる。



「ユキナ、お前も。」

「すごい力だ、スノウ、セラくんの力と遜色ない。」


ピトッ。ピトッ。

ユキナの槍から、水が滴り落ちる。


「あなたは、私と同じ。自分を哀れみ、周りを哀れみ、そして、この世界を哀れむ。」


ジャキンッ!

槍を構え、トロルの真正面に向かう。


(すまない、人間。)

(謝らないで、あなたは何も悪くない。)


「一瞬で、終わりにします。 緑鮫上式リョッコウジョウシキ! 甚兵衛ジンベエ!」


ザプーンッ!!

槍に大きな水が纏わり、大きな鮫となる。



ズザーッ!

そして、鮫の形をした水はトロルを一飲み。


(あぁ、ありがとう。優しい人間。)

(どういたしまして、優しいトロルさん。)


パリンッ!

金属のアンテナが壊れ、トロルもその場から消える。


ザザーッ!


ユキナの発生させた水が、雨の如く降り注ぐ。



辺りには、大量の水溜り。


ユキナは濡れた体で空を眺め、

「せめて、彼の次の一生は自由に過ごせることを、心から願います。安らかに眠って。」

とつぶやく。


シューンッ。

共鳴突破クロスドライブ停止オフ。」


ユキナは元の姿に戻る。


「ユキナ!」

「ユキナくん!」


ダッ、ダッ、ダッ。

スノウとセドリックが駆け寄る。


「先輩、セドリックさん。私は、決めました。」

「決めた?何をだ?」

「私の頭に流れ込んできたトロルの記憶の中に、一人の女の人がいました。その人が、彼をあんな風にした犯人。」


ツーッ。

ユキナの顔には雨に混ざり、涙がこぼれる。


その目には強い意志と、怒りが。


「私は彼女を、絶対に、。」



一つの戦いが幕を閉じ、また新たな旅が始まろうとしていた。



第十三章 完


◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


第十三章まで読んで頂きありがとうございました。


ホープは自分たちについて知り、ヘルクリスマスの真相も知りました。そして、ユキナの共鳴突破クロスドライブ! 次章は、更なる衝撃が!?


スノウ達の今後を気になってくれる方!

あの女性は何者? モンスターに何が?

ホープの六人を応援してるぞ!


と思ってくださいましたら、

ぜひ、レビューや★評価とフォローをお願いします!


ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!



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