第二十四章 英雄は力を得て、新たな敵と出会う
第百四十六話 成長した姿
スノウ達はミーミルと別れ、ノーアトューンへと向かっていた。
「なんか一日しか滞在してないはずなんだけど、セラすごい疲れた。」
「まあ、いろんなことがあったからな。仕方ねえだろ。」
「主に原因なのは兄さんの言動なんですけどね!」
「あははっ、悪かったって。」
スタッ、スタッ、スタッ。
いつもの明るい雰囲気で太陽の下を歩く。
辺りは緑豊かな自然。
この平和な空間をホープは守り続けようとしている。
「エインズさん、無理されてないでしょうか?一週間で私たち六人分の武器を作ってもらうなんて……。」
「そこはエインズの力を信じるしかないな。まあ、無理させるのも悪いし、気長に待とうぜ。」
他愛のない会話をしていると、ノーアトューンが見えてくる。
「さあて、武器も揃ったらいよいよグラズヘイムに行くことになるし、必要なものは全部準備しとかねえとな。」
「そうだね、僕が足らないものは補充するから、みんなは情報集めとかお願いできるかい?」
「あ、そしたらあたしもセドチンと買い物手伝うよ!荷物持ちも必要でしょ?」
「まあ、それは僕がやるべきだとは思うんだけど、お願いするよ。」
セドリックは苦笑いを浮かべる。
「それでは、私はこの地域の情報を集めてきます。少しでも、グラズヘイムの知識は欲しいですからね。」
「そしたら、セラもヒメちゃんと行くよ!」
「ありがとうございます!」
「そんじゃあ、俺とユキナでエインズの所に行くか。」
「分かりました!」
役割分担を決め、ノーアトューンの門をくぐる。
「そしたら、各自役割が終わったらここの宿で集合でいいよね?」
「ああ、また後でな。」
スタッ、スタッ、スタッ。
二人ずつに分かれ、行動を始める。
「セドチン、特に足りないものってある?」
「そうだね、治療に使うものと、肉系の食糧が欲しいかな。保存がきくものがいいね、少し長い旅になるだろうし。」
「オッケー!そしたら、肉たくさん買おう!お肉は世界を救う!」
「それはリサくんのお腹を救ってるだけでは……まあ、食べ過ぎには注意してくれよ。」
リサ達は仲良く話し合いながら買い物を進める。
「ヒメちゃん!どこから行く?」
「そうですね、とりあえず掲示板がある集会所にいきましょうか。そこならいろいろ分かるはずです!」
「集会所ね!さあて、どこにあるのかな?」
ヒメノ達も情報を集め始める。
「先輩!エインズさんに何かお礼をしませんか?私たちお世話になりっぱなしなので。」
「それもそうだな、栄養がつきそうなもの買っていくか。あ、それとも酒とかの方がいいのか?」
「お酒は私たち飲んだことありませんし、美味しそうなものがいいと思います!」
「それもそうだな、そしたらあそこで買っていくか。」
スノウ達はエインズへのプレゼントを選別する。
こうしてみると、やはり年頃の男女なのだと思わされる。
しかし、現実はそう甘くない。
彼らが、この世界を救う唯一の希望なのだから。
「よし、差し入れも決まったし行くか。」
「はい!」
スタッ、スタッ、スタッ。
スノウとユキナはエインズの工房にたどり着く。
「おーい、エインズはいるか?」
「ん?客か?今忙しいから、発注は後日で……なんじゃ、スノウ達か。」
「これ、差し入れです。よろしければどうぞ!」
「おおっ、すまんな。ありがたく頂く。」
バサッ。
エインズはユキナから差し入れを受け取る。
「エインズ、無理はしてねえか?俺たちのために、体に鞭打って頑張ってるんじゃねえか気になってな。」
「何を言うか!ドワーフとしての意地と、わしの若さがあれば何も問題ない!」
エインズは力こぶを作り、元気さをアピールする。
「そうか、俺たちのやるべきことは終わったからよ、エインズに作ってもらえたら行ってくるぜ、グラズヘイムに。」
「……そうか、なら、少しでも早く作らんとな!」
「そんな、無理をされては体にーー。」
「無理をさせてしまってるのはわしら大人の方じゃよ。」
スタッ。
エインズは近くに置いてあった剣を手に持つ。
「世界をこのようにしてしまったのは、わしら大人の選択じゃ。ぬしらのような子供に、世界を託すことになってしまうなんて不甲斐ないばかりだ。」
「そんなことねえよ、俺たちは、俺たちに出来ることをやるだけだ。それに、エインズの鍛冶技術がなかったら俺たちはもう死んでる。」
「そうですよ!私たちは、私たちで道を選んだんです!エインズさんが、気に病むことなんてないですよ!」
クルッ。
エインズは二人の眩しいほど輝く目を見る。
「ああ、ありがとう。わしは、ぬしらに無駄な傷をつけさせぬ。そのために、最高級の一品を作り上げると誓おう。」
「ああ、よろしくな、エインズ。」
「うむ。任せよ。」
スタッ、スタッ、スタッ。
スノウ達はエインズの工房を後にする。
「ふむっ、やはり彼らは強いな。二度と同じ過ちを繰り返してはならない、我らも学ばなくてはな。」
カンッ!カンッ!
鍛治工場からは、金属を打つ音が響いていた。
平和に暮らしているノーアトューンの民達。
しかし、この平和な空間を壊そうとする者は、すぐそばに迫っていた。
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