第二十五章 英雄は覚悟を決め進む

第百五十一話 ホープの決意

ホープの六人はグニパヘリルへ向かい歩いていた。


「なんか今まで以上に武器がしっくりくるね!あたし達ヘルクリスマスの時より強くなったんじゃない?」

「そうだったらいいな、俺たちがオーディンを倒すには相当の力が必要だろうからな。」

「まあ、個人の力だけじゃ無理でもセラ達六人が力を合わせればなんでも出来るよ!」


スタッ、スタッ、スタッ。

数時間歩くと、日が傾いたのでキャンプをすることにした。



「ヒメちゃん!セラも料理手伝うよ!」

「ありがとうございます、そしたらセラさんにはこれを切ってもらって。」


ヒメノとセラがご飯を作っていく。


「ユキナ、こういうのでいいんだよな?」

「そうですね、その太さの枝はとても使い勝手がいいので。」

「オーケー、任せろ。」


スノウとユキナはキャンプファイヤー用の枝を集める。


「ここら辺は特にモンスターもいなそうだね。」

「うん、あたしの目にも映らないし、安全は確保できたかな。」

「それじゃあ戻ろうか。」

「うん!お腹すいた〜。」


スタッ、スタッ、スタッ。

周りの巡回を終えたセドリックとリサは、キャンプ地まで戻る。


六人が集まり、ヒメノとセラが作り上げだビーフシチューを食べる。



「美味しい!二人ともすごいね!」

「ああ、本当に美味しいよ。僕が今まで食べてきたものでも一番だ。」

「そんなに褒められては照れますよ……。」

「いいじゃん、胸を張って自慢しちゃおうよ!」


全員が仲良く食をすすめ、テントを張っていた。


寝る準備も整え、ホープの六人は焚き火を囲んでいた。



「なんかさ、すごい長い旅な気がするんだけどまだ数ヶ月なんだよね。毎日が濃い一日で、忘れられないことばかりだよね。」

「セラくんの言うとおりだね、僕たちは数多くの壁を乗り越えてきた。」

「時にはぶつかる時もあったけど、私たちは同じ道を進むことができてる。それは、私たちの強い武器となってる。」


ヒメノの言葉に皆は感慨深いものを感じる。


バチバチッ!

焚き火の音が六人の記憶を蘇らせる。



「もう少しでこの旅も終わりを迎える。あたし達は、この先にさらに高い壁が出てくることを知ってる。でも、この六人ならどんな壁をも乗り越えられる!」

「そうですね、私たちは消された記憶を辿っていって力を取り戻していった。そして、目の前に最後の目標が見えてきてる。」

「けど、オーディンから世界を取り返すのがゴールじゃねえ。そこからは、この世界を安定したものにするためにミーミルを助けていく。ゴールなんて、どこにもなさそうだな。」


スノウ達は空を見上げ、満天の星を見つめる。


「夜空って不思議だよな、各地でまだ争いが起きてるはずなのにとても静かできれいだ。あの空の先は、どうなってんだろうな。」

「僕たちには想像もつかない世界が広がってるんだろうね。オーディン達がどこからきたのか、それも気になるね。」

「そういえば、セラ達の戦神はどうなるの?オーディンを倒したら消えちゃうの?」


(そんなことはないよ、セラ。私たちはあなた達の中に入れてもらうことで、生きていられる。あなた達が許してくれるなら、これからも一緒にいるわ。)

(そうなんだ!もちろん、これからもお願いね!ヴァール!)


「戦神は私たちの中に残ってもらえるんですね、もはや私たちの相棒ですし、とても嬉しいです。」

「ユキチンは寂しがりやだから、特に離れられないね!」

「そ、そんなことないですよ!それは、皆さんだって同じですよね?」

「うふふっ、そうですね。私も今更離れるなんて考えられません。」


サーッ。

風がみんなの髪を揺らす。


風が止むと、スノウが真剣な表情になる。


「なあ、これは俺の甘えかもしれないけどよ、

「……、何言ってるの!お兄は!」

「え?」

「セラ達はこの世界を取り戻すために力をつけてきた。それは大前提、セラ達が学んできたありきだよ。」


セラは自信満々に言い張る。


「そうですね、私たちは誰かを助けるための力を手に入れたんです。誰かを殺すための力だったら、それはオーディン達と何も変わりません。」

「ヒメノ、そうだな。愚問だったわ。」


バサッ!

スノウはおもむろに立ち上がる。


「決戦が近いからって、何も考える必要はねえな!俺たちは、俺たちのやってきたことを続けるだけだ!必ず生きて帰る、そしてこの世界を取り戻す!」

「おう!」


皆も呼応するように、立ち上がる。


彼らの決意はとても固いものであった。



「そろそろ寝ましょう、夜更かしは体に悪いですから。」

「あ、じゃあセラはお兄と寝ようかな〜。」


タッ、タッ、タッ。

セラはスノウのテントに向かう。


ガシッ!

「うへっ。」


セラの服をヒメノに掴まれ、引き戻される。


「何言ってるんですか!セラさんは私と同じテントですよ!」

「えー、いいじゃん。みんなみたいに、お兄はんだかーー。」


ガシッ。

セラの口をユキナがふさぐ。


「さ、さあてセラさん!早く寝ましょう!」

「うぐ!うぐぐ!」


女性陣は各テントに入っていった。


「なんか騒がしいな、何があったんだ?」

「はははっ、スノウは大変だね。」

「え?どういうことだ?」


セドリックは黙ってテントにはいる。


「おい、待てって!」




次の日、空は晴れ渡り彼らの道を明るく照らしていた。

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