第百五十二話 彼らの動き
ホープの六人は準備を終えて、グニパヘリルへ向かう。
「さあて、ここからは後二時間くらいか。」
「そうですね、しっかり休憩もできましたし準備万端ですね。」
「そうだね、道中そんなモンスターも多くなかったし、ここら辺は安全。ということは、セラ達より先にミーミル様達はもうついてるかもしれないね。」
スノウ達は辺りを見渡し、モンスターの少なさに異変を感じとる。
「にしても、ここら辺静かすぎないか?」
「確かにそうだね、何かしらの結界でも発動してるのかもしれない。」
「てことは、師匠達が使ったのかもしれないですね。」
スタッ、スタッ、スタッ。
ホープは真っ直ぐグニパヘリルへ向かう。
そうすると、一つの町が見えてきた。
「あれか?グニパヘリルは?」
「ちょっと待ってね、えーと、そうみたい!グニパヘリルって書いてあるよ!」
リサが千里眼を使い、町の名前を見る。
「ありがとうリサちゃん!じゃあ早速行こう!」
セラを先頭にホープはグニパヘリルへ入る。
サーッ。
静かな風が、町の木を揺らす。
町はとても静かであった。
人は誰一人として外に出ていなく、店などは閉まったまま。
グニパヘリルはグラズヘイムへの物資を送る重要拠点。
本来ならかなりの人が行き交う予定の場所だ。
「なあ、奇妙すぎねえか?」
「そうですね、そして何かがこちらを見てます。」
辺りから視線を感じとる。
「さあて、どうやってミーミルと合流するか。」
「そうですね、どこかに目印とかあれば。」
スノウは何かを感じとる。
「一人だけ、俺たちに送る視線が違うな。これは、師匠達だ。」
「先輩、私たちを導いてください。」
「分かった、ついて来い。」
スタッ、スタッ、スタッ。
スノウを先頭に町の端の方にある建物に向かう。
「ここか、ここの中に最近感じた力があるな。」
「第六感ってすごいですね、兄さん、中に入りますか?」
「そうだな、罠じゃないことを願うぜ。」
ガチャッ。
扉を開けると、目の前には数日前に見た姿が。
「おおっ、スノウ!もうたどり着くとは、流石の速さだな。」
「当たり前だろ、それよりあんた達が早すぎるんじゃねえか?ミーミル。」
「何事もスピードが命と私は教わったからね、君のようなスピードは出せないけど。」
「ミーミル、変わったな。」
タッ、タッ。
スノウがミーミルの前に寄る。
「そうかもな、スノウのおかげだ。」
「俺か?俺は何にもしてねえよ、ミーミルが変わろうと思ったから、変わったんだろ?」
「さすが、大きな器を持ってる男だ。では、作戦を話していこう。」
ミーミルは部屋の中にある大きなテーブルを使い、作戦を伝えていく。
そこには、ホープの六人、ミーミル、師匠達三人の10名が揃った。
まずはホープの行動。
グニパヘリルからグラズヘイムの間にある一つの館、ヴィーンゴルヴを占拠する。
そこには、多くの王国側の兵器や武器、軍事拠点の役割をしているとのこと。
そこを占拠した後に、グラズヘイムに入る。
ミーミル達はヴィーンゴルヴとは反対の位置にある山から、グラズヘイムの中に入り込む。
しかし、王国の人間もよく使う裏道であるため、戦闘は回避できないだろう。
そんな危険な道をミーミル一行が向かおうとしていた。
「おいおい、それで大丈夫なのか?俺たちが山の方から行ったほうが。」
「いいや、ホープにはヴィーンゴルヴを占拠してもらわなければ、こちらの援軍を送ることも難しい。スピードがより出せる君たちだから、任せたいのだ。」
「ですが、ミーミル様たちが危険な目にあってしまいます。」
「セドリックくん、任せてくれ。私も君らほどではないが戦える、それにホープを育て上げたアレン達もいる。ホープだけが、この世界の力じゃないことを示してやるさ!」
ミーミルは笑みを浮かべ、ホープに安心させようとする。
「分かったよ、ミーミル、俺たちはあんたを信じる。グラズヘイムで必ず合流だ。ちゃんと来ねえと、嘘ついた罪で俺がお前の首を斬ってやる。」
「ははっ、それは大変だ。スノウも知ってる通りこの首は安くなくてな、斬らせるわけにはいかない。ちゃんと辿り着かなくてはな。」
ガシッ!
二人は固い握手をする。
「それじゃあ、作戦開始だ!」
「おう!」
ホープはヴィーンゴルヴに向かい、ミーミル達は山の方へ歩き始めた。
これから彼らはオーディンのいる町、グラズヘイムへ向かう。
彼らを待ち伏せる幾つもの壁は、そう簡単には崩れない。
しかし、人の希望であるホープなら成し遂げることができると全員が信じていた。
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