第八十六話 久しぶりの再会

ダッダッダッ!

ホープはバッリの村を出て、ビフレストに進んでいた。



バッリからビフレストまでは歩いて二時間ほど。



道中彼らは、毎度恒例のご飯休憩をしていた。


今回は、スノウとヒメノが料理を、リサとユキナが周りの警戒を、セドリックとセラがテーブルの準備をしていた。



「ヒメノ、この食材はこっちに入れて平気か?」

「はい、後この調味料も一緒に……。」

二人はスムーズにポトフを作っていく。


大きめサイズに切った野菜はとろとろになり、肉も両面焼いてから入れることで肉汁を閉じ込めた。

バッリで手に入れた調味料もうまく使い、周りにとても良い匂いをばら撒く。


この作り方はヒメノが独自で考え出し、周りからの評価も高かった。


スタッ、スタッ、スタッ。

セラがテーブルをセットし終え、スノウ達の方へ歩いてくる。


「うーん、いい匂い!ヒメちゃんの料理だよね!やっぱり常に成長してるね!」

「ありがとうございます、セラさん。皆さんに美味しいと思ってもらえるなら、いくらでも勉強します!」

「これで花嫁修行も進むね!!」


ドクンッ!

ヒメノの心臓が大きく脈打つ。


「へえ、花嫁修行か、ヒメノも大変だな。」

「なんか他人事っぽいよ、お兄。」

「え?だって、俺には関係なーー。」


ゴスッ!

ヒメノがスノウの足を蹴る。


「痛っ!なんだよいきなり!」

「知りませんよ、バーカ!」

「はぁ、またうちのお兄は……。」


スノウの女心の分からなさすぎるところに、セラは呆れる。


「お兄、いつか身内に襲われなきゃいいけど。」

「何も悪いことしてねえっての。」

「悪いことはしてないんだけどね、まあ、セラが教えるのも違うと思うし、お兄も努力しないとね。」


スタッ、スタッ、スタッ。

セラはテーブルの方へ戻る。


「なんの努力だ?」

「はぁー」

ヒメノはため息をつき、心を整える。



そうしているうちに、ポトフが完成しテーブルに並ぶ。


今回作ったのは約15人前である。


配分は、リサとセラが五人前ずつ、他四人で五人前を分ける。


「いただきます!」

ホープの六人は食卓を囲む。


「うーん!美味しい!ヒメチンの料理最高!」

「ああ、本当に美味しいよ!すごいな、ヒメノくんは。」

「そ、そんなに褒めないでください、照れます。」


わちゃわちゃしてる中で、スノウは何かを考えている。


「どうしたんですか?先輩、上の空って感じですよ?」

「いや、セラに努力をしろって言われてな。」

「努力ですか?それなら、先輩は常に頑張ってそうですが。」


ユキナもなんのことか上を向いて考える。


「身内に襲われないためにって言ってたけど、俺、この中の誰かに襲われるのか?」

「あー、そういう意味ですか。まあ、今すぐにどうとかはないと思いますが、その努力は私もして欲しいです。」

「どんな努力すればいいんだ?」


スノウは真面目な顔でユキナに問いかける。


「それは……私の口からは言えません。第六感みたいに、どうにか察してください!」


カタンッ。

料理を食べ終え、ユキナは食器を片付け始める。


「あ、ユキナ!……うーん、答えどこかに落ちてねえかな。」


スタッ、スタッ、スタッ。

ユキナは食器を置き、スノウの方へ振り向く。



「私の口から言えるわけないじゃないですか、鈍感先輩。」


ホープは食事を終え、再度ビフレストに向かい始めた。


「セラは、ビフレストに行ったことあるのか?」

「いや、話には聞いたことあるだけで行くのは初めてだよ。だから、セラの戦神に会えるのがとても楽しみ!」

「そうなのか、俺のテュールと、セラのヴァール、瓜二つだったりしてな。」


他愛のない会話をしながら道を進んでいると、


「うん?何か聞こえます!」

ヒメノが地獄耳で何かを感じとる。


「なんの音だ?ゴブリンか?」

「この感じは、大きなモンスターです。この先のビフレストの方から!」

「マジかよ、急ぐぞ!」


ダダダダダッ!

ホープは走ってビフレストに向かう。



「見て!トロルがいるよ!」

「それに、誰かが戦ってます!あれは……。」


スノウ達の目に三人の人物が映る。


「ん?アトレウス!?」


フォールクヴァングで初めて出会った、FC計画の元指導官で、現冒険者。

スノウ達の仲間である。




「うおぉ! 岩刃ガンジン!」


ザシュッ!

アトレウスの重い一撃がトロルの足を傷つける。


「ウガァ!」

トロルも負けじと暴れ始める。


「くそっ、なんでトロルがこんなところに?近くに寝床はないはずだったが。」

「アトレウス隊長、ここから離れないと下手したらビフレストに被害がーー。」


シュンッ!

風を切り、スノウがトロルに迫る。


狼派一式ロウハイッシキ! 迅狼ジンロウ!」


ザシュンッ!

スピードに乗った攻撃が、トロルの右手を斬る。


「なっ!?スノウ?」

「よお、久しぶりだな、アトレウス。後は任せてもらうぜ!」


カチャッ!


スノウはトロルと対峙する。

(こいつにはアンテナはついてない、バッリの時とは違うパターンか。)


「ビフレストに近づけると思うなよ!いくぞ、セラ!」

「いつでもどうぞ!」


シュンッ!

シュンッ!

挟み込む形で、トロルに二匹の狼が迫る。



狼派一式ロウハイッシキ! 迅狼ジンロウ!」

雷充填ライトニングチャージ! 希狼派三式キロウハサンシキ! 雷狼ライロウ!」


ザシュンッ! ザシュンッ!

二人の攻撃が交差する。


アギト!」

「ウギャァ!」


ポトンッ。

トロルは牙の素材となる。



ダダダダダッ!

遠くからヒメノ達も走ってくる。


「スノウ、また会えるとはな。」

「ああ、俺も嬉しいよ、アトレウス。」


ガシッ!

二人は強く握手を交わす。


ここからホープ達は、新たな知識を得ることになる。

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