第百二十話 吉報と悲報

スタッ、スタッ、スタッ。

スノウ達は、エーリュズニルに入る。


そして、分隊長のリーに連れられ彼らの分隊施設に向かう。



「町長は今外に出ているんだ、代わりに私が案内をできればと思う。」

「ありがとうございます、リーさん。ここの皆さんは、被害は受けてませんか?」

「ヒメノさんでしたよね、被害とは戦争宣言のでしょうか?」

「はい。王国に服従しない町や村は武力によって制圧するとバルドルが言ってました。まだ襲撃を受けた報告はありませんが、どうも先程のモンスターが気になりまして。」


モンスター二体に苦戦しながらも倒し終えたホープ。



しかし、本来モンスターは素材になり、その生命を終わらすのであるが、先ほどのモンスターは違う。


その場で消滅してしまったのだ。



そして、一般個体や異業種にはみて取れなかった、身体能力の高さと魔法の適正。


異変が起きてることに変わりはなかった。



「確かに、私たちの町も王国には従っておりません。ですが、先ほどのモンスターを除けばまだ何も動きは感じてません。」

「そうですか、良かったです。」

「それとリーさん、僕からも質問なんですが、この町には何かホープやトップ、ヘルクリスマスなどについて関係のあるものはありませんか?」


セドリックが変わって質問する。


「うーん、そのような情報は聞いたことはないな。もしかしたら、町長なら知ってるかもしれないが。」

「そうですか、何かこの町が狙われる理由があると思うのですが。」

「理由……あ、そういえば。この町は数年前に、と聞いたことがある。」

「セクターの師匠!?それって、スノウ達の。」


全員が目を見開く。



「なあ、リー。誰がここに来てたかわかるか!?」

「詳しくは分からないが、たしか、という名前だった気がするよ。」

「クレイトス……先生。」


スノウの表情が少し暗くなる。


自分の師匠でありながら、どういう人物なのか分からないのだから。



「クレイトス先生がこの町を助けたってことは、その時には何か襲撃が?」

「ああ、その話なら私が話せる限りを話すよ。」



数年前、突如としてサーベルウルフの群れがこのエーリュズニルに押し寄せた。



理由としては、近くの山に土砂崩れが起き住処を無くしたサーベルウルフが新しい住むところを探して下山してきたのだそう。


近くの小さい村は廃村にさせられ、次に狙われたのがエーリュズニル。



精鋭を率いて待ち構えていたが、人間側は100名ほどに対し、モンスターは300以上。



圧倒的劣勢に、エーリュズニルも滅ぼされかけていた。




そこに、クレイトスが現れた。


彼は持ち前のパワーとスピードを活かした、狼流派を使いこなし、瞬く間にエーリュズニルを救った。



彼の功績に報酬を出したいと望んでいた町長に対し、彼が申し出たこと。



「であれば、この地図を預かってくれないか?誰にも見つからない、いや、これから先も使うことがないものであるとは思うが。」


その地図を受け取った町長は深い理由は聞けずに、クレイトスは町を出てしまったという。



「これが私の知ってることになる。」

「先生が置いて行った地図。気になるな、中身は町長も見てないのか?」

「そう聞いているよ、そして、どこか遠い場所に隠したとも言ってたよ。」

「先輩、ここの町長さんが戻るまで待ちませんか?私たちにとって、とても大切なものな気がします。」


ユキナの提案に全員が賛同する。



「そうだな、少しの間世話になってもいいか?」

「それはもちろんだよ!むしろ、私たちからお礼をさせてほしい!近くの宿に部屋をとっておくから、そこを使ってくれ。」

「ありがとう、助かる。」


ズザッ。

ホープは分隊施設を出る。



「そしたら、まずは宿屋に向かうかい?」

「そうしよう!セラ少し疲れたよーー。」


ピキーンッ!

ホープ六人は違和感のあるプレッシャーを感じとる。



「なあ、今のって。」

「うん、お兄の予想通りだと思うよ。何かがここに向かってる。」

「もう!休憩くらいしたいのに!」


リサはプンスカと怒る。



「とりあえず正門まで行くぞ、この町を危険に晒すわけにはいかねえ。」

「了解!」


タッタッタッ!

スノウ達は正門まで走る。



「あ、ホープの皆さん、どうされました?」

正門の警備をしてる兵士が声をかける。


「少し嫌な感じがしまして、この近くで何か異変はありませんでしたか?」

「いえ、私たちは何も見ておりません。」

「そうですか、リサさん、何か見えませんか?」


ジーッ。

リサは千里眼を駆使して辺りを見渡す。



「うーん、特に何も見えなーー。」


ズーンッ!

再度奇妙なプレッシャーを感じとる。


「いや、何かいるはずだ。この感じ……。」



スノウは全神経を集中させる。



スーッ。

何かが動く気配を感じとる。


「そこか! 氷付与アイスエンチャント! 狼派二式ロウハニシキ! 蒼波ソウハ!」


ピキピキピキッ!

ブンッ!ブンッ!


二発の氷の斬撃が風を切る。


バギーンッ!バギーンッ!

何もないはずの空間で、斬撃が砕かれる。


「なに!?あそこに何かいる!?」

「ピィァア!」


シュワーンッ。

何もなかった場所に、全身明るい緑色の四足歩行のモンスターが現れる。



このモンスターは、いったいどこから……。

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