第九話 不幸な襲撃者

ガチャンッ。


ホープと男達三人は、フォールクヴァングのギルドに入った。


「単刀直入に話そう。君らは、オーディンに記憶を消されている。」

「は?ちょっと待ってくれ。オーディンが?オーディンって確か、三日前に俺が倒したはずじゃ。」

スノウは三日前を思い出す。


「そうだ、スノウはオーディンを倒した。だが、それはだ。」

「まやかしの国王?兄さんが倒したのは、偽物ってことですか?」

ヒメノは問いかける。


「偽物、というよりは身代わりだな。」

「何でそんなことを、てか何でオーディンは記憶を消したの?」

「なに、簡単さ。世界を自分のものにしたいのさ。」


ササッ。

アトレウスは一つの紙を出す。


「これを見てくれ。」

「何だ、この紙に✖️が付いてるのは?」

紙には20人の名前が書いてある。


そこには、スノウたち四人の名前も。


「先輩もリサさんも、ヒメノちゃんも私まで載ってます。でも、他の大半は✖️が付いてるーー。」

「まさか!?」


バタンッ!

ヒメノは急に立ち上がる。


「どうしたのヒメチン?」

「アトレウスさん、これってさっき話してたではないですか?」

「え?」

ホープの他三人は固まる。


「流石だな、ヒメノ。頭脳明晰なのは変わらずか。」

「さっき生き残りって……っ!アトレウスさんまさかこの✖️が付いてるのって……。」

「ああ。みんな、心して聞いてくれ。ここに✖️が書かれたやつは、



シーンッ。

その場が氷のように冷たくなる。



その静寂を、スノウが破る。


「ちょっと待てよ!俺ら四人以外全員死んだって、そののせいでか!?」

「確かに、ヘルクリスマスでも何人か死んだ。だが、その後オーディンに消された奴らがいる。」

「オーディンが!?ふざけてんのか!」

スノウは大声を上げる。


その顔には、震えるほどに怒りを含んでいる。


「先輩!落ち着いてください!」

ユキナがスノウを落ち着かせる。


何事かとギルドの人たちがスノウ達を見る。


「スノウ、お前にはもう一つ伝えなければいけない。」

「なんだよ。」

「ここにもう一つ✖️が付いてない奴がいる。名前を見てみろ。」

スノウは紙を見つめる。



「っは!?アクセプトって、俺と同じ名前?」

「そうだ、そしてアクセプトと名を継ぐものはスノウとセラリウムだけだ。」

「でも、俺にはヒメノしか兄妹は……。」

スノウはヒメノを見つめる。


「君らは、義理の兄妹だったよな。スノウ、君は生まれた時双子だったんだ。」

「はっ!?でも、残ってる子供の時の記憶にセラリウムの記憶なんてーー。」


ズキーンッ!


「痛っ!」

スノウは頭を抑える。


「兄さん!」

ヒメノが体を支える。


(ねえ!お兄!セラたちはいつまでも一緒だよね?)

スノウの頭に声が流れる。


(当たり前だろ!俺はお前の兄貴だ!妹を守るなんて当たり前だ!セラ!)

記憶が一気に流れ込んでくる。


「う、くぅ、せ、セラ?」

「スノウ!しっかりして!」


(お兄!いやだよ!離れたくないよ!)


「はっ!」

スノウは正気に戻る。


「大丈夫か?スノウ。」

「アトレウス、まさかセラリウム・アクセプトって俺と同じ流派を会得してないか?」

「そうだ、思い出したか。」

アトレウスは紙をしまう。


「話した通り、ホープの四人とセラリウムを含めて五人が生き残ったトップだ。」

「あの、えと、あたし理解が追いつかないんだけど。」

リサは頭を悩ませる。


「まあ、すぐに理解できるようなものではない。少しずつ理解していけばーー。」


「敵襲!敵襲!」

ギルドの外から警告が聞こえる。


カンッ!カンッ!カンッ!


「ゴブリンの襲来だ!衛兵、戦闘準備を!」

村長のハンクが指揮を取る。


「くそっ、最悪なタイミングだな。ホープ、君らはここで待ってーー。」

「ふざけんな!いろいろ突きつけられて、パニックだっての!」


ダッ、ダッ、ダッ!

スノウはギルドから走って出ていく。


「先輩!ヒメノちゃん、リサさん、私たちも!」

「もちろん!行くよ二人とも!」

三人もスノウを追う。


「やはり、彼らに頼らないと生きていけないのか。」

「少しでも負担を分け合いますよ、アトレウス隊長!」

「そうだ!我々は彼らの協力者だ!」

アトレウス分隊も外に向かう。



ドスッ、ドスッ。

「ゴアッ!」

ゴブリンが三体迫ってくる。


「くそ、ゴブリンが来るなんて。」

ハンクは剣を構える。


ズザーッ!

「ハンク!ここら俺たちが!」

「スノウくん!みんなも!」


スノウ達は戦闘態勢になる。


「すまない、住人は私が。」

「はい。村長は村長のやるべきことを!」

ヒメノが大きく頷く。


「あたし達の住んでる村を襲うなんて、バカなゴブリンね!」

「私たちで、ここを守りきる。それだけですね!」


四人は力を発動する。


白狼フェンリル俺に力を貸せ!」

紫鷹グリンカンビ私と飛んで!」

赤虎グラニあたしと戦え!」

緑鮫ヨルムンガンド私と踊って!」

四人の武器に光が纏う。


「グガァ!」

ゴブリンは四人を襲ってくる。


「さあて、やってやるぜ!」


大切なことを知らされたスノウ。

彼はこの事実とどう向き合うのか。

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