第百六十九話 仲間

市民にゴブリンの武器が届くまで時間がない。


しかし、スノウ達も先のことを考えると武器を手放すことができない。


(くそっ、何か、何か方法は。俺たちはここで死ねない、けど、この人たちを殺させるには……。)


スノウは頭をフル回転させる。



この数秒で答えは、出せなかった。




「さあ、ここで死ぬやつらに詫びるんだな!」

「くそっ!」



シューンッ。

ザシュンッ!

何かがゴブリン二体を斬り裂く。


「な、なんだ!?」

「あなたは、本当にどうしようもないクズですね。バルドル!」


チャキンッ!

そこには、途中で別れたヴァルキュリア隊のスノトラの姿が。


「スノトラ!」

「間に合ってくれたのか、スノトラくん。」

「お待たせしました、隊長。」



スノトラによって三人の市民が救われる。


「なめたことを!お前達は、何も守れないんだよ!」

「そんなことはありません!!」


シューンッ。

ザシュ!

反対側のゴブリンが倒れる。


「今度はなんだ!」

「スノトラだけがヴァルキュリア隊ではないのですよ。」

「君は、スクルドくん!」


ヴァルキュリア隊のスクルドもホープに加勢する。



「くそが、どいつもこいつも邪魔しやがって!」

「あんたに誰も死なせるつもりはないのでね!」

「なら俺の手でーー。」


ジャギーンッ!

高速でスノウが斬りかかる。


「させるかよ!クソ野郎が!」

「ぐっ、なら!お前ら、全員殺してしまえ!」

「ウゴァァ!!」

「やめて!助けて!」


あらゆる位置で悲鳴が響く。


「このままじゃ、みんな!一気にーー。」



シュンッ!

ジャギンッ!ジャギンッ!

ポトンッ。


複数のゴブリンがさらに倒れる。


「やらせませんよ、あなたには!」

「アヤちゃん!間に合ってくれた!」

「お待たせ、ユッキー!」


ガギーンッ!

スノウとバルドルが距離をとる。


「ふざけやがって、孤独な戦士が!調子に乗るな!」


ドスンッ!ドスンッ!

何かが走り寄ってくる。



「この音、聞き覚えがある。……まさか!」

「はぁぁぁ!!直拳ストレート!」


ガゴンッ!

ゴブリンを一人の拳が貫く。


「お前、まさか、スティング!?」

「孤独だって?冗談よせよ。よお、スノウ。借りを返しに来たぜ!」


なんと、そこにはファンサリルの町で出会ったIWSの使い手、スティング・レイの姿。



「ブラック隊!各自応戦しろ!」

「了解!」


シューンッ。

ドガンッ!ドガンッ!

辺りのゴブリンをIWSを着たブラック隊が着実に倒していく。


「スティング、その色は!」


スティングが着ているIWSは、アウルが暴走した際に着用していた赤いIWSであった。


「心配するな、これはMk-Ⅱじゃない。色は同じだけど、隊長用として色を変えただけだ。」

「そうか、なら良かった。」

「さあ、一緒に暴れようぜ!スノウ!」

「ああ!」


ジャギーンッ!

ドゴンッ!

スノウとスティングは力を合わせゴブリンを倒す。



「ふざけるなよ、人間が!」

「そちらこそ、勝手な振る舞いはやめてもらおうか!」

「っ!?」


ガギーンッ!

バルドルを大きな剣が襲う。


「貴様は、たしか。」

「アトレウスさん!」

「ふんっ!」


ガギーンッ!

バルドルは吹き飛ばされる。


「よお、ヒメノくん。また強くなったのだな。」

「アトレウスさん、なんで。」

「スノトラくんに、君たちホープがグラズヘイムに攻め込むと聞いてな、こっちも準備してたんだ。」

「え、でもどうやって情報を……あっ!?」


ヒメノはフォールクヴァングでスノウとスノトラが話し合ってた場面を思い出す。



「もしかして、あのとき兄さんが話してたのって。」

「多分、そのときじゃろうな!」


ブンッ!

シュンッ!

斧の大きな一撃と、的確な矢の攻撃がゴブリンを襲う。


「リオネルさん!フェルナンドさん!」

「アトレウス隊長だけではありませんからね!」

アトレウス隊が集結する。


「なぜだ、なぜこんなにも人間に邪魔されるんだ!こうなったら、ゴブリン隊!」


シュイーンッ!

闇のオーラが生まれ、複数のゴブリンが出てくる。


「くそっ、数を増やしやがった。」

「さすがに、町の人たちを守りながら戦うの、セラ達にはかなり難しいーー。」

「そんなことはありませんよ、セラさん。皆さん!準備を!!」


スノトラの掛け声で、町の門から足音が響く。


「なんだ!?」


バルドルは焦りを顔に浮かべる。



「いくぞ!ホープに恩返しをする時だ!」

「おおっ!」


ダダダダダッ!

武装した人間が走り寄ってくる。



「はははっ、最高だぜ、お前ら!」

「よお、スノウ!待たせちまったな!」

「ホープの皆さんに、お礼ができて光栄です!」


なんと、一つの軍として加勢に来た者の中に、

ビフレストのグレイ隊

バッリの村長であり、クレイトスの弟子のライト隊

グリトニルのルカ隊

エーリュズニルのリー分隊

など、多くのホープに助けられた人たちがいた。



「なんだ、なんだあいつらは!」

「お前にはわからねえだろうな、バルドル!」



チャキンッ!

スノウが刀を向ける。



「これが、人間の力だ!」



人間側の力を示す時が来た。

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