第二十一話 契りを交わした者

「うあぁぁー!!」

狼派一式ロウハイッシキ! 迅狼ジンロウ!」


バキーンッ!バキーンッ!

スノウとリサの激しい戦いが始まった。


「許さない、許さない!」

「ああ、許さなくていい!」

激しい剣と刀のぶつかり合い。


「けどな!忘れたわけじゃないだろ!その力は、何のためのものか!」

「あ、あぁぁ!!」


グワンッ。

リサの大振りの上段斬りが迫る。


「っち!」


スタッ!

ギリギリでスノウは避ける。


ビキビキッ。

地面には大きなヒビが。


「っ!」


ザッザッザッ!

リサの斬り上げの追撃がくる。


「いくぜ、リサ!狼派七式ロウハナナシキ! 餓狼撃ガロウゲキ!」


ガギーンッ!

二本の刀を同時に振り抜きなんとか耐える。


「があ、がぁ。」

「思い出せ!リサ!その力は、何のためにある!!」

「ちか、ら。まも、る。」

リサの動きが少し鈍る。


「う、うあ、あぁ!!」

しかし、今のリサは狂乱状態。


全てを壊さんとする、バーサーカーのような者。


「リサさん!戻ってきてください!」

「ヒメノちゃん!いま近づいたら、先輩の邪魔になる!」

ヒメノとユキナは見守ることしかできない。


(おい、俺がやろうとしてること、分かるんだろ。白狼フェンリル。)

スノウが心の中で呼びかける。


(分かっている。だが、確率の低い賭けになる。)

(分かってる!だけど、やらなきゃリサがーー。)

(その前に一つ、お前がやれることがある。)


フェンリルはスノウの手に冷気を送る。


(なんだ、これ。……っ!さっき、リサが使ってた炎と同じ。)

(力の大元は同じだ。だが、お前が使えるのは付与エンチャントすることだ。後は、分かるだろ。)

(ああ、記憶はないが、体が覚えてる!)



「あた、しは、守る。敵、は、たお、す!」


ズザッ!

リサが猛スピードでスノウに突っ込む。


「兄さん!」

「こいよ、リサ!俺は、目を背けねえ!氷付与アイスエンチャント! 狼派二式ロウハニシキ! 蒼波ソウハ!」


シュンッ!シュンッ!

スノウの氷の斬撃がリサを迎え撃つ。


バキーンッ!

リサは二発の斬撃弾き飛ばす。


「くっ!つめ、たい。」

「そうだ!俺の攻撃は、全てを凍らせるぜ!お前の怒りの炎なんて関係ねえくらいにな!」

「く、うぁ!!」


ゴォォ!!

リサは長剣に火を纏う。


虎派五式コハゴシキ! 赤飛剣レッドサーベル!」

狼派二式ロウハニシキ! 蒼波ソウハ!」


バゴーンッ!

氷の斬撃と炎を纏った長剣はぶつかり合い、爆発する。


スノウとリサは息を荒げる。



「そろそろ、頭は冷えてきたか、リサ!」

「う、うぐ!」

リサはもがき苦しむ。


「リサ、戻ってこい!俺と、俺たちと!この先も生きるんだろ!!」

「う、ああぁ!」

リサは長剣で刺し迫る。


「ちっ!狼派……っふ。」


カランッ、カランッ。

スノウは二本の刀を手放す。



長剣はスノウに刻々と迫る。



「兄さん!危ない!」

「先輩!!」


リサの長剣はスノウの心臓の目前にまで迫る。


「リサ……。」

スノウは両手を広げ、優しく微笑む。


「っ!!」


ズンッ!

スノウに当たる寸前で、リサの攻撃は止まる。


「す、のう。すのう。スノウ。」

「ああ、俺だ。」


ガランッ!

リサは長剣を手から落とす。


「あた、し、あたしーー。」

「大丈夫だ。リサは、誰も傷つけてない。」

「でも、でも!あたしは、スノウを、スノウを!」


ポトッ、ポトッ。

リサは涙を流しスノウの顔を見る。


「生きてるぞ。俺は、生きてる。お前の目の前で、嘘に見えるか?」

「でも、でもーー。」

「自分を責めるな。お前は、何でもかんでも背負いすぎだ。何のために、リサの隣に俺がいる?」

スノウは微笑みながら答える。


カタッカタッカタッ。

リサの体は、悔しさと辛さで震える。


「スノウ、あたし、辛いよ、苦しいよ。守れなかった人達のことが。」

「ああ、そうだな。俺も、辛いよ、苦しいよ。だから、。お前だけで背負うんじゃねえ。」



リサは過去の記憶がフラッシュバックする。




4歳の頃。とある客船の上。

ある国の主催で賑やかなパーティーが行われてた。


その中には、ドレスを着たリサがいた。

スーツを着たスノウも同じく。


まだ二人はお互いを知らない。


豪華な食事が並ぶ部屋で、偉い人が話をし、周りでは裕福そうな人たちが挨拶をして回っている。


「あー、つまんない。」

リサは一人船の外で座っていた。


外は真っ暗だが、月の光が眩しいくらいに差し込む。


「なんで私が家を代表してここに行かないといけないのかな?」

「ねえねえ、君一人?」

そこには、同じく四歳のスノウがいた。


「う、うん。あなたは?」

「僕は、スノウ。スノウ・アクセプトだよ!君は?」

「リサ。リサ・ブレイズハート!」

二人は直感的に同じ気持ちなのだろうと察した。


「リサちゃん、こういうところ嫌い?」

「うーん、嫌いっていうか苦手かな。」

「僕もだよ!なんか疲れちゃうんだよねー」

「分かる分かる!」

二人は笑顔で仲良く話し合っている。


「ねえねえ、リサちゃん!僕と友達になってよ!」

「え?」

「僕、ここまで楽しく話したの初めてなんだ!……ダメかな?」

「う、ううん!!なろなろ!私も友達になりたい!」


ギュッ。

スノウとリサは握手をする。



その瞬間、


ドゴーンッ!

船のどこからか爆発音がする。


「え、なになに!?」

「リサちゃん見て!あそこから火が!」

船の中腹から火の手が上がる。


ゴゴゴゴゴッ。

そして、船は徐々に沈み始める。


「わあっー!!」

「リサちゃん!」


ガシッ!

スノウは滑り落ちるリサの手を掴む。


「スノウくん、ありがーー。」

スノウの上から椅子が降ってくる。


ガンッ!

スノウの額をかすめ、血が流れる。


「スノウくん!」

「大丈夫、だよ。リサ、ちゃん!絶対、離さないから。絶対!」

「なんで、なんで。」

「友達だから!僕の大切な友達を、離すわけないじゃないか!」

リサは心に弾丸を撃たれたかのような衝撃を受ける。


「あっ!リサちゃん下見て!」

「えっ、あれは、救命ボート!」

「リサちゃん、せーので飛ぶよ!」

スノウはにこやかに言う。


「う、うん!」

「いくよ、せーの!」

二人は宙を飛び、ボートに乗る。


そして、

バゴーンッ!!


船は爆発をして沈む。


「なに、これ。」

「スノウくん。」

リサはスノウの手を握りしめる。



スノウとリサは運命の出会いをここで果たし、同じ苦しみを味わった。

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